インドネシアで無双状態の三菱ふそう 小型トラックのキャンターが南国の地で売れに売れている理由とは

インドネシアにおける強固なバリューチェーン その中身とは?

 訪れたのはジャカルタ近郊にあるチココル支店。ジャカルタ中心部から車で30分ほどのところにあり、店舗前の幹線道路は多くの車が行き交います。日本で言えばロードサイド店舗でにぎわう郊外の国道沿いといったイメージです。出迎えてくれたのはスリカンディグループの会長をはじめとする幹部の皆さんと、三菱商事からKTBへ出向し、現地の販売セクションを統括する板谷本部長です。

スリカンディグループの店舗の皆さん
スリカンディグループの店舗の皆さん

 スリカンディグループは1984(昭和59)年に三菱自動車の正規ディーラー1号店をオープンし、今ではジャワ島とカリマンタン島を中心に3つのグループ会社で47店舗を運営するなど、インドネシアにおける三菱自動車およびトラック・バスの重要な販売拠点となっています。KTBの販売比率の16〜17%を担うスリカンディグループは、主にインドネシアの中小企業から大手企業に至るまで、多くのカスタマーを抱えます。

 2019年以降の国内販売実績を見てもキャンター2万2000台以上、ファイターは1700台以上を販売するなど、三菱ふそうにとっても重要な販売会社です。さらには2023年の1月から6月まで、既にキャンターは2300台以上、ファイターは120台以上の販売をおこなっていることなどを鑑みれば、インドネシアにおいて、いかに強固なバリューチェーンを構築しているのかが分かります。

 板谷本部長は「インドネシアは都市部や観光地、そして都市間道路の整備はできているものの、それ以外の地方では今も道路整備がままならないのが現状です。密林地帯やダート路も多く、まさに運搬作業は困難を極めています。そこで、手頃なサイズと積載量、そしてトラックとしての信頼性が厚い三菱ふそうの『キャンター』や『ファイターX』が高い支持を集めています」と話します。

 小型トラックが売れる理由としては、経済性、交通環境の利便性などさまざまありますが、特にジャカルタのような密集型の大都市圏では、地方や郊外から運び、残りラストワンマイルをいかに効率よくクイックに配送するかを重要と考える人が多いためだそうです。

まさにドライバーのためのオアシスを用意

 好調な販売を支えるものとして、車両への信頼のほかに、KTBが主体となってサービス展開を行う24時間体制のドライバーサポートプログラムがあります。顧客の車両の状態をデータ化し、最新状況をアップデート。トラックの健康状態がひと目で把握できるようにiPadで管理されており、顧客にとっても信頼できるサービスプログラムが敷かれています。また、各ディーラーの店舗では、充実したテクニカルサービスはもちろん、仮眠室やシャワー室をはじめ、イスラム教の祈祷(きとう)室や、さらには有人の売店もある休憩室も備わり、フルサポート体制でサービスを提供しています。これは日本でもあまり見ない手厚さです。

ディーラーの店舗には、有人の売店も設置されている
ディーラーの店舗には、有人の売店も設置されている

 ディーラーはインドネシアの広い国内を移動する長距離トラックドライバーにとってはまさにオアシスと言える存在になっているようです。こうしたサポート体制は、顧客から見れば三菱ふそうのトラックを選ぶ大きなきっかけともなります。さらには企業側から見れば継続購入を働きかけることで、安定顧客への成長も期待できます。

 顧客を獲得し満足感を与え、そしてその顧客を維持しながらさらにファンを拡大していく戦略。時代のトレンドをつかむことはもちろんですが、顧客とのコミュニケーションを常に保ち続けながら、各市場環境に基づいたニーズをしっかりと把握することはとても重要であると板谷本部長は話します。

 インドネシアは、現在アジア圏内において堅調な経済成長を続けている国の一つです。その理由としては国内での市場経済活動がここ数年、コロナ禍でも活発化しており、それらが上手に回ってきていることが挙げられています。まさに需要と供給のバランスが安定しており、そこからさらなる需要が生まれる好循環がいたるところで生まれています。つまりインドネシアにはまだまだ開発需要があり、そこからは多くのニーズが生まれます。

 三菱ふそうは新型車両の開発にも常に力を入れており、11月5日まで東京ビッグサイトで開催されたジャパンモビリティショー2023では、新型スーパーグレートをワールドプレミアとして発表し注目を集めました。こうした新型車両の海外投入もにらみつつ、三菱ふそうがインドネシアでさらにファンを取り込み、ニーズにどこまで対応していけるかも今後注目です。

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  1. 三菱=ゼロ戦

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