バスが「スマホで呼べる」!? 仮想停留所は「8000か所」も! 「AIオンデマンド交通」導入で地方の交通はどう変わった?
内閣府が推進する「デジタル田園健康特区」に選ばれた茅野市
実は、茅野市は内閣府が進める次世代のまちづくりを検討する「スーパーシティ」構想のなかで、現時点では全国で3か所しかない「デジタル田園健康特区」に選ばれるほど、地域DXに積極的な土地柄です。
では実際に、のらざあの利用状況について、茅野市から提供された詳細なデータを基に紹介します。
まず、のらざあ利用には事前登録が必要ですが、その数は2023年1月5日時点で6454人です。
年齢分布を見ると、20歳未満15%、20歳代11%、30歳代10%、40歳代14%、50歳代15%、60歳代11%、70歳代12%、80歳代10%、そして90歳以上1%。さらに、不明が1%となり、各世代で均等になっています。
ところが、予約件数を年利別で見ると、他の年代が1000件前後なのに比べて、80歳代は3603件、70歳代は2871件で、圧倒的に数が多いことが分かります。
また、予約方法でも年代で大きな違いが浮き彫りになりました。
スマホアプリの利用が20歳未満95.6%、20歳代95.8%で、この比率は年代が上がるにつれて減少し、60歳代は42.3%に。
それが、実際の予約件数が多い70歳代では18.1%、80歳代では4.4%となり、高齢者ではやはり電話への依存度が極めて高いことがはっきりと分かります。
また、登録者の居住地別では、市内在住66%、市外在住26%、市内別荘7%、そして不明が1%でした。
特に年末は、帰省する人によって市街在住の比率が上がりました。
次に利用者総数は1万5595人で、1台の車両に他の予約グループが乗り合う比率である「乗り合い率」は、11月と12月では32.2%となり、7割近くが乗り合わずにタクシーのように目的地へ直行していることが分かります。
利用者数を平日と土休日で分けてみると、12月は平日が約6割でした。
時間帯別では、平日は朝8時台が最も多く、次いで9時台、10時台となり14時頃までは安定して利用がありますが、15時以降ははっきりと減少する傾向にあります。
一方、土休日は8時台では平日の3分の1程度で、平日に比べると1日を通しての変化があまり大きくありません。
こうした利用時間の分布は、主な乗降場所に直接関係してきます。
最も多いのが茅野駅西口、次いで市街中心部にある諏訪中央病院で、茅野市東口、オギノ茅野ショッピングセンター、ショッピングサンターメリーパーク、茅野市役所と続きます。
その他では、医療施設や商業施設への移動が多くなりました。
移動距離としては、1km未満から10km以上と幅が広く、平均値をとると4.7kmとなっています。
こうしたのらざあの現状について、茅野市の関係者は「概ね想定通り」という感想を話しています。
ただし、「需要が多い時間帯には、運転手が休憩できないことも生じており、今後は運行関係者のより良い働く環境づくりと、利用者の移動の利便性とのバランスを上手く考えていきたい」とも指摘します。
このように、AIオンデマンド交通では、利用に関する細かいデータが収集できます。
茅野市はデータという確固たる「エビデンス(根拠)」に基づき、利用する人のみならずドライバーなど働く人も含め「人中心」という視点で、のらざあの改善を進めることになりそうです。
茅野市が展開する、のらざあの意欲的な取り組みに今後も期待したいところです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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