「水素って、結局アリなの、どうなの?」 BEVもエンジンも水素化可能な「トヨタの秘策」が世界初公開!
トヨタは「テクニカルワークショップ2023」を開催しました。そこでは燃料電池車と水素燃料車に関する様々な新技術が世界初公開されましたが、今後の展望はどうなっているのでしょうか。
水素社会を築くにはグローバルでの連携は必須
トヨタが東富士研究所で開催した「テクニカルワークショップ2023」では、燃料電池車と水素燃料車に関する様々な新技術が世界初公開されました。
その中でトヨタは「水素を使う量を増やすことが重要」だと強調しますが、いったいどういう意味なのでしょうか。
また、「MIRAI」に次ぐ乗用燃料電池車は、いつ頃、どのようなモデルが登場するのでしょうか。
水素を使うモビリティとしては、燃料電池を搭載する乗用車や、トヨタが日野などと共同開発した中型および大型の燃料電池トラックや大型バスがすでに量産されているほか、ガソリンエンジンをベースにした水素エンジン車の研究開発が進んでいます。
そうした中でいま、グローバルの産業界でカーボンニュートラルの観点で大きな注目が集まっているのが、中型・大型の燃料電池トラックです。
環境省によると、日本でのCO2排出量のうち、運輸部門が全体の約2割であり、そのうちの約4割が商用車やトラックで占められています。
そのため、軽商用や小型トラックではBEV(電気自動車)、また中型・大型のトラックやバスでは燃料電池車の導入が、カーボンニュートラルに向けた現実的な解なのではないか、という議論が国や産業界の中で一般化しています。
そんな中型・大型のトラックに今回、筆者は大型燃料電池トラックでは助手席に、また中型燃料電池トラックを自ら運転してみました。
すると、どちらもディーゼル車と比べて停車状態からの加速で大きな車体重量を感じさせないような力強く、かつ操縦安定性もよい安心した走り味とハンドリングを体験できました。
また、当然ですが停車時にはディーゼルエンジンのようなアイドリングをしませんので、振動がないため乗員の疲れも少ないです。
また高速道路のサービスエリアで休憩している際に周囲の乗用車へアイドリング音で迷惑をかけることもないでしょう。
各車の試乗を通じて、燃料電池車は水素を燃料とする電気自動車だということを再認識したところです。
そうした中、トヨタは2023年7月1日付けで、燃料電池と水素関連商品での商品開発と生産を加速させるため、専任組織「水素ファクトリー」を新設します。
つまり、「MIRAI」に次ぐ乗用燃料電池車や、すでに発表している燃料電池のユニットを定置型電源や電車の電源などの外販する事業などについて、さらにスーパー耐久シリーズという実戦の中で研究が進む水素エンジンの量産化を含めて、トヨタとしてこれまでと大きく違う組織体制を敷くということを意味します。
今回、水素ファクトリー・プレジデントの山形光正氏がグローバルでの水素関連事業の背景や今後の方針などについてプレゼンテーションを行いました。
それによると、2030年の水素市場の規模は、中国が「つくる量」が2900万トンで「使う量」が4000万トン、アメリカが同3300万トンと2500万トン、欧州が1900万トンと2500万トン、そして日本は「使う量」が300万トンを見込んでいます。
そのためトヨタとしては、欧州と中国にある生産拠点で燃料電池の製造を始めます。
また、先に発表したダイムラー・トラックとの協業のように、「水素を使う仲間づくり」を今後も強化していくと言います。
こうして「水素を使う量」に対する一定の目途を立てることで、トヨタとして競争力のある次世代に向けた燃料電池の革新的な技術進化が可能になるという解釈です。
また、トヨタがパートナー企業と共に、日本国内で水素を「つくる」事業についてもすでに動きがあります
例えば、デンソー福島工場においてMIRAI等で使用している燃料電池スタックを使い、水電解により水素を製造するシステムを2023年3月から稼働させています。まさに、水素の地産地消だと言えるでしょう。
また海外では、2022年12月にタイで発表した、タイ最大財閥(コングロマリット)と言われているCPグループと共同で、家畜の糞尿から生まれるバイオガスを活用した水素製造を行い、タイの経済特区での実用化を検討しているところです。
西濃、ヤマト運輸などが、日野のトラックに燃料電池搭載して実験走行開始。航続距離は600Kmとのこと
BEVよりも航続距離長く、重量も抑えられるならば燃料電池在りだね