バスが「スマホで呼べる」!? 仮想停留所は「8000か所」も! 「AIオンデマンド交通」導入で地方の交通はどう変わった?
長野県茅野市を走る交通サービスに全国の注目が集まっています。「AIオンデマンド交通」を大胆に導入してから約半年後の様子をレポートします。
長野県茅野市の大胆な政策に地方都市交通の未来をみた!
八ヶ岳を望む、長野県茅野(ちの)市が2022年8月22日から社会実装した、AI(人工知能)を活用したバーチャル停留所方式のAIオンデマンド交通「のらざあ」に、全国から注目が集まっています。
社会実装から5か月以上が過ぎましたが、実際にどのような人が、どのような時間に、どのような場所と行き来しているのか、気になるところでしょう。
まずは「のらざあ」という言葉ですが、これは「乗ってみよう」という意味の方言です。
また、オンデマンド交通と言えば、ユーザーの要望に応じて自宅や自宅の近くまで迎えに来てくれる、乗り合い方式の交通システムとして数十年前から全国各地に普及してきました。
なかでも近年は、山間部で路線バスが廃止されてしまった地域で限定的に運用される、といったケースが多い印象があります。
最近では、AI(人工知能)を使って、複数の迎えに行く場所と複数の目的地との間を効率良く運行できるようなルートを計算し、それをドライバーに伝える仕組みが、ベンチャー企業が開発したシステムを用いて全国の数か所で始まっているところです。
そうしたなかで茅野市のAIオンデマンド交通、のらざあが注目されている理由は、市内の住民が多い地域のほとんどで路線バスを、のらざあへ一気に切り替えてしまったことでしょう。
茅野市の地図を広げてみると、JR中央本線の主要駅である茅野駅がある市街中心部と、主にその東側に拡がる住居地域があり、さらに市の北部には別荘地や登山などの観光スポットが点在しています。
のらざあ導入前まで、路線バスは、地元住民用の市街地のほか、定住者や二拠点利用者用の別荘地路線、そして登山などの観光客向け路線がありましたが、このうちの地元住民の利用が多いほとんどの路線がのらざあに転換したのです。
驚くのは、のらざあを乗り降りできるバーチャル停留所の数が、約8000か所もあることでしょう。
多くのバーチャル停留所が市街地とその周辺にあるということは、ユーザーにとっては、ほぼ自宅から駅、病院、銀行、役所、ショッピングセンターなどの目的地に行けますし、または目的地が友達の家だとしても、ほぼその場所に行くことが可能だということになります。
のざらあの運行は、地元の交通事業者である、アルピコタクシー、第一交通、諏訪 交通、茅野バス観光が共同で行い、AIに関するシステムは、アメリカVia Mobilityの日本法人が担っています。
料金は、3km未満が300円、3km以上5km未満が500円、そして5km以上が700円。また、75歳以上は一律300円、障がい者は上限300円で半額、小学生以下の子どもは半額、そして6歳未満は無料です。
運行時間は朝8時から夜19時まで。予約は専用アプリや電話で行い、予約可能なのは利用の1週間前から1時間前まで。
使用するのは、トヨタ「ノア」「ハイエース」「ハイエースコミュータ」など計8台です。
他の地域で展開されるAIオンデマンド交通の事例では、一般的に市街中心部で既存の路線バスを並存しながら、利用の様子を見て運行の区域を広げたり、台数を段階的に増やしていく流れが主流です。
それを茅野市のように、一気に路線バスから転換することに対し、全国の自治体や交通事業者が驚いているのです。
茅野市がこうした大胆な地域交通DXに踏み切ったのは、茅野市がDX(デジタル・トランスフォーメーション)を重視する自治体だからだといえるでしょう。
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