めちゃカッコいい「大きいホイール」! 大径化で「失うもの」も!? 車カスタムの定番「インチアップ」のメリット・デメリットとは
クルマのドレスアップにおいて、ホイールサイズを大径化する「インチアップ」は定番の手段ですが、やり方を間違ってしまうと、失ってしまうものも多いといいます。どういうことなのでしょうか。
インチアップのメリットとデメリットとは
トヨタの新型「プリウス」が19インチの大径タイヤを履いたり、同じくトヨタの新型「クラウン」シリーズが21インチを履いたりと、このところホイールサイズを大幅にインチアップしたニューモデルが続出しています。
足周りの見栄えがよくなるため、愛車のカスタマイズの手段としてインチアップに憧れをもつ人は多いようですが、実は失うものも多いといいます。
インチアップによって、どういった変化が起こるのでしょうか。
少し専門的になりますが、インチアップでホイールサイズは変わってもタイヤ外径は変わらず、タイヤの内部構造や接地面などのゴム配合などは同じ、という前提条件の上での話だと思ってください。
まずホイールサイズをインチアップ(低扁平化)すると、タイヤ高(接地面からホイールまでの高さ)は減り、タイヤのさまざまな特性が明確に変化します。
ひとつはタイヤの硬さを表す「縦バネ剛性」です。
縦方向の荷重と、タイヤのたわみ具合の関係、と理解してもらえればおおよそOKです。
自動車メーカーでタイヤ開発を担当した人の経験によると、1インチアップで縦バネ剛性はおよそ10~15%アップするといいます。
さらに17インチから19インチへ2インチアップすると、およそ1.2~1.3倍まで縦バネ剛性は上がることになります。
路面の継ぎ目を乗り越えたときの突き上げは明らかに強くなり、乗り心地が格段に悪くなることが考えられます。
そして扁平率が40%を下回ると、縦バネは急激に増加するそうです。
また低扁平化の程度によっては、タイヤのサイドウォールのよれが減り、横方向のタイヤ剛性が増すことで、コーナリング時の初期のレスポンスは上がる傾向になり、前後方向のタイヤ剛性も上がるため、例えば急制動や加速時にタイヤがよれる現象も減ります。
こちらも1インチアップで10%程だと、前出の開発者は教えてくれました。
このことを「初期応答が良くてスポーティになった」とポジティブに受け取る人もいますが、平坦な道やサーキットのような環境でもない限り、走りのポテンシャルが上がったとはいえないと、開発者はいいます。
なぜなら、一般道のように凹凸のある路面では、旋回している最中にタイヤが跳ねやすくなり、接地性が下がることも考えられるためです。
そして忘れてはならないのが、バネ下重量増加の悪影響です。
バネ下重量とは、サスペンションから下の部分の重量を指し、タイヤやホイール、ブレーキ、さらにサスペンションを支えるアームなどを指します。
バネ下の重量物が増加すると、少し荒れた路面を走った際、サスペンションが突き上げを吸収しきれずに、車体側が揺らされてしまいます。
これを「バネ下がバタつく」と表現しますが、最悪の場合、デコボコの少ない道でも、ブルブルとした振動が生じることもあるというから、見逃せません。
この原因については、重量が変化したことでバネ下の質量と縦バネで決まる「バネ下共振」が変わるため、といいますが、どういうことなのでしょうか。
クルマには、エンジンやトランスミッション、サスペンションメンバー、排気管など、様々な構造物がゴムマウント(バネ要素)を介して搭載されており、それぞれに固有値(固有振動数)があります。
この固有値同士が重なると、揺れが増幅する「共振」というモードが発生してしまうのです。ちなみにバネ下が軽くなりすぎても共振問題は発生するといいます。
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