えっ…「“原子力”エンジン」搭載!? 大手メーカーも検討! 斬新デザイン&アイデア採用の“夢マシンたち”とは

現代のクルマのエネルギー源といえば、ガソリンなどの化石燃料のほか、天然ガス、水素、電気など多岐に渡ります。しかし、1950〜60年代には「原子力」を用いることさえ考察され、いくつかコンセプトカーも発表されていたようです。どのようなクルマたちなのでしょうか。

パワートレインは「原子力」?

 現代のクルマのエネルギー源といえば、ガソリンなどの化石燃料のほか、天然ガス、水素、電気など多岐に渡ります。
 
 さらに1950〜60年代には「原子力」を用いることさえ考察され、いくつかコンセプトカーも発表されました。

原子力エンジン搭載!? フォード「シアトリティ XXI(21)」
原子力エンジン搭載!? フォード「シアトリティ XXI(21)」

 戦禍の記憶も新しい1950年代。めざましく進歩する科学技術は、多くの人に「科学の進歩は人類を幸せにする」という夢を与えました。

 その中で原子力は「未来のエネルギー」として、航空機や船舶、鉄道などの動力源として開発が推進されました。当時は、原子力の持つ「負」の側面より、輝かしい未来への期待が上回り、真剣に「原子力が化石燃料にとって代わるだろう」と信じられていたほどなのです。

 やがてその「夢」は、なんと「原子力自動車」というアイデアまで生み出すことに。そしていくつかのメーカーはコンセプトカーを製作し、モーターショーに展示しました。それら5種類の原子力自動車をみていきましょう。

スチュードベーカー・パッカード アストラル

 1958年1月に発表、同年3月のジュネーブショーに展示されたのが、アメリカのスチュードベーカー・パッカードが製作した「アストラル(Astral)」です。

「アストラル」は、通常のクルマというより、かなり非現実的な発想が盛り込まれていました。ジャイロを用いた一輪走行を基本として、原子力機関の搭載、ホバリング走行、さらには宇宙飛行まで可能とされていたようです。

 透明のキャノピーを持つコクピットを持つデザインも、クルマというよりは「宇宙船」のような趣きでした。

 1/1のモックアップが製作されたものの、現実には実現不可能だった原子力機関は搭載されませんでした。各地のスチュードベーカーのディーラーで展示されたのち、行方不明に。

 のちに発見されてレストアが行われ、現在はインディアナ州にあるスチュードベーカー・ミュージアムに展示されています。

フォード ニュークレオン

 アメリカのフォードが1958年2月に発表した「ニュークレオン(Nucleon)」は、短いボンネットと小さなキャビン、車体後半に偏ったタイヤ配置など、未来的なデザインが特徴のコンセプトカーでした。

 ボディ後半に突き出たアームのセンターには、小型原子炉を搭載するパワーカプセルを吊り下げる構造になっていました。このパワーカプセルは、ドライバーの要求に応じて異なる出力のカプセルと交換が可能で、中には最大で5000マイル(8000km)も走れる仕様も考えられていたようです。

 走行できる期限(クルマでいうならガス欠)が来ると、新しいカプセルに交換を行うことを想定しており、その作業を実施するステーションは、未来のガソリンスタンドのような存在になる、と想像されていました。

 しかし、当時の技術では(いえ現在でも)、小型原子炉の製作が不可能だったことはいうまでもありません。実車は作られず、8分の3スケールの模型のみの製作に終わっています。

アルベル・シンメトリック

 アストラルと同じく1958年のジュネーブショーで発表された原子力自動車が、「アルベル・シンメトリック(Arbel Symetric)」です。

 フランスの自動車のセールスマンかつアマチュアのエンジニアでもあったカシミール・アンドレ・ルビエールが設計。フランス領インドシナで会社を経営していた弟、モーリス・ルビエールから資金提供を受け、開発に着手しました。

「シンメトリック」という車名の通り、前後対称の外観を特徴としたこのクルマは、フランス4大メーカーのひとつだったシムカの1100ccエンジンを動力源に、4つのインホイールモーターで走行するという、現代にも通じるシリーズ式ハイブリッドシステムが用いられていました(ただしインホイールモーターのアイデア自体は、1900年〜1910年頃にはすでに、ポルシェの生みの親・フェルディナンド・ポルシェが考案しています)。

 しかし、ショーでの反響が芳しくなかったことから、ルビエール兄弟は1951年創業の自動車メーカー・アルベルと組み、翌年のジュネーブショーで新しい「シンメトリック」を展示。アメリカナイズされたボディの中には、ガソリンエンジンのほか原子力機関の搭載が想定されていました。

その機関とは、40kWの電力を発生する原子力電池「ジェネスタトム」。燃料には核廃棄物を使用し、その交換は5年ごとでよい、とされていました。

 ところがフランス政府は、核燃料の使用を認めない姿勢を崩さなかったため、実際の開発は行われなかったようです。その後アルベルは生産車を作ることなく、ひっそりと会社を解散しています。

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