なぜ「ホンダの技術」マネされない!? 他メーカーが“採用できない”理由とは? 独自開発の「センタータンクレイアウト」スゴすぎる!
ホンダの独自技術のひとつに「センタータンクレイアウト」というものがあります。他社では導入されていないこの技術はどのようなものなのでしょうか。解説します。
ホンダの“独自技術”なぜ真似されない?
ホンダのクルマづくりの哲学として古くから脈々と受け継がれている「M・M思想」。
これは、「マン・マキシマム/メカ・ミニマム」の頭文字を採ったもので、「人のためのスペースは最大に、メカニズムのためのスペースは最小に」という意味を持ち、限られたボディサイズの中で最大限の有効スペースを確保するというものです。

この思想の原点と言われているのが1967年に登場した軽自動車の「N360」です。
ボディサイズの限られる軽自動車でありながら、大人4人が余裕を持って座れるようにと、小型軽量な空冷2気筒エンジンや、プロペラシャフトが不要なFFレイアウトを採用するなど、メカニズムをコンパクトに抑える工夫がなされていました。
そんなホンダの独自技術として、2001年に登場した初代「フィット」に採用されたのが「センタータンクレイアウト」でした。
このセンタータンクレイアウトはその名の通り、クルマのセンター=中心部となるフロントシート下に燃料タンクを配置するもので、従来はリアシート下のスペースを陣取っていた燃料タンクを移設することを可能としました。
これによってリアシートのアレンジの幅が大きく広がり、低床化によって室内高を確保することができるようになっただけでなく、リアシートをダイブダウンさせて格納することで低く広大な荷室スペースを実現。
さらに、リアシートの座面を跳ね上げることでミニバン並みの1280mmの室内高を実現し、観葉植物のような背の高いものも積載できるようになったりと、他のコンパクトカーとは一線を画す室内空間を実現できたのです。
このセンタータンクレイアウトを持つプラットフォームはフィットのほか、コンパクトミニバンの「モビリオ」や「フリード」、ステーションワゴンの「エアウェイブ」などにも採用され、2011年に登場した初代「N-BOX」にも軽自動車用のセンタータンクレイアウトプラットフォームが採用されています。
このように、5ナンバーサイズや軽自動車など、ボディサイズの上限が決まっている車種において、ボディサイズを拡大することなく広い室内空間を実現することができるセンタータンクレイアウトは絶大な効果を持ち、「N-VAN」のような低床フラットなフロアの実現にも一役買っています。
ただこのセンタータンクレイアウトは当初、ホンダが特許を取得していたため、他メーカーが同様のレイアウトの車両をリリースすることができませんでした(三菱「i」はホンダから技術供与を受けて採用)。
特許権が切れたとされる現在でも、新規で導入する際にはタンクのレイアウト以外にも見直さなければならない点が多くあるため、コストの兼ね合いもあってなかなか導入に踏み切ることが難しいという事情もあるようで、未だにホンダ独自のレイアウトとなっているようです。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。



























