「小型ミニバン」なぜ「シエンタ&フリード」しか存在しない? 日産は「キューブ“ミニバン”」作らないの? 全長4.4m以下のミニバンに他社が参入しないワケとは
コンパクトミニバンといえば、トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」が独占している状態です。ほかのメーカーが参入しないのはなぜなのでしょうか。
コンパクトミニバンはナゼ車種が少ないのか?
SUVには、軽自動車から全長が5mを超えるレクサス「LX」まで、さまざまなサイズの車種が豊富に用意されています。ところがミニバンは車種が少なく、ボディサイズによるラインナップの格差も大きいです。
全長が4.6~4.8m前後のミドルサイズミニバンは、トヨタ「ノア/ヴォクシー」、日産「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」、三菱「デリカD:5」と相応に設定されており、どれも堅調に売れています。

ところが全長が4.4m以下のコンパクトミニバンは、実質的にトヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」しかありません。
日産「NV200バネット」は商用車をベースにしたミニバンとあって、ほとんど売れていません。
コンパクトミニバンの車種が少ない理由を考えてみると、稀に海外でも売られることがありますが、基本的には国内専売です。
しかもミニバンは、ミドルサイズを中心にファミリーユーザーが対象ですから、価格競争が激しいです。スライドドアや3列シートなどの機能が充実する割に、価格を安く抑えないと堅調に売れません。
つまりコンパクトミニバンは、コンパクトカーや軽自動車のような、薄利多売のカテゴリーなのです。
そうなると、国内で大量に販売できるメーカーでないと、コンパクトミニバンを手掛けられません。そこで小型車の販売台数が多いトヨタのシエンタとホンダのフリードに限られます。
日産はどうでしょうか。同社の関係者は以下のように言います。
「日産はかつて、『キューブ』の後継になるような背の高いコンパクトカー、シエンタやフリードのライバルに相当するコンパクトミニバン、『シルビア』の再来になるミドルサイズクーペなどを開発していました。
それが、リーマンショックが発生した2000年代の後半から2010年代の前半に掛けて、開発が凍結されました」
コンパクトミニバンは海外で販売しにくく粗利も少ない商品ですから、日本国内の販売力が強く、なおかつメーカーの開発費用に余裕がないと実現できません。
もともとフリードの前身になる「モビリオ」は、2001年に発売されて売れ行きを伸ばし、2008年に後継の初代フリードに切り替わりました。
初代シエンタは、モビリオのライバル車として大急ぎで開発され、2003年に発売されています。
モビリオが燃料タンクを前席の下に搭載して車内後部の床を低く抑えたので、シエンタは薄型燃料タンクを開発して同様の低床効果を得ました。そして薄型燃料タンクは、現行シエンタにも受け継がれています。
このように、フリードとシエンタは、20年以上も前から根強い乗り替え需要があり、今でも成り立っています。
2024年の1か月平均登録台数は、シエンタが約9300台に達しており、フリードは2024年5月まで先代型でしたが約7100台になります。両車ともに販売は絶好調です。
他社でミニバンを手掛ける商品企画担当者は「フリードとシエンタが好調に売られ、お客様のニーズを満たしています。ほかのメーカーがコンパクトミニバンを発売しても、どの程度売れるか分かりません」といいます。
海外で売りにくい国内市場向けのカテゴリーでは、既存の売れ筋車種が存在すると、新規参入が難しい事情もあるのです。
ソリオの3列なら出せそうな気がする