日産「マーチ」なぜ国内終了? 海外版「マイクラ」の日本導入はアリ? EVで復活の可能性も!?
日産でもっともコンパクトなモデルとして40年にわたって愛されてきた「マーチ」が2022年8月をもって国内販売を終了しました。
40年の歴史に幕を閉じる「マーチ」
日産のコンパクトカー「マーチ」の日本仕様が2022年8月をもって販売が終了し、現在は在庫のみの販売となっています。
初代モデルは1982年に登場しており、40周年となる節目の年に奇しくも販売終了ということになりました。
初代から4代目まで、日産車のラインナップのボトムラインを担い続けてきた(軽自動車を除く)功労者ともいえるマーチですが、残念ながら現段階では5代目の登場もアナウンスされておらず、一旦その歴史に幕を閉じるということで残念に思っている人も多いのではないでしょうか。
マーチは初代モデルから日産車のエントリーモデルであると同時に、モータースポーツのベース車としても親しまれており、長らくワンメイクレースが開催されていたほか、4代目では「NISMO」シリーズがラインナップされ、買いやすい価格で日産モータースポーツのDNAを感じ取れる稀有なモデルとなっていた点も見逃せない特徴といえるでしょう。
日産の歴史のなかでも重要なポジションを担ってきたマーチが、なぜフルモデルチェンジをすることなく販売終了となってしまったのでしょうか。
実は、海外(欧州)では2017年の春から5世代目となる「K14型」が登場しており、現在も絶賛発売中。
過去にも幾度となく、「日本にもこの5世代目モデルが新型マーチとして導入されるのでは?」というウワサがあったのですが、残念ながらそれは実現することはありませんでした。
その理由のひとつとして考えられるのが、K14型マーチ(海外名:マイクラ)がフランスにあるルノーの工場で生産されていたということです。
日本で販売された4代目マーチもタイの工場で生産したものを輸入販売という形をとっていましたが、これがフランスからの輸入となると、現在のようなエントリー価格での販売は難しくなることでしょう。
実際、現地でのルノー「クリオ(日本名:ルーテシア)」の販売価格は1万7100ユーロ(約245万円)からとなっていますが、マーチ(マイクラ)の価格は2万90ユーロ(約290万円)からとワンランク上の価格設定となっており、これを日本に輸入しても現在のように120万円台からのエントリーモデルとして販売するのは不可能だったのです。
また、日本市場では電動車の先陣を切るメーカーとして、EVの「リーフ」や「アリア」に加え、シリーズハイブリッドの「e-POWER」などを積極的に展開している日産ですが、K14型はダウンサイジングターボを中心とした内燃機関搭載モデルのみとなっており、モーターを備えたモデルはラインナップしていません。
ボディサイズも全長こそ4メートル未満ですが、全幅が1700mmを超える3ナンバーサイズとなっており、もっともコンパクトな普通車というマーチのポジションがあやふやになってしまうという点もネックとなったのかもしれません。
そして日本には前述したe-POWERを搭載した新時代の日産を代表するコンパクトカーとして「ノート」がガッチリとそのポジションを不動のものとしていたことも、海外で販売されている新型マーチが導入されなかった要因といえるでしょう。
過去にも日産は「サニー」と「パルサー」という、比較的車格の近い2車種が長らくラインナップされていた時代がありましたが、サニーは北米向けに、パルサーは欧州向けに仕立てて日本で終売してからも海外で継続販売されていたという事実もあるため、マイクラとして独自の進化を続けていく可能性はありそうです。
では、日本向けのマーチは完全に消滅してしまうのかというと、そうとも言い切れません。2022年1月におこなわれた日産・ルノー・三菱のアライアンス会見の席上で欧州向けに新型コンパクトEVを投入するとアナウンスしました。
そのスタイルがマーチを思わせる丸みを帯びたスタイルとなっており、日本で電動化を推し進める日産の戦略ともマッチするため、日産の普通車EVのなかでもっともコンパクトなモデルとして、しばしの充電期間を経てマーチの名前が復活する可能性もあるかもしれません。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
日産は、日本ではコンパクトカーはもうノートしか売る気が無いんだろうね