なぜトヨタは水素エンジンに注力? 各社も研究は進めるが… 再び注目される水素にトライした訳
水素エンジンを世界にアピール! S耐久からル・マン24時間まで
ルマン24時間レースでの走行後にモリゾウ選手を直撃してみました。
ーー 1周のデモランでしたが、どうでした?
モリゾウ:事前にシミュレーターで練習していたので、ル・マンの道を不安なく普通に走る事ができました。
減速する所、踏む所はシッカリと……ね。ただ、欲を言えばもう1周走りたかったですね。
ーー やはり「音」がするのがいいですね
モリゾウ:私には心地よい子守歌に聞こえましたが、観客の方にも解っていただけたと思います。
やはり、モータースポーツにおける音は非常にエキサイトメントのエッセンスの一つである事は間違いないと思いました。
ーー 水素エンジンのモータースポーツ投入は2021年。あれから僅か2年でル・マンを走るとは夢にも思いませんでした。
モリゾウ:僕だって想像できませんでしたよ。これまでアジャイルにずっと続けてきた結果だと思います。
この走行、日本では涙を流している人もいると思います。しかも、ルーキーレーシングのあの車体(GRカローラ)で走ったことが大事です。
ーー 日本が育ててきた水素エンジン、もっと話題になってほしいです。
モリゾウ:単なる試作車が走ったのではなく、実戦を重ねてきたクルマがル・マンを走る。
これは大きな一歩ですよ。このマシンはS耐が育ててくれたと言っても過言ではないので、S耐に出ている人みんなに、何かしらの“同士感”をもって欲しいですね。
そして、もう1人は小林可夢偉選手です。実は走行時は別の場所でモニター越しに見ていたそうですが、いてもたってもいられず自ら自転車でピットまで来ました。
ーー 水素エンジンとモータースポーツ、その可能性をいち早く見抜いたのが可夢偉さんだったと思います。
小林:当時は確信がなかったので「トライすべきじゃないか?」と言った感じでしたが、多くの人に認められ、この技術をル・マンでお披露目できた事は嬉しいです。
ーー まさに、意志ある情熱と行動の賜物です。
小林:モリゾウさんが行動を起こし、仲間が増えた。これって「何が正しいか?」を信じてきた結果だと思います。
この技術が日本だけでなく世界でも認めてもらえるように、そしてこの技術が「可能性がある」と言うことを更に理解してもらえるように活動していきたいと思っています。
ーー モリゾウさんに提言した「言い出しっぺ」としてどうですか?
小林:所属するドライバーの一言に「これは確かにそうかもな!?」と思ってくれた事が凄いですよね。
モリゾウさんは一つ一つの会話をシッカリと読み取ってくれますが、「これはそうじゃないよ」と厳しい事も言われますよ。
ーー その判断力も素晴らしいですよね。
小林:ただ、僕らはそこに甘えるのではなく、「自分達ができる事」を常に考えていくことこそが、水素の未来を一日でも早く実現できる事だと信じています。
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豊田氏は常日頃から「水素社会の実現は『つくる・はこぶ・つかう』の仲間づくりが大事」と語っていますが、今回のデモランは日本だけでなく、世界の仲間が増えるキッカケになったのかもしれません。
すでにトヨタはル・マンで水素エンジン+ハイブリッドを搭載した「GR H2 Racing Concept」を発表しました。2026年に実戦投入されるかどうかは解りませんが、「カテゴリーが作られた」と言う事は、ライバルの参入もあるでしょう。
風のウワサではトヨタが水素エンジンのアピールをし始めてから、「実は我々も……」と手を上げているメーカーも数多いそうと聞きます。
「音はするけど、ガソリン臭くない」、そんなル・マンの時代がやってくることに期待です。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
トヨタより前にマツダが水素ロータリーエンジンに力を入れてたが、追随して欲しい。