エンジン始動時「待ち」と「様子見」必要だった!? もはや懐かしい「ディーゼル車」始動の「ナゾ儀式」とは

21世紀に入り普及した「クリーンディーゼルエンジン」

 そして2000年代半ば頃から、乗用車にコモンレール式ディーゼルエンジンが採用されるようになりました。

 コンピュータ制御で軽油を噴射する方式ですが、排気ガスがきれいになり、パワーも大幅に向上しています。

 そのため、クリーンディーゼルエンジンとも呼ばれるようになりました。

2008年に追加設定された日産「エクストレイル 20GT」(クリーンディーゼルdCiエンジン搭載モデル)
2008年に追加設定された日産「エクストレイル 20GT」(クリーンディーゼルdCiエンジン搭載モデル)

 しかもコモンレール式は、エンジン内部に正確に直接軽油を噴射するため、エンジン始動性も極めて向上しました。

 一方で、空気を圧縮して軽油を噴射するというディーゼルエンジンの基本は変わらないために、グロープラグは引き続き採用されており、名称はなくてもコンピュータ制御が行われています。

 グローを作動させる時期も、エンジン温度が氷点下の時だけなどごく限られた時だけになりました。

 併せてプッシュスタートスイッチが普及した時期でもあるために、ドライバーはいつも通りプッシュスタートスイッチを押すだけで良くなっています。

 コンピュータは、プッシュスタートスイッチが操作されるとエンジン温度に応じたグロー作動時間を算出します。

 算出された時間だけインジケータランプを点灯させつつグロープラグにも通電し、グロープラグが適温になった時にスターターモーターを駆動してエンジンを始動するのです。

 始動がとても簡単になったディーゼルエンジンですが、その陰には先人たちの苦労が詰まっているのです。

 グローの作動時間は最長で十数秒間と言えど、待ち時間が必要なことは事実です。

 消防車など緊急出動が求められる車両ではかつて、大型トラックベースながらガソリンエンジンを搭載することがありました。

 ガソリンエンジンは、回転数が低い時のパワーはディーゼルエンジンよりも低いのですが、エンジンの始動に要する時間は短くて済むからです。

 火事が起こっているのにグロープラグの温度が上がるまで出動できないのでは、救える命も救えなくなりますよね。

※ ※ ※

 ディーゼルエンジンには、内部の構造の違いで予燃焼室式、渦流室式、直噴式という分類がありました。

 初期の直噴式エンジンではグロープラグが使用されず、替わりにエンジンが吸い込む空気を一種の電気ストーブで加熱して吸い込ませる、インテークエアヒーター式というものもありました。

 インテークエアヒーター式でもグローインジケータランプがあり、変な感じがしたものです。

 このようにグロープラグが作動する機会が減り、作動時間もすっかり短くなったために、現代ではグロープラグの存在すら忘れ去られようとしています。

 一方でSUVの普及による冬季レジャーの活性化で、世の中で走っているディーゼルエンジン車のグロープラグ作動時間を合計すると、もしかしたら以前よりも長くなっているかもしれません。

 グロープラグは、ヘアードライヤーや電気ストーブ以上に電気を消費します。

 ディーゼルエンジンはスターターモーターも大型のものを使用しているために、ガソリンエンジン以上に電気を使用します。

 バッテリーは、冬の間たくさんの電気が取り出され、エンジンがかかったら今度は急速に充電されるという、過酷な状況にさらされています。

 ディーゼルエンジン車のオーナーは、春になったらバッテリーを点検してもらい、劣化していたら新品に交換するとよいでしょう。

【画像】えっ…!? 昭和には「スカイラインディーゼル」も? ディーゼル乗用車を写真で見る(46枚)

まさか自分のクルマが… 高級外車のような超高音質にできるとっておきの方法を見る!

画像ギャラリー

1 2 3 4

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

6件のコメント

  1. まず昔のディゼルエンジンはほとんどが渦流式であり、始動時、濃い燃料を予備燃焼室に吹き込み(種火)筒内の燃料に引火させ、始動時グロ-プラグで筒内温めて点火。シリンダ-とピストンの隙間も大きかったため、エンジンが温まる迄待ち

  2. 酷使されるのにアイドリングストップ付いて更に過酷になっているが、バッテリーは5年以上使えた。アイストしなくなり出したのは5年3ヶ月頃から。その後の6ヶ月点検時に交換しました。10km程度の短距離通勤で使用がメインです。
    むしろイグニションシステムない分スタート時のみの負担が大きいだけですね。

  3. 30数年前、大学の先輩とスキーに行ったがディーゼル四駆のエンジンが掛からなくなってしまったことがある
    空気が温まるまで待たないとダメなのだが氷点下並みの気温だと時間が掛かった
    その点は今は当然解消されてるのでしょう。

  4. ガソリン車だって昔はチョークレバーを引っ張ってエンジンをかけたのと似たようなもの。ディーゼルはグローでちょっと待てばいいだけだから儀式ってほどでもないと思う。グローの間にシートベルトをしたり準備してれば気にならない

  5. ld28とかの世代だったらグロー自動ですよね。nv350のキャラバンも結構グロー待たされるみたいですけど。

  6. あれ?グローインジケータは、だんだん暗くなったりしましたっけ?!確か、いきなり消灯するのではなかったかな?(車種によると思うが) あと、バッテリ切れの危険を犯すことをせず、キッパリ冬を越す前に交換するのが予防整備として適切ではないかと思う。筆者はメンテンスの知識が乏しいらしい。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー