大型トラックの最高速度「100キロ」に引き上げ!? 物流「2024年問題」対策に「有効」は本当か? 高速道「80キロ規制」撤廃で何が変わるのか

警察庁は2023年7月13日、大型トラックの速度制限引き上げを考える有識者検討会を設置しました。現在80キロに制限されている最高速度が100キロにするための検討で、物流問題の解消にも役立つといいますが、どういったことなのでしょう。

「えっ…!」トラックの速度制限を上げれば労働環境が「改善される」!?

 2023年7月13日、警察庁は、現在時速80kmに制限している大型トラックの高速道路における最高速度の引き上げに向け、有識者検討会を設置することを表明しました。
 
 いわゆる「2024年問題」への対策として検討されるものですが、はたして、トラックの最高速度を引き上げることで、本当に物流危機は解消されるのでしょうか。

日本の物流を支える大型トラックは「2024年問題」でどうなっていくのか[画像はイメージです]
日本の物流を支える大型トラックは「2024年問題」でどうなっていくのか[画像はイメージです]

 2024年は、NTTのISDN回線サービスの終了や、働き方改革の一環として2019年に規定された、時間外労働の上限の5年間の適用猶予が終了することなどによって、日本社会に深刻な影響をもたらすとされています。

 これを一般に「2024年問題」といわれています。

 そんな2024年を目前にして、日本政府も本腰を入れて検討を始めることとしたようですが、なぜ2024年問題にトラックの最高速度が関係してくるのでしょうか。

 大型トラックには、道路に示されている最高速度とは別に、道路交通法で総重量ごとに最高速度が規定されています。

 車両総重量が8トン以上の大型トラックおよびトレーラーは時速80キロ、車両総重量8トン未満のトラックおよび軽トラックは時速100キロが上限です。

 例えば、最高速度が時速120キロの区間をもつ新東名高速道路でも、トラックはこの最高速度に従って走行しなければならず、最高速度を超えることがないよう、現在の大型トラック(総重量8トン以上)には、アクセルペダルを踏んでも一定速度以上で加速ができなくなる「スピードリミッター」の装着が徹底されています。

 このスピードリミッターが装着されていると、およそ時速90キロまでしか出すことはできません。

 この最高速度を引き上げることで、物流の流れを良くし、さらには労働条件を改善しようというのが、冒頭で紹介した有識者検討会で検討されることです。

 大型トラックの最高速度を引き上げることで懸念されるのは、やはり安全性です。

 そもそも現在の時速80キロという最高速度制限が設定される前、これらの大型トラックのなかには、運搬の遅れを取り戻すため、時速100キロを大幅に超える速度で高速道路をかっ飛ばすトラックも多く、危険だとして問題視されていました。

 時速80キロという最高速度は、この流れのなかで設けられたわけです。

 それを再び緩和することに対して、疑問視する声が多いのも当然のことといえます。

 現在は、一定速度を保って走行する「クルーズコントロール」のような運転支援技術がトラックにも普及しており、さらに万が一の運転ミスや居眠りといったケースに対しても、クルマが人を守る先進安全装置の普及も広がっています。

 時速100キロに抑えるのであれば大丈夫なのでは、と楽観視する意見も見られますが、一方で「物流が滞る恐れがあるので速度上限を引き下げる」という考え方が、はたしてそれでいいのか、という指摘もあります。

 時間外労働に上限が設けられたのは、「労働者が健康かつ安全に働けるようにするため」。

 一定の収入を得るため、長時間労働をせざるを得なかったトラックドライバーの負荷を減らし、適切な労働時間で、適切な報酬を受け取り、健康的に仕事をしていける業界に変えていくのが、本来の目的です。

 最高速度を上げることではなく、労働時間や労働負荷に対し、満足のいく報酬が得られるよう、輸送業界として待遇改善をまず行うべきではないかと、指摘されているのです。

※ ※ ※

 物流の問題は、送料の上昇や、翌日配送のような特急配送業務がなくなる可能性があるなど、私たちの暮らしにさまざまな影響を及ぼします。

 日本の物流を維持するためにも、長距離ドライバーの安全と健康的な生活は改善されていく必要があります。

 それには、新たなルール作りや安全運転に関わるテクノロジーの普及も急務です。

 冒頭の有識者検討会は、年内をめどに速度規制の見直しに関する提言を取りまとめる方針とのこと。

 いかなる案が出てくるのか注目です。

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7件のコメント

  1. 高速バスの運転士です。最高制限速度が100㌔に引き上げられると 1部のトラックの横暴な運転が 余計な事故や嫌がらせが増えるのではないかと心配です。また 引き上げられた結果 余裕が出来た筈の時間分 今まで以上の荷を担当させられる等の弊害も発生しそうです。ドライバーの事を考えてくれている会社ばかりならば そもそも 今の状態になっていなかった筈なので。

  2. 鉄道輸送の活用という選択肢が抜けているように思うが?鉄道輸送は長距離・大量輸送に向いているから。
    現に大手運送会社は、コンテナを利用した鉄道輸送に切り替えつつある。

  3. 100キロに上げると120キロ出すトラックも出てくるでしょうね。そもそもリミッターカットしているトラックは何かの機会にでもコンピューターを読み取ってその場で摘発できれば良いのですが。
    しかし、バスが良くてトラックはダメという話がそもそもおかしいのであって、大型車は同じく80なら80。100なら100に統一すべきでしょう。だって、違う速度で走るほうが危ないからです。まあ、荷物よりも人を載せているバスのほうが80キロで走るというのなら矛盾はありませんが、現在は逆。荷物よりも乗客の命が軽視されている。事故についてはそれぞれの会社。それぞれのドライバーの安全意識次第ですね。
    宮城の2525タクシーの整備不良バスに八潮のトラックが突っ込んだ件もありますし、バスも社長が運転していながら高速での停車ルールの判断を誤ったのか、法律を知らなかったのかは知りませんけど。

  4. 絶対に停まれて休憩できる場所作ってくれ

  5. 現在の規制が80km/hで、スピードリミッターは余裕を持たせ90km/hになっています。
    実態的に90kmの限界速度で走っていると思われる大型トラックは少なくありません
    これが規制100kmとなると、リミッター110km/hになるのでしょうか。
    そうすると実態では、かつて規制が無い時代で120km/h程度で走る大型トラックが見受けられた場合とそう変わらない状況になってしまうのでは?ちょっと恐ろしい。
    規制の本来の意義を忘れてしまうのはやはり納得しがたいように思います。

  6. こういう事を決める方達は、夜の国道で、法定速度で走っている、軽自動車がオラオラ運転の大型トラックに煽られているのを見たことあるのかな?悲惨な事故や煽り運転が増えるのが目に見える。

  7. 少なくとも大型運転手の大半はリミッターも大型だけ速度規制が厳しいのはおかしいと思ってるよ、事故を無くしたいなら乗用車も全部80kmにしてリミッターも90にすべきだった、安全を理由に大型だけ速度規制を厳しくとかいうのが職業差別そのものなんだよ。

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