「ブレーキが効かない!?」 静岡の大型観光バス横転事故 考えられるふたつの原因とは

エアブレーキ故障の可能性はあるのか

 事故に関する、もうひとつの観点は、車両の故障です。

 大型観光バスは一般的に、エアブレーキを装着しています。仮に、エアブレーキに必要なコンプレッサーや、それに関わるパイプやバルブに不具合が生じていれば、フェード現象が起こっていなくても「ブレーキが効かない」という状況に陥る可能性があるはずです。

 また不具合がなくても、エアブレーキの作動に必要なエア圧を十分にあることを確認しながら運転する必要があります。

須走口から臨む富士山[画像はイメージです]
須走口から臨む富士山[画像はイメージです]

 以上のように、バスドライバーの運転ミス、または車両の故障、それぞれの可能性を考えてきましたが、バスやトラックのメーカーに近年、各種取材をした経験の中で、フェード現象への対応策が急務であるといった考えを示すメーカー関係者はいなかったと感じます。

 それよりも、予防安全技術として衝突被害軽減ブレーキなどの高度運転支援システム、ドライバー異常時の緊急停止システム、そしてコーナーでバスやトラックの姿勢を安定させる制御システム、さらには乗り心地の向上などの技術開発が重要視されてきています。

 メーカーは、フェード現象やエアブレーキの故障などについては、車両設計と量産開発のなかで保安基準を十分に満たし、さらに万が一の場合でも冗長性(バックアップ)があるシステムにより、安全第一を徹底しています。

 一方で、観光バスの購入者である運行事業は中小企業も多く、経営状況によってバスの車齢や保守状態にもかなりの差があることが考えられます。

 当然のことながら、そうした状況を観光バス運行事業者は十分に認識したうえで、バスドライバーの教育活動や車両整備に務めていただきたいと切に願います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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1件のコメント

  1. 2016年1月15日の「軽井沢スキーバス転落事故」で散々有名になったフットブレーキの多用による事故なんですから大型バスのドライバーには常識であると思うんですけど。また、事故発生時の状況から見れば法面に乗り上げて止まろうとした結果で、転落事故を起こすよりは被害は軽微だと思いますけど。これで法面を転げ落ちたら全員死亡してても不思議はないです。
    あとは、整備不良によるものか、ドライバーの運転技量の低さかは、調査が進めば分かるのでは。情報が少なすぎて責任が人的なのか、管理的なものなのか何とも言えないですね。ドライバーが逮捕されたのは直接的原因からでしょうけど、管理的な原因であればドライバーが不起訴で、運行会社の社長と運行管理者。場合によっては整備管理者も逮捕されるかも知れません。

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