トヨタが「新型GR86」発表! 「走りの変化」が凄い! 「登場“3年目”の改良」で何が変わった?
2023年モデルとの違いは?
そこで今回、発表に合わせて富士スピードウェイ・ショートコースで従来モデル(2023年モデル)と乗り比べをしてきました。
走り始めて即座に感じたのは、全てにおいて「FRらしさ」、「コントロールの自在性」、「反応」など、GR86らしさを構築する要素の“純度”が増した事です。
ステア系は雑味が取れたスムーズな操舵感に加えて、よりフロントタイヤの状況がより明確に感じられる手ごたえを確認。これにより4輪の状況がより濃厚になり、一体感がより増しています。
リアは反力強めの印象だった、いいリアダンパーのハリが取れた感じで、入力を上手にいなす特性になっています。
結果的にリアタイヤがより接地している感は増していますが、スタビリティ重視と言う感じはなく、アクセルオフでドリフトのキッカケが作れるFRらしさは不変です。
ただ、従来モデルとの大きな違いはタイヤの使い方。グリップとスライドのバランスだと思っています。
従来モデルはリアタイヤを限界ギリギリまで粘らせない代わりに、流れてからのコントロール性を重視していましたが、新型はリアタイヤが限界まで粘るのに流れてからのコントロール性も高いのです。
言葉では伝えるのは難しいのですが、グリップ/スライドの比率は従来モデルが3:7だとすると、新型は4.5:5.5くらいになったイメージかなと。
実は今回、ドライ路面に加えて土砂降りのウエットでも走行しましたが、従来モデルでは思わずVSC ONで走りたくなるような状況でも、新型はVSC OFFでも「コースインしようかな」と思わせる懐の深さがあるのです。
今回は乗り心地に関してのアナウンスはありませんでしたが、リアがよりしなやかに動くようになった事で、前後バランスが変わり入力の伝わり方の丸さなども、ZFダンパーに近づいたような気がしました。
このように個々の特性を見ていくと、(オプションで用意される)ZFダンパーに近づいたように感じるかもしれませんが、乗り味は完全に別物。
ZFダンパーはいい意味で“間”がプラスされた大人仕様なのに対して、新型はGR86らしいキビキビした走りを損なわずにレベルアップしています。
ちなみにGR86の真骨頂ともいえるスライド時のコントロール性は、従来モデル以上にダイレクトかつリニアな特性になっています。
とにかくクルマの動きがスローになったと錯覚するくらいわかりやすいので、僕レベルのドライビングスキルでもドリフトアングルの調整もしやすく、派手なドリフトも速いドリフトも楽々こなせました。
この深化したフットワークにスロットルレスポンス向上が効いています。
確かに初期型が持つアクセルをグッと踏んだ時のパワー感と、2023年モデルの段付きのないスムーズさが共存。つまり野性味があるのに扱いやすいのです。
ちなみにスバル「BRZ」には「SPORT」モードが設定されましたが、GR86には未採用。
その理由を藤原氏に聞くと「スポーツカーだからデフォルトがSPORTモードです。ただ、それが故に日常域と非日常域をバランスさせる味付けには苦労しました」と教えてくれました。
そう考えると、GR86にはBRZと逆の発想で「Touring」モードがあってもいいかなと。
そろそろ結論に行きましょう。ズバリ、走りに関しては「ビックマイナーチェンジ」に恥じない伸び代と言っていいでしょう。
新型となるD型の進化は、「GR86の軸をブレさせることなく、走りの純度を引き上げた」だけでなく、「プロにはより奥深さ、アマチュアには扱いやすさが増した」と言う印象です。
改良はこれまでのネガが消える一方、本来のコンセプトをボカす恐れも…。
ただGR86はむしろコンセプトにより近づいた感じがします。まさに控えめだけど、大きな進化です!
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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