トヨタの「新エンジン」600馬力出る!? 「新ミッドシップ」は異例尽くし! みんなが気になるコトを聞いてみた! キーマン・高橋プレジデント&齋藤氏が誕生秘話語る!

新エンジンは600馬力イケるか!? Mコンセプトはいつ走る?

―― ここから「壊しては直す」が繰り返されるわけですね?

 齋藤:重いエンジンが後ろにある、リアは転舵しないのでこじりながら曲がる、前後と左右にデフが入る、エンジンは直接駆動などなど、懸念事項はたくさん。

 間違いなく最初はどこかが「ポキっ」といくでしょうね。加えて歯車の熱、摩擦などなど……。

―― モリゾウさんが提案したものの、それをやる/やらないの判断は高橋さんですよね? なぜ、やる決断をしたのでしょう?

 高椅:まずは1人のエンジニアとして「面白そう」と思いました。

 齋藤も言っていましたが、GRヤリスは「神に祈る時間がある」、つまりドライバーは困っているわけで、それを改善するアイデアならば「やらない理由はないでしょう」と。

 GRはドライバーに楽しんでもらうクルマづくりが身上ですので。

―― 「やりたいからやる」、「面白いからやる」、とてもいい響きです。

 齋藤:ただ、モリゾウさんに相談し始めた頃は、会社的には「検討すらダメ」な状況だったので、我々はアングラでやっていました。

 ただ、そんな時でも高橋さんは「やろうよ、僕の責任で」と守ってくれました。

―― 実はミッドシップ4WDはトヨタ初ではな1985年にMR2がベースのラリーマシンのプロトタイプ「222D」がありました。あのモデルは参考にされているのでしょうか?

 齋藤:もちろんです。レイアウトを含めて大変参考にさせていただきました。

 更に競合の先輩たちのクルマも勉強させてもらいましたが、「縦置きと横置き、どちらも良し悪しがある」と言う事が何となく解ってきました。

 その結果、我々は「横置きじゃないとダメだね」と言う結論に至りました。

―― 現状の車体構成はどんな感じですか?

 齋藤:前半分はGRヤリスのままでトレッドを拡大しています。

 リアは魔改造でサブフレーム/リアサスペンション共に新規で設計したモノです。

 でも、一品対応ではなくしっかりと図面を起こして進めています。

―― そういえば、トークショーではスクリーンにドカーンを図面が出て驚きました。「ここまで見せちゃうの?」と。

 齋藤:この通りになるかは解りません(笑)。

 実際に走らせるだけでなく、机上検討もしっかりと進めていきます。

開発中の新2.0L直列4気筒ターボ(G20E)には期待大!
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―― エンジンはどうでしょうか?

 高橋:こちらもまだヨチヨチ歩きの状態です。

 このエンジンは今後更に厳しくなる排ガス規制、EURO7やTier4をクリアするために、全域ラムダワン燃焼で400psが目標です。

 もちろんレースでの使用を考えた時、そこを取っ払えば600ps以上はイケると思いますが。

 齋藤:このエンジンが本領発揮するためには、クルマ側も同じくらいの進化が必要です。

 新エンジンをやるなら、経験値のあるFF/FRでやるのが普通ですが、我々は1番厳しい所からやります。

 熱が厳しい、駆動のストレスも受ける、だから鍛えられると。

 高橋:ミッドシップだと排気の長さも短いのでサウンドや消音の話も「どうするの?」ばかりで、頭を抱える事ばかりです(笑)。

―― この取り組みは、当然プロダクトに繋がると思いますが、これがウワサの次期セリカになるのでしょうか? 歴代セリカを振り返ると、フルチョイスシステム(初代)、ツインカムターボ(3代目)、フルタイム4WD(4代目)、アクティブサスペンション/4WS(5代目)、スポーツABS(6代目)、など様々な挑戦を行なっています。単にGRヤリス/GRカローラの着せ替えだったら、セリカにならないような気がしています。

 高橋:勉強になりますね、そこまで考えていませんでした(汗)。

 この技術がどこに使われるかは置いておいて、GRヤリスMコンセプトはとても面白い題材です。

 このような題材があると人が集まってくる。そこが大きい。

 齋藤:ボディの構造、サスの作り方、駆動、エンジン、全てが新しいです。

 これをやりたい人は社内にたくさんいます。モリゾウさんはそれを見越して「このような人達が集まるようにしてみたら」と言ってくれました。

―― まさに新しい挑戦をしたい人「この指とまれ」ですね。

 高橋:まずはやってみて、どうするか考えましょうと。

 恐らく現状は底なし沼ですが、「本当に底なしなのか?」、「底はあるかもしれない」と。

 そこに飛び込みたいと言ってくれる人がいることが、嬉しいですね。

―― ちなみにトヨタの開発車両は数字と英語を組み合わせた開発コードが付きますが、もしかして「104M」ですか?

 高橋:ハズレですが、なかなかいい所を突いていると思いますよ(笑)。

―― すでにS耐で鍛える事が発表されていますが、いつ頃からでしょうか?

 高橋:夏の暑い頃ですかね? 今は本当にエンジンが載ったばかりの状態なので、ここからがスタートですね。

※ ※ ※

 なお高橋プレジデント、齋藤氏に話しを聞いたのちに、スーパー耐久シリーズ2025の第5戦となるオートポリス(7月26日・27日)への参戦を目指していることが明かされ、第6戦の岡山(10月25日・26日)でも参戦を検討しているようでした。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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