「AZ-1」「ビート」「カプチーノ」、女子はどう見てた? 「ABCトリオ」根強い人気のワケ(写真20枚)
「2シーター」も大きなメリット
ABCトリオがさらに優れていたのは、女子が所有してもいい雰囲気のクルマだったということ。「助手席専門なんてつまらない! なんなら、ジムカーナ(編集部注:舗装路面で行われるモータースポーツの一種。1台ずつコースを走行しタイムを争う。公道走行可能な、つまり普通のクルマでの競技が主流)とかついて行っちゃいたい!」というアクティブな女子でも、「男子よりも『格上』のクルマに乗って『生意気』と思われたくない……」というのが、昭和生まれの乙女の気遣い。ABCトリオなら、「軽だから私でも買えるし、小っちゃくて運転しやすいし、いろんなカラーリングがあってかわいいし!」という言い方で、自然に無難に所有できたのです。
ついでにもうひとつ。彼氏が「(クルマ)何、買おうかな」と言っているときにすすめるのにも、ABCトリオは最適でした。うっかり高級ドイツ車の名前を出して、経済観念の無いミーハー女子と見られないために、というのはもちろんですが、平たいボディにアフターパーツテンコ盛りのとんでもない方面に行かれないためにも、「走るのが好きならこういうのがいいんじゃない?」と、手綱を引っ張るのに有効だったのです。もちろん、2シーターなら、「あ、オレも乗っけてよ」的な邪魔者を避けられるというメリットが一番ですが。
兎にも角にも、褒めてよし、乗ってよし、勧めてよしの、女子の好感度アップ最強兵器だったABCトリオ。環八のM2(編集部注:マツダ車のチューニングカーなどを企画、販売していたマツダのグループ会社。特徴的なデザインが目を引く環八沿いのM2ビルに入っていた)でフォグランプを付けてとんでもなくかっこよくなっているのにときめいたり、MTしかなくて泣く泣く諦めたり(編集部注:「AZ-1」「ビート」は5速MTのみ、「カプチーノ」も当初は同様だったが、後期モデルから3速ATを追加)、「中身『アルト』じゃん」と言われて喧嘩したり(編集部注:とはいえ「AZ-1」「カプチーノ」の“中身”はスポーツモデルである「アルトワークス」用に開発された規制限界のターボエンジン)、思い出は尽きませんが、あの時代、間違いなく、いろんな意味で「女子の味方」だったクルマたちです。
【了】
提供:乗りものニュース
Writer: 下高井戸ユキ
コスメ系雑誌などに、インタビュー、ライフスタイル系記事を執筆。「クルマ」と、「クルマ好き」が好き。運転は苦手。