スズキが「ロータリーエンジン搭載車」市販化してた!? “茶筒メーター”が斬新だった伝説のバイク「RE-5」なぜ短命に終わったのか?
スズキ「RE-5」は、国内メーカーで唯一市販化されたロータリーエンジン搭載バイクです。革新的な技術を誇りながらも、短命に終わった理由はどのようなものだったのでしょうか。
わずか1年あまりで生産・販売が終了!? 幻のバイク「RE-5」とは?
電気自動車を除くバイクやクルマには、必ずエンジンが搭載されています。エンジンはバイクやクルマの心臓となる非常に重要な部分ですが、一言にエンジンといっても、さまざまな形式があります。
一般的に、バイクやクルマに使用されるエンジンは、ピストンが上下運動をおこない、それを動力とする形式のものが主流です。このような形式のエンジンは、一般的に、「レシプロエンジン」と呼ばれています。

しかし、これとは異なる形式として、「ロータリーエンジン」というエンジンが存在します。
ロータリーエンジンは、ピストン運動ではなく、三角形に近い形状のローターが回転運動を行い、「吸気」「圧縮・爆発」「排気」の工程を連続的に進める独特のメカニズムを持っています。
この方式には、部品点数が少なく、振動が少ない、排気量あたりのパワーが大きいといったメリットがあります。
クルマにおいては、マツダがロータリーエンジンの開発・搭載で知られており、「RX-7」や「ルーチェ」など、数々の名車を生み出してきました。
しかし、そんなマツダでもラインナップの大多数にはレシプロエンジンを採用しており、ロータリーエンジンを採用した車種は限られています。
また、マツダ以外に、安定してロータリーエンジンの市販車を作り続けたメーカーはありません。
このようにクルマにおいて採用例が限られるロータリーエンジンですが、バイクにおいては、さらに採用例が少なくなります。技術的な課題やコストの問題から、メーカーが試作車を製作しても市販化に至ることは稀でした。
そんななか、国内メーカーで唯一ロータリーエンジン搭載のバイクを市販化したのがスズキです。1973年に発表された「RE-5」は、その革新的な設計で話題となりました。
RE-5は、1970年に西ドイツのNSU・バンケル社とロータリーエンジンの特許契約を結び、わずか3年余りの開発期間で完成させたモデルです。
イタリアの著名なデザイナーであるジョルジェット・ジウジアーロ氏がデザインを手掛け、特にヘッドライト上部に配置された円筒形のメーターハウジングは、日本国内のファンから「茶筒」と称されました。
なお、このバイクは、北米、欧州、オセアニア向けの海外専用モデルとして位置づけられ、日本国内では新車販売されていません。
しかし日本市場に逆輸入された個体も存在するため、まれに中古車市場で姿を現すこともあります。
RE-5に搭載されたのは、水冷・単ローター497ccのロータリーエンジンで、最高出力は62馬力を発生します。
先述の通り、RE-5は、ロータリーエンジン搭載バイクとして日本メーカー唯一の市販モデルです。今でも語り継がれるほど歴史に残る一台ですが、商業的には成功を収めることができず、発売から1年近くで生産終了してしまいます。
エンジン周りの重量がかさんだことにより、車重は230kgとミドルクラスのバイクにしてはかなり重くなってしまい、そのため、せっかくの高出力が相殺されてしまいました。
例えば、同じくスズキから1976年に発売され、通常のレシプロエンジンを採用した「GS750」の車重は221kgで、最高出力は68馬力。ほぼ同時期に生産されていたRE-5と比べ、車重は軽く、最高出力も大きくなっています。
取り扱い実績のある修理店も少なく、メンテナンスも難しいロータリーエンジンを採用するほどの大きなメリットがなかったのです。
また、1973年秋に発生したオイルショックにより、燃費性能が重視されるようになった時期と重なったことも、伸び悩みの一因です。
ロータリーエンジンは、その構造上、燃費が劣る傾向があり、オイルショック後の低燃費志向の高まりに対応しきれませんでした。
※ ※ ※
RE-5は、国内唯一のロータリーエンジン搭載バイクとして、バイク史に名を刻んでいます。
当時としては革新的なエンジン技術と独特の設計は、現在でも多くのバイク愛好家の知るところとなっています。
生産・販売自体はごく短期間に終わったものの、その存在はスズキの技術力と挑戦心を示すものであり、今後も語り継がれていくでしょう。
■スズキ「RE-5」主要諸元
・全長×全幅×全高:2220mm×870mm×1170mm
・車両重量:230kg(乾燥重量)
・エンジン型式:水冷ロータリー・単ローター
・総排気量:497cc
・最高出力:62PS/6500rpm
・最大トルク:7.6kg・m(約74.5N・m)/3500rpm
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