なぜ「ロールスロイスよりセンチュリー」を選んだ? 超エリート学生が惚れた日本の美意識! 約430万円で購入した個体とは
世界中にファンが存在する日本車ですが、なかでも年式が古いモデルはその傾向にあります。そんななかトップデザイナーを目指す中国の富裕層学生は「ロールスロイスよりも好き」といったトヨタ「センチュリー」とは、どのようなモデルなのでしょうか。
なぜ超エリート学生はセンチュリーに惚れたのか
日本を代表するショーファーカーのトヨタ「センチュリー」。
2023年現在は3代目モデルが販売されていますが、そのなかで1997年に発売された2代目モデルに惚れた人物が存在。いわく「ロールスロイスよりも好き」だといいます。
中国・南京出身の楊曹(ヨウ・ソウ)さんは自動車デザイナーを目指す20代の若者です。
高校生のときに渡米し、卒業後はトップデザイナーを多数輩出している「ArtCenter College of Design(アートセンターカレッジオブデザイン)」のトランスポーテーションデザイン学部で自動車デザインを学んでいます。
自動車デザインの世界ではとても有名なArtCenter College of Designは、1930年に設立されたカリフォルニア州パサディナにある芸術系の大学です。
工業デザインや自動車デザイン、映像や写真、グラフィックデザインやビジュアルアートの分野でも多くの著名人を送り出している名門学校となります。
世界の著名自動車デザイナーの多くはこの大学の卒業生で、日本人初のフェラーリデザイナー奥山清行氏、初代ユーノス・ロードスターやRX-7(FD)などのデザインに関わった俣野努氏、日産自動車の中村史郎氏、イタリアの著名カロッツェリアザガートのチーフデザイナー原田則彦氏などが挙げられます。
そんな精鋭ぞろいの同大学ですが、ヨウさんがArtCenterに入ったきっかけは、BMWの有名デザイナーであるクリス・バングル氏がアートセンターの卒業生であったことに関係しています。
「私が中国で所有しているクルマの中にBMW 7シリーズ(E66)がありますが、このクルマをデザインしたのがクリス・バングル氏です。7シリーズセダンのデザインはとても美しく、大好きです」(ヨウ・ソウさん)
筆者は2022年秋に開催されたアートセンターのクローズドな催しに参加する機会に恵まれました。
アートセンターを卒業したトップデザイナーたちが、自らデザインしたクルマを前に学生たちにプレゼンをおこなう「同窓会」のような催しです。
学生が所有する車両も展示されており、日産「スカイラインGT-R(BNR32)」とともに目立っていたのがヨウさんのトヨタ「センチュリー」でした。
1997年式フルノーマルのセンチュリーを所有するヨウさんにセンチュリーの魅力について聞いてみました。
「中国で友達のレクサス LS430にも乗って、すごく感動しました。
クラウンも好きですね。日本の高級セダンは本当に素晴らしいクルマばかりです。
その頂点にたつクルマがセンチュリーだと思っていて、以前からずっと憧れがありました。
でも、中国では右ハンドル車は走行できませんし、海外からの中古車自体、輸入ができません。
もちろん、新車のセンチュリーも一般販売はされていません。中国で所有するのは無理だと思っていたところ、たまたま25年ルール解禁でアメリカに輸入された個体があって、購入することになったのです。
1997年式なので、25年ルール(製造から25年が経過すればアメリカの保安基準FMVSSの縛りを受けず、合法的に輸入ができる)にて2022年に解禁されたばかりでした。
フルノーマルの状態に戻すために、いろいろとパーツを交換してきれいに仕上げたので購入費用は3万ドル(約430万円)。購入当時の走行距離は9万マイル(14万4000km)でした」
自動車評論家の福野礼一郎氏曰く、各部品メーカーが、"センチュリー向け"には、メーカーの矜持にかけて最高品質のパーツを納品しようと頑張るので、ロールス・ロイス並みにコストのかかったクルマが半額で買えるとのこと。デザインが気に入っているなら良い買い物かも。