目の前に「富士山ドーン!」の道は意図的に作られた!? 「設計者からの贈り物」と呼ばれる山アテ道路とは?
道路を走っていると、正面に山が見えることがありますが、これは意図的に設計された景観なのでしょうか。
道路の先に山がドーン!の見える「山アテ道路」とは?
2024年の夏も多くの道路で混雑が予想されていますが、家族や友人に会いに行ったり、レジャーを楽しんだりなど、クルマでいつもより遠くへ出かけるユーザーも多くなります。
ドライブ中に様々な景色と出会う中で、走っている道路の目の前に、突如大きな山がドーンと現れる圧巻な景色に遭遇することもあるでしょう。
このような、正面に山が見える道路を「山アテ道路」と呼びます。
例えば、中央道の下り(名古屋方面)では、韮崎ICを過ぎると八ヶ岳が正面に現れます。
路肩には「八ヶ岳連峰/最高峰(赤岳)2899m」と記された標識が立っています。
NEXCO中日本によると、このような標識は単調な走行を楽しくし、道路利用者に刺激を与えることで、利用者サービスや交通安全の向上を図るために設置されているとのこと。
ちなみに、同じ区間の上り(東京方面)では、富士山が見えるそうです。
一方で、関越道の下り(新潟方面)では、高崎ICを過ぎると榛名山が見えます。
また、青森市の国道7号では、県内最高峰の岩木山が正面に見える直線区間があります。
この山は「津軽富士」とも呼ばれ、作家の太宰治もその美しさを称賛していたようです。
これらの例は、地形や街並みに合わせた結果として山アテになったこともありますが、意図して山アテにした道路もあります。
例えば、東京都心を南北に走る中央通り(国道15号)は、京橋から日本橋にかけて約70km先の筑波山の方向を向いています。
この道は江戸時代の東海道の道筋を継承しており、江戸・東京の代表的な道筋の1つです。
また、日本橋の北詰で中央通りと交差する本町通りは、西に延びると約100km先の富士山と重なります。
ちなみに、「江戸名所図会(1834年-1836年刊)」の「駿河町三井呉服店」や、歌川広重「名所江戸百景」の「する賀てふ」には、本町通りに並行して走る通りが描かれていますが、道の先には富士山が大きく描かれています。
さらに東京都内の国立市では、JR国立駅の南側から放射状に3本の道が伸びており、そのうちの1本は富士山の方向を向いています。
この通りは「富士見通り」と呼ばれ、条件の良い日には富士山が見えるとのことです。
そのほか、北海道にも多くの山アテ道路があります。
これは、明治時代の開拓時代に測量技術が未発達であったため、原生林に道を通す際に近くの山を目印にしたためです。
「蝦夷富士」とも呼ばれている羊蹄山の周辺には、国道5号などの山アテがあります。
例えば、帯広市の道道216号はコイカクシュサツナイ岳に向かって23.4kmの区間が一直線に伸びています。
このように、道路の景観について考える際に、誰かが意図して山に合わせて作ったものが、今でも残っているのです。
ちなみに、北海道の道路が山に向かってまっすぐ伸びる景色は「100年前の設計者からの贈り物」とも言われています。
クルマを運転する時には、道路と山の位置関係を意識することで、ドライブの楽しみが増えるかもしれません。
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