走行距離「10万キロ」超えた“クルマ”何が“ダメ”? 「過走行車」で注意したいポイントとは

サスペンションのジョイント部

 サスペンションは、コイルスプリングとショックアブソーバー、各種のアームやジョイントで構成されています。

 アームやジョイントは、人間に例えると体の各部の関節に相当する部品。クルマの操縦性向上のために、アームやジョイントは正確に動くことが求められています。

 大昔のクルマでは、道路事情が良くなかったためにサスペンションにある程度あいまいさを持たせて、摩耗する箇所を減らしていました。

 しかし、現代の高性能車はアームの数を増やして正確な動作を目指した結果、関節に相当するジョイント部分が増えてきました。

 さらに、車重の増加やタイヤの高性能化、コストダウンなどから、ジョイントの部分の摩耗が早期に起こる場合があるようです。

 ジョイントが摩耗すると、ハブベアリング同様にカーブや突起を乗り越えた際に音が発生します。

 走行距離が10万kmに近づくと、ジョイント摩耗の可能性が高まります。

 定期点検を受けることはもちろんですが、整備への心構えと費用の準備が必要です。

販売開始から10年が経過したホンダ「N-ONE」
販売開始から10年が経過したホンダ「N-ONE」

ラジエーターファン

 エンジンが発生する熱は、冷却水を循環させてラジエーターで冷やしています。

 低速時など走行風が弱い時に備えて、ラジエーターには電動式のラジエーターファンが装着されています。

 また、エアコンのスイッチをオンにしたときにもエアコンコンデンサという放熱器を冷やすために、水温にかかわらずラジエーターファンを作動させます。

 近年では、気温や天候にかかわらずエアコンを常時使用する人が増えたため、ラジエーターファンの稼働時間も長くなりました。

 ラジエーターファンは十分な耐久性をもつように設計されていますが、それでも作動時間が長くなると故障する可能性が高くなってきます。

 すると、状況によってはエンジンの冷却水温度が上昇し過ぎて、最悪の場合にはオーバーヒートを起こしてしまいます。

 水温計や高水温警告灯にドライバーが気づけばよいのですが、気づかずに運転を継続するとエンジンがオーバーヒートを起こしてしまい、状況によってはエンジン修理不能になってしまうことがあります。

 すると、エンジン自体の交換が必要となり、費用が数十万円に到達、もちろん作業に要する時間も長くなります。

 あらかじめラジエターファンを交換する必要はありませんが、10万kmを超えたクルマの場合には冷却水温に気をつけながら走行した方が良いでしょう。

 余談ですが、10年10万kmは冷却水温を安定させるサーモスタットも寿命に近づく頃なので、なおさら水温に注意するに越したことはありません。

ハイブリッドシステム冷却装置

 街中には、すっかりハイブリッド車が増えました。

 このハイブリッド車の高電圧装置はエンジン以上に高温に弱いために、専用の冷却装置を装着しています。

 ハイブリッド関連装置は、車両走行可能状態では常時作動するために、冷却装置も作動時間が長くなっています。

 冷却装置には、ウオーターポンプ、冷却水、冷却ファン、フィルターなどがあります。

 ウオーターポンプと冷却ファンの点検は、定期点検の際に作動しているかどうか確認するのみ。なので、その故障はあるとき突然起こることが多くあります。

 万一、これらの冷却装置が故障した場合でも、モーターの出力を抑制して故障が拡大することを防いでいます。

 しかし、登坂路や高速道路でクルマの出力が抑制されてしまうと、周囲の車との速度差から危険な状態になることもあります。

 この冷却部品もラジエーターファンと同様、故障前にあらかじめ交換する必要はありませんが、10年10万kmに近づく時期には、交換時期が迫っていることを考えておきましょう。

※ ※ ※

 部品の寿命や重要性を考えて、すべての部品を故障前に交換することは、経済性の点でなかなか難しいこともあるでしょう。法定点検を必ず受け、整備士の方のアドバイスをよく聞きくことが大切です。

 そして普段の使用中でも、これまで聞こえなかった音が聞こえたり、メーターや警告灯の状態に気を付けるようにしましょう。

 おかしな点を感じたら、かかりつけの整備工場に相談されることをお勧めします。

 そして、車齢に伴う出費の増加とクルマ全体の痛みなどを考えながら、そのクルマに何年間乗るのか、計画的に維持管理しつつ、大型部品の寿命が来る前に買い替えることが理想的です。

 また、いざ故障した際の整備に伴う部品代や工賃は、クルマの高機能化により上昇する傾向にあります。

 万一の際に備えて、少しずつ費用を積み立てるのも良いですが、手段の一つとして保険も挙げられるようになってきました。

 大手損害保険会社では、故障したクルマのレッカー費用に加える形で、故障整備費用も補償する特約を設けるところが出てきました。

 月々の少しづつ出費していくことで、安心を買うこともできるようになったといえるでしょう。

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