国民ブチギレの「税金問題」 二重課税は解消される!? 「いつまで古い税制なの?」 自工会が提唱する改革案とは

2024年10月2日、日本自動車工業会は「令和7年度税制改正・予算要望書」において、「自動車税制の抜本的な見直し」に関する改革案を明らかにしました。

「自動車税制抜本見直しの改革案」を公表でどう変わる?

 ついに、クルマの税制が大きく変わります。
 
 日本自動車工業会(自工会)が10月2日、「自動車税制抜本見直しの改革案」を公表したのです。
 
 その内容を見て、自動車産業に長年携わってきた多くの人が驚きを隠せません。

高いクルマの税金問題、どうなる?
高いクルマの税金問題、どうなる?

 しかも、新しい自動車税制はいまから約1年半後の、2026年度から実施が考えられるというのですから、各方面での協議についてあまり時間がないという状況です。

 では、新しい自動車税制は具体的にどうなるのか、順を追って見ていきましょう。

 まず、現在は取得時にかかっている「自動車税の環境性能割」(旧取得税の置換)を廃止するとしています。

 これによって、いわゆる二重課税がなくなり、消費税のみがかかるようになります。

 次に、保有時ですが、現在は自動車税(軽は軽自動車税)と、自動車重量税の2つがかかっています。

 これを、自動車、軽自動車ともに刷新して一元化します。

 その方法として、重量をベースに車重に比例して税負担を増やし、さらに環境性能に応じて増減を考慮するとしています。

 例えば、EVの場合、航続距離を伸ばそうと思うと搭載する電池容量が大きくなり、車重が増えますが、そこにCO2排出に対する貢献度を加味するという考え方です。

 詳細については、これから各方面で協議するとしています。

 また、軽自動車についてですが、モデルによる車重での区別はつけず、定額課税とした上で環境性能に応じた増減を目指します。

 それにしても、なぜこのタイミングで、自動車に関する抜本的な税制改革に対する本格的な議論が進むことになったのでしょうか。

 理由は大きく2つあります。

 ひとつは、電動化です。

 自動車税については現在、エンジンの排気量に応じて税額を設定しています。

 ガソリン車やディーゼル車であれば、車格や価格が上がるにつれて搭載するエンジンの排気量が大きくなるので税額を上げるという方式です。

 この発想の原点には、くるまは贅沢品という概念があります。

 クルマが高級になればなるほど税負担も重くするべきという考え方です。

 自工会の資料では、これを資産課税と称して説明しています。

 ところが、近年はハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV(電気自動車)、そしてFCEV(燃料電池車)とさまざまな電動車が市場で普及しており、クルマのパワーやトルクがエンジン排気量と直結しない事例が増えてきています。

 これらを同じ税体系のなかで公平にするため、エコカー減税やグリーン化特例といった、いわば救済措置によって、税体系全体での帳尻合わせをしているような状況です。

 自工会としては、さまざまなパワートレインに対して公平な税制が求められるとしています。

 その上で、クルマが単なる贅沢品という考え方自体が、もう古い印象があるのです。

 また、「資産価値は減価償却もされない」(自工会資料)という指摘もあります。

 もうひとつが、「当分の間 税率」に関してです。

 言い換えれば、高度成長期に設定された古い考え方が継続されている、ということです。

 自動車重量税は、いまから53年前の1971年に創設されました。創設の理由は、道路など、交通社会資本整備です。

 また、1968年に創設された自動車取得税も、都道府県や市町村の道路整備が目的でした。

 これらが、道路整備5カ年計画の財源化のために、その税率を暫定的に引き上げたのです。

 ところがその後、こうした道路特定財源としていた自動車取得税と自動車重量税の目的が、一般財源化されることに軌道修正されるといった経緯があり、現在に至ります。

 要するに、国が最初に描いたクルマに関する税のあり方が変わっているのに、税体系としては大きく変わっていないという、国民にとって分かりにくい状況にあると言えるでしょう。

 これを、「当分の間 税率」が続いていると表現しているのです。

 以上のように、クルマに関わる税体系は、そろそろ抜本的な見直しが必要だったと言えます。

 また、日本国内の自動車市場は1990年度の780万台をピークに減少が続いており、コロナ禍から若干回復した2023年度でも478万台まで落ち込んでいる状況です。

 その理由のひとつが、クルマの取得と所有における税金の高さだという見方があります。

 海外と比較しても、日本のクルマに関わる税金はかなり高いレベルにあり、例えば排気量2L・車重1.5トン以下の乗用車を13年間所有した場合で比較すると、日本は65万6000円。

 これはドイツの3.4倍、フランスの9.5倍、そしてアメリカの23.4倍という大きな開きがあるのが実状です。

 クルマに対する新しい税体系については、2023年12月に公表された「令和6年度税制改正大綱」のなかで、次のエコカー減税の期限到達時までに検討を進めると、協議の期間を区切っていました。

 そのため、自工会と与党 税制調査会、そして国側でこれまで、新しい税体系に関する議論を進めてきており、今回公表された自工会の改正案は、単なる要望書ではなく、新しい税体系に向けた最終的なたたき台だと言えるでしょう。

 2024年12月までに与党 税制調査会で本格議論して抜本改革の大枠を決定する計画です。

 自工会としては、以前に税制調査会で話題に上った、走行距離に応じた課税や、EVに限定した課税について反対を姿勢を示しています。

 ユーザーにとって大きな関心事である、クルマの税金。

 今後の協議の成り行きを、しっかりと見ていきたいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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