アンダー150万円の「スポーツカー」が存在! 美しすぎる謎のクーペ「美人豹」とは? 国家の威信をかけた「大傑作」!?
生産国のみで販売されるクルマ「ドメスティックモデル」は、デザインをはじめとした様々な要素にその国の文化や国民性が反映されるため、ときには極めて個性的なクルマが誕生します。そんなユニークなモデルのひとつとして、スポーツカー「美人豹」を紹介します。
知る人ぞ知るスポーツカー「美人豹」
クルマのデザインや装備・性能には、その国の文化と事情、国民性や好みなどが反映されています。
近年は、同じクルマを世界各国で同時に販売する「グローバルモデル」が一般的となっているため、その個性は徐々に薄まりつつもありますが、少し前には生産国のみで販売される「ドメスティックモデル」がまだまだ多く、独特なセンスやユニークな発想によって仕立てられたクルマが存在しました。
そんな個性的なモデルとして今回紹介するのは、知る人ぞ知る、むしろ知らない人は一生知らなかったかもしれないユニークなスポーツカー、吉利「美人豹」です。
吉利(ジーリー)とは、中国の自動車メーカーのひとつで、1986年に冷蔵庫の製造企業として設立され、1992年にバイクの製造を開始。
1997年から自動車の生産を始めて大きく成長し、現在は中国における大手自動車メーカーの一角を占めるほか、同グループ(浙江吉利控股)傘下にはスウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」も抱え、さらにイギリスの自動車メーカー「アストンマーティン」の株主としても存在感を高めています。
そんな吉利が開発し、2003年から2006年まで販売していた3ドアハッチバック式のスポーツカーが美人豹です。
同車のフロントやリアのデザインには、どこかホンダ「インテグラ」やトヨタ「スープラ」からインスピレーションを得たようなディテールも垣間見えるものの、都会的かつスポーティな美しいスタイリングに身を包んだ姿は、まさに「美」を冠する車名に一切恥じぬもの。
美人豹は、自分らしさを追求し、高いセンスと自由な個性を発揮して生きるユーザーに広く支持され、また購入しやすい抑えめな価格設定だったことから平均的な収入でも購入できると評判になり、スポーツカーが好きなユーザーにとって最適な選択肢だと評価されていました。
ボディサイズは全長4110-4125mm×全幅1690mm×全高1325mmで、ホイールベースは2440mm。
車体は韓国の自動車メーカー「GM大宇(現在は倒産)」の協力を受けて設計され、パワーユニットはトヨタが設計した1.3リッターエンジンおよび、1.5リッターエンジンを搭載。トランスミッションには5MTと4ATから選択でき、前輪を駆動するFF式の駆動方式を採用します。
この1.5リッターエンジンは最大出力94馬力・最大トルク128Nmを発揮し、排気量そのものは大きくないものの、わずか980kgと軽量なボディには十分なパワーをもたらすことで、175km/hの最高速度を実現しました。
また2006年後半には大排気量化を実施し、最大出力113馬力・最大トルク156.8Nmを発揮する1.8リッターエンジン搭載バージョンをラインナップに追加。
かつて無く力強いエンジンを搭載したことで、美人豹の走行性能は飛躍的に向上し、最高速度は190km/hにも達しています。
車両価格は1.5リッター車が6万9800元(148万円)から、1.8リッター車が(約170万円)からとなっていました。
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実はこの美人豹は、中国自動車産業史上初の自社開発スポーツカーという記念碑的なモデルであり、その歴史的価値の高さから中国国立博物館に永久収蔵されています。
その評価の高さは数々の栄誉ある賞を獲得している点からも見て取れ、2003年12月には「中国最高のスポーツカー」と評価されたほか、2004年6月には中国国際自動車ウィークで「ユニークな外観デザインのモデル」賞を受賞。さらに同年「今年の省エネモデル」にも選ばれました。
また忘れてはいけない斬新な特徴としては、中国において最初に「車載カラオケ装置を搭載したクルマ」ともいわれています。
2007年に開催された「上海モーターショー」には、次世代モデルを示すコンセプトカーとして「美人豹II」が出品され、まるで日産「GT-R」やアウディ「R8」のような迫力ある近代的なデザインに注目が集まりましたが、残念ながら市販化は実現しませんでした。
しかし代わりに実質的な後継車種として、「ドラゴン」が発売されています。