レクサス「RX」3列シートモデルの売れ行きに困惑? 富裕層が求める理想的なSUVとは
ちょうどいいサイズの「RX450hL」
「RX450hL」がレクサスらしい点は、サードシートすら緊急用ではなく、快適性が考えられていることです。4ドアモデルでサードシートに乗り込むには、体を窮屈に曲げなければなりません。
それを解消するため、セカンドシートは大きくたためるように細工されています。乗り降りは、さすがに箱型の1ポックスカーほどスムースではありませんが、サードシートに座る乗員の快適性にも気が配られていることは嬉しいポイントです。
サードシートには、専用のエアコン操作パネルも吹き出し口もあり、ドリンクホルダーも備えられています。SUVのサードシートは一般的に「窮屈で我慢のシート」だと思われていますが、少しでもそれを柔らげようとしてくれているのです。
「RX450hL」はAWDのみの設定です。といっても、泥だらけになって荒地を突き進むような走りには適していません。走り味は荒々しくはなく無骨でもなく、あくまで街中を優雅に走るためのSUVなのです。
はっきり言って私は、「RX450hL」はそれほど売れないのだろうと想像していました。ゆったりと7名を乗せて走るには、もっと背の高い箱型のワンボックスカーが居住性が高く理想的です。
レクサスには、ワンボックスカーのラインナップがないため、苦肉の策だと想像し、販売は低調に終わると予想していたのです。
ですが、販売は計画台数を大幅に超えており、生産が間に合わないほどの人気です。
(2018年2月現在のRX販売実績:RX300が約320台、RX450hが約320台、3列シートのRX450hLが約120台)
その理由を、チーフエンジニア加藤武明さんが説明してくれました。
「レクサスにはワンボックスカーはありません。3列シートはこれより大柄のLXだけになります。だが、LXはサイズを持て余す。そんなお客様にとってはRX450hLちょうどいいサイズなのです」
「不思議のことがあります。RXが欲しいと販売店に足を運んでくださるお客様がRX450hLの存在を知ったとき、価格的にもボディサイズ的にももっとも堂々としているのがこれなのです。せっかくだから一番高価なやつが欲しいと言ってくれるのです」
レクサスは高級車であるがゆえに、富裕層が求めるモデルです。予算的に余裕がある人には、2列よりも3列の方が便利だと思うのでしょう。まさに「RX450hL」の成功は、レクサスを好む富裕層に支持されているのです。
【了】
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。