エンジン始動時「待ち」と「様子見」必要だった!? もはや懐かしい「ディーゼル車」始動の「ナゾ儀式」とは

コンピュータ制御などの普及で1980年代に進化したディーゼルエンジン

 次にディーゼルエンジンがブームになったのは1980年代前半でした。

 この時代はコンピュータ制御ブームやセラミックブームの時期でもあり、家電メーカーからは次々にパーソナルコンピュータやセラミックファンヒーターが発売されました。

三菱 2代目「パジェロ」マイナーチェンジで設定された2.8リッターディーゼルターボエンジン搭載車
三菱 2代目「パジェロ」マイナーチェンジで設定された2.8リッターディーゼルターボエンジン搭載車

 そんななかで、クルマのグロー制御にもコンピュータ制御やセラミックを採用したグロープラグが導入されていきました。

 この方式では、エンジンスイッチはイグニッションスイッチと同様のパターンになり、グロー位置はありません。

 そこでドライバーは、まずエンジンスイッチをON位置に保持します。

 するとコンピュータはエンジンの温度を調べ、適切なグロー時間を算出します。

 あわせて、ドライバーに待ち時間を伝えるためのインジケータランプを点灯させます。

 コンピュータはグロープラグに電気を流すのですが、グロープラグの性能向上で非常に早く温まるようになりました。

 エンジンの始動が可能になる時間が来ると、グロープラグに通電中でもインジケータランプを消してエンジン始動可能であることをドライバーに伝えます。

 ドライバーはインジケータランプ消灯を確認後、エンジンスイッチをSTART位置まで回して、スターターモーターを回します。

 とはいっても、ドライバーはミスをするものです。

 インジケータランプ点灯中でも、ドライバーはエンジンスイッチをSTART位置に回せます。

 慣れていないドライバーでは、エンジン内部の空気の温度はまだ上がっていないのにエンジンを始動させようとして、長い時間スターターモーターを回したり、エンジンを始動できないケースもありました。

 コンピュータ制御により、ドライバーはインジケータランプを確認するだけで良くなりましたが、すべてのドライバーがインジケータランプを確認していたかどうかはわかりません。

 ともあれ、このようなコンピュータによるグロー制御により、ディーゼルエンジンのハードルはかなり下がりました。

 自動車メーカーは誰でも扱いやすくなったディーゼルエンジンと自社の先進性をアピールするために、先進性を感じさせる命名をします。

 三菱は、コンピュータ制御のものを「オートグロー」、さらに待ち時間が短くなったものを「スーパークイックグロー」と呼んでいました。

 いすゞは「クイックスタートシステム」と命名し、「QSS」という略称を使用していました。

 グローのことだけなのに大げさな感じがしますが、当時は画期的なことだったのです。

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