「現行の法律が甘すぎる。法改正を要求します」 時速194キロによる死亡事故「危険運転」に認定で懲役8年に!SNS上では「懲役8年は短すぎ」などの声も! どんな事件? 元警察官が解説

2021年に時速194キロでクルマを運転し、死亡事故を起こしたとして危険運転致死罪に問われていた当時19歳の被告(現在23歳)に対する裁判で、大分地裁は11月28日、危険運転致死罪の成立を認め、被告に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。

時速194キロが「制御困難な高速度」で危険運転に当たるとの判決

 2024年11月28日、時速194キロでクルマを運転して死亡事故を起こした被告に対し、大分地裁は危険運転致死罪として懲役8年を言い渡しました。
 
 裁判では被告の運転が「危険運転」と「過失運転」のどちらに当たるかが争点となっていましたが、どのような判決だったのでしょうか。

「現行の法律が甘すぎる。法改正を要求します」 や「懲役8年は短すぎ」などの声も(画像:フォトAC)
「現行の法律が甘すぎる。法改正を要求します」 や「懲役8年は短すぎ」などの声も(画像:フォトAC)

 2021年に時速194キロでクルマを運転し、死亡事故を起こしたとして危険運転致死罪に問われていた当時19歳の被告(現在23歳)に対する裁判で、大分地裁は11月28日、危険運転致死罪の成立を認め、被告に懲役8年の実刑判決を言い渡しました。

 この事故は2021年2月9日、被告が大分県大分市の県道を時速194キロで走行し、交差点を右折してきた対向車に衝突、運転していた当時50歳の男性を死亡させたものです。

 なお、県道の法定速度は時速60キロであり、事故当時は法定速度の3倍以上のスピードで運転していたことになります。

 裁判ではこの被告の運転が「危険運転」と「過失運転」のどちらに該当するのかが争点となっており、危険運転致死傷罪は最大20年、過失運転致死傷罪は最大7年の懲役刑と量刑に大きな差があることから、裁判の行方に注目が集まっていました。

 そもそも危険運転致死傷罪に該当する行為は、自動車運転死傷処罰法の第2条に規定されており、次のような行為が該当します。

ーーー
●アルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
●進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
●進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為(無免許運転など)
●他の人や車両を妨害するような運転行為(割込み、幅寄せなど)
●信号を殊更に無視し、なおかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
●通行禁止道路を進行し、なおかつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
ーーー

 検察側は被告の運転を上記の「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」に当たるとして危険運転致死罪の適用を主張した一方、弁護側は「衝突するまでは車線から逸脱することなく直進できていた」として過失運転致死罪が適用されると反論していました。

 この「進行を制御することが困難な高速度」に該当するか否かは、「時速●km以上」といった明確な基準が定められているワケではなく、道路の形状や路面状況、自動車の構造・性能などさまざまな事情を考慮して判断されます。

 そのため、これまでに発生した死亡事故の裁判においては加害者側が猛スピードで運転していても「危険運転」に認定されないケースが少なくありませんでした。

 しかし今回の裁判では、時速194キロは「ハンドルやブレーキのわずかな操作ミスによってクルマが進路から逸脱し、事故が発生する危険性がある」として、制御困難な高速度という危険運転に当たることが認定されました。

 この判決に対して男性の遺族は「危険運転致死罪が認められたことは大きいことだと思います」としつつも、「量刑が懲役8年と聞いた後、裁判長の話は全く耳に入りませんでした。

 同じような事故を抑止するという点では、量刑がこれで良いのかという思いがあります」などと話しています。

 またSNS上においても同判決に関して「懲役8年は短すぎる」「被害者にとってはあまりに無慈悲な判決だと思う」「現行の法律が甘すぎる。法改正を要求します」など、量刑が短いことや危険運転の適用要件があいまいな点に対する不満の声が多く寄せられました。

※ ※ ※

 現在、法務省の有識者検討会では危険運転致死傷罪の構成要件の見直しが議論されており、車両の速度については「最高速度の2倍や1.5倍を超えたら危険運転」というように明確な数値基準を設ける案も検討されています。

 今回の判決を受け、法改正に関する議論が進むのかどうか、今後の動向が注目されます。

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