まさかのトヨタ最大セダン「アバロン」の後継? 革新的デザインを採用の 「セダン×SUV」となった新生クラウンの米国評価は?
クラウンがアメリカ市場に投入されたふたつの背景とは?
トヨタ・レクサスのセダンとSUVの販売実績から分かるように、クラウン登場の背景には「SUVシフト」と「カムリの上のセダン」というふたつの側面があります。
まずは、SUVシフトについてですが、アメリカ市場では1980年代頃からC/Dセグメントが市場の中心となってきました。
C/Dとは、CセグメントとDセグメントをまとめた表現です。Cセグメントは、日本車ではカローラやホンダ「シビック」、欧州ではVW「ゴルフ」といった、グローバルにおけるコンパクトカーを指します。日本でコンパクトカーと呼ぶカテゴリーは、グローバルではBセグメントに相当します。
そして、Dセグメントは、Cセグメントより少しサイズが大きいカテゴリーで、カムリやホンダ「アコード」が該当します。
そうした、C/Dセグメントはセダンを意味し、その派生車として、いわゆるステーションワゴンがあり、1980年代にはフォード「トーラス」などが人気となった経緯があります。
1990年代になると、C/Dセグメントのほとんどがセダンになっていった一方で、1990年代中盤から後半にかけて、アメ車のフルサイズSUVが流行し、その流れがダウンサイジングしてミドルサイズSUV市場が2000年代以降に拡大していきます。
結果的に、2000年代は、C/DセグメントセダンとSUVが両立していた時期だと言えるでしょう。そうしたなかで、C/DセグメントセダンとSUVを融合する、いわゆるクロスオーバーというカテゴリーが、プレミアムブランドを中心に広がっていきます。
時代が進み、2010年代になると、今後はミドルサイズSUVからのダウンサイジングによって、今度はコンパクトSUVの需要が高まります。
コンパクトSUVといっても、これはCセグメントセダンと同格のSUVという意味なので、RAV4やホンダ「CR-V」が相当します。
こうしたコンパクトSUVシフトによって、相対的にC/Dセグメントセダン市場が縮小する傾向が強まっているのが実状です。
このような市場変化のなかで、アメリカのトヨタ販売店からは、SUVモデルのさらなる拡充を求める声が上がり、それに対応するのは「カローラクロス」です。アメリカのユーザーは、トヨタのコンパクトSUVの選択肢が増えたことを歓迎しています。
そして、セダンラインナップについても、実質的なカムリ上級モデルであった「アバロン」が2022年末に生産終了となり、カムリとの明確な差を感じることができる、「トヨタブランド最上級モデルが欲しい」という声が、販売店とユーザーから強まったと言えるでしょう。
アメリカのユーザーも、クラウンを取り巻く「SUVシフト」と「カムリの上のセダン」といいうふたつの側面を十分に理解した上で、クラウンを購入していることが、同国の各種メディアやSNSを通じて分かります。
そのなかには、「ジャパニーズカーのヘリテイジを感じるクルマ」といった表現も見受けられます。
クラウンは1955年に日本で誕生し、アメリカ市場では1950年代後半から1970年代前半まで販売されていた歴史があります。
そうしたトヨタ乗用車の創世記から成長初期のクラウンをリアルタイムで知るアメリカ人は今となっては少ないのですが、日本市場で熟成され、そして新型モデルで大きな変化を遂げたクラウンに対して、「これまでになかった日本車の味」を求めるアメリカ人ユーザーが今後も着実に増えていくことでしょう。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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