世界が注目する「WRC」とは何? 愛知・岐阜各地で「ラリージャパン」開催の意義は? 地域盛り上げの期待高まるなかの「メリット・デメリット」とは

既に経済効果も出始めている一方で開催自治体ではデメリットも

 一方で、各自治体の担当者はメリットだけでなく開催によるデメリットも実感しているようです。

 設楽町の担当者は「(SSが)金曜日の平日に開催するので、交通規制が発生します。通勤や通学に少なからず影響あります」と話します。

 豊田市の担当者は、「交通規制が発生するので市民生活に影響がでます」としながらも「これまで開催してきたモータースポーツイベントでは市民の理解が得られています」とデメリットについてはさほど大きな問題ではないとしています。

全開走行するため道路の封鎖は必須
全開走行するため道路の封鎖は必須

 このように、ほとんどの自治体でデメリットとして取り上げていたものは、「地域住民への影響」。

 競技の実施に際し、交通を遮断する必要があるため、平日開催の場合は通行止めなどの交通整理は必須で、通勤や通学への影響は免れません。

 このことについて中津川市の担当者は「周辺住民の理解は絶対で時間もかかります」と開催の協力を得ることの大変さを話しています。

 さらに、その交通整理をはじめ、会場のピックアップやPR活動など費用がかさむことが予想されます。新城市の担当者は「(開催には)かなりの予算が必要でした」と振り返ります。

 また、SSについても各自治体で差があり、日程や開催のタイミングなどでデメリットを感じることもあるようです。

 中津川市の担当者は「今回は、中津川市内のSSが午前中1回で終了してしまいます。定員も少ないです」と話します。

 長久手市の担当者は「(ベッドタウンで宅地が多いという)地域の特性上SSが設定されません」と、地元出身の勝田選手が出場するなか、SS自体の設定がなされないことを嘆いています。

 では、地域住民から理解を得なければならないという高いハードルがあり、その上予算も必要、さらには予想外の延期が2回も重なり、結果的に厳しいといわざるをえない状況に直面していますが、開催地域では盛り上がりを見せているのでしょうか。

 ほとんどの自治体では、地域住民からの期待の声が多く、関心を寄せる方が多いといいます。

 岡崎市の担当者は以下のように話します。

「当初ラリー競技自体への不安の声がありましたが、説明を繰り返すうちに理解を得ることができ、度重なる延期でも欠かさずPRイベントをおこなうことで、地域住民の熱と期待を高めることができました」

 設楽町の担当者は、「新型コロナウィルスにより延期となったことを残念がる声が多かったです

 町民からは『今年開催できるの?』といった声も上がり、ようやく開催できて期待が膨らんでいます」と続け、WRCにより全世界が設楽町のことを知ってもらうきっかけとして前向きに捉えている地域住民が多いと分析しています。

 市民限定で観戦エリアが展開される新城市では、「地元の人たちは歩きで観戦エリアまで行くことができ、早くも『ラリーを見たい』という声もあがっています。

 新城では20年間ラリー競技が開催されており、国外のラリーイベントのような、ひとつのお祭りのようになるといいですね」と今後についても期待を寄せています。

 恵那市の担当者も「徐々に盛り上がりを見せている様子です」とコメント。

 各地域の経済効果については、大会の開始前ということで正確にはわからないとする自治体がほとんどでしたが、豊田市や設楽町によるとすでに宿泊施設の予約が埋まっており、新規での予約は取りづらく、経済効果は大いに期待できると話します。

 さらに設楽町の担当者は「SSとなる道の周辺に、ラリーファンと思われるスポーツカーやバイクなどが増えてきました」といい、開催前にも関わらず既に現地の様子を見たいモータースポーツファンが訪れているようです。

 恵那市の担当者は、「SSやリエゾン区間のある地域では、観客の受け入れ準備を進めています。観光や宿泊などの経済効果に期待しているところです」と、観戦者が市の観光地にもお金を落とすことで、経済の活性化に期待を寄せています。

 中津川市でも、「はっきりとしたもの(経済効果)は不明ですが、各媒体で市の名前が掲載されていることから、問い合わせも多く、広告としての効果を感じています」と、反響の高さを実感しているといいます。

※ ※ ※

 今回のラリージャパンでは、開催に向けての各自治体による準備や、予想外の延期が2度も続くなど、調整に困難を極める側面も多く、それにともなうデメリットも避けては通れない現実があります。

 一方で、開催によって全世界から各地域への注目が集まり、継続的な観光客増加と地域の活性化などに期待が持てるほか、通常横のつながりを持つことが少ない各自治体が、トヨタをはじめとする協賛企業と協働し、官民一体となってひとつのイベントを成功させようとするケースは珍しいといえます。

 このラリージャパンが無事成功し、経済効果も具体的な数値によって明らかになることで、自治体と企業の協働による成功事例として残ることになるか、地域の活性化という視点からも期待の高まる大会となっています。

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