「かまぼこ」老舗がホンダと実証実験!? 上々の「成果」で1年延長へ 「異業種コラボ」に新たな展望が開く

「鈴廣×ホンダ」の取り組み 1年後の成果とは

 実証の具体的な方法の1つ目は「EV保有エネルギー予測アルゴリズム」による運行管理です。

 2つ目が「WebアプリとしてBEMS管理システム」で、そして3つ目が「Webとスマホアプリでの運行管理システム」です。

 要するに、本社社屋の電力需給をベースに、5台の「ホンダe」をいつどのように使用したり充電することが、鈴廣の業務効率を上げながら、電気代を安くすること、さらにCO2排出量を削減することにつながるのか、ということを探るのです。

 また、短時間で電気使用量が跳ね上がるようなピークを抑える「ピークカット」を考慮することで、電気使用量の平準化を目指します。

「鈴廣×ホンダ」実証実験のシステム概略図[資料:本田技研工業]
「鈴廣×ホンダ」実証実験のシステム概略図[資料:本田技研工業]

 なお現状の電力会社の電気代の設定条件として、1年間で最も多く電気を使った30分間の「最大デマンド」が、次の1年間の電気の基本料金に反映するため、ピークカットの効果はとても大きいとも言えます。

 では、鈴廣×ホンダの取り組みにおいて、1年間の成果はどうなったのでしょうか。

 まず電力を主体とするエネルギーに関する経費については、導入効果は導入前との比較で24%減を達成しました。

 実証を通じて見えてきたさらなる方策を講じれば、同37%減が狙えると、ホンダでは見ています。

 さらに、CO2削減効果は、導入前に比べ46%と一気に半減となり、さらに機能を追加すれば89%減の可能性が高いと言います。

 つまり鈴廣、ホンダ双方にとって「もっとやってみたいこと」がはっきり見えてきたため、実証期間を1年延長することになったのです。

 次の1年間に向けて、本田技術研究所の貞野チーフエンジニアは各種のグラフなどを用いながら、さらなる挑戦に向けて意欲を見せます。

「コロナ禍で十分なデータがとれなかった夏期のピークカットデータを精査したり、予測アルゴリズムの継続的な進化など、実証すべきことはまだ様々なものがあります」

※ ※ ※

 EVの商用利用ではこれまで、高い収益性が見込めるサービスモデルを創り出すことが難しいとされてきました。

 しかし今回の事例のように、自動車メーカーが最新型EVを使い、企業の日常業務へ長期間に渡り深く関わり連携したうえで、さらに事業性の模索を主体とする社会実証は、筆者がこれまで取材活動を行ってきた経験のなかでも極めて珍しいケースだと思います。

 鈴廣×ホンダの成功事例は、今後のEV産業界に一石を投じることになるかもしれません。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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