超絶ユニークな商用車があった!? ホンダが誇る迷車・珍車3選

もうすぐ新型「ステップワゴン」の発売が控え、さらに2022年7月に新型ハイブリッド車の「シビック e:HEV」の発売に2022年中には新型「シビック タイプR」の発表が予定されるなど、ホンダに注目が集まっています。このホンダの歴代モデルには、非常にユニークなモデルも存在。そこで、かつて販売されていたホンダの迷車・珍車を、3車種ピックアップして紹介します。

ホンダが誇る迷車・珍車を振り返る

 ホンダはすでにオートバイメーカーとして成功を収めていた1963年に、初の4輪自動車として軽トラックの「T360」を発売。ここから自動車メーカーとしてのホンダの歴史が始まりました。

超絶ユニークな発想で開発されたホンダの迷車・珍車たち
超絶ユニークな発想で開発されたホンダの迷車・珍車たち

 この最初の自動車だったT360は、当時の軽トラックの常識を覆す360cc直列4気筒DOHCエンジンをミッドシップに搭載。最高出力30馬力(グロス)を8500rpmで発揮する高回転・高出力型エンジンであり、まさにホンダイズムの象徴的なクルマでした。

 その後は車種ラインナップを拡大しつつ自動車メーカーの存在感も高まり現在に至りますが、これまで約60年の間には数多くの名車も誕生しました。

 一方で、長い歴史のなかには、非常にユニークなモデルも存在。

 そこで、ホンダの歴代車のなかからとくに注目に値する迷車・珍車を、3車種ピックアップして紹介します。

●L700/P700

商用車には似つかわしくない高性能エンジンを搭載した「L700」

 前述の軽トラックT360も十分に迷車といえますが、1965年には「高速時代のライトバン」というキャッチコピーとともに、やはり常識を覆すような商用バンの「L700」が誕生しました。

 L700は、オープンスポーツカー「S600」の直列4気筒DOHCエンジンをベースに排気量を700ccへ拡大し、低回転域のトルク不足を補ったかたちで搭載。

 キャブレターを4キャブからツインキャブ(後にシングルキャブ)に換装し、最高出力は52馬力までデチューンされていたとはいえ、当時は欧州製スポーツカーでも非常に珍しかったDOHCエンジンをライトバンに搭載したことは異例中の異例でした。

 外観はテールゲートを備えた3ドアのスクエアなフォルムのボディで、兄弟車としてピックアップトラックの「P700」もラインナップ。

 さらに国産車では初のストラット式サスペンションをフロントに採用するなど、ライトバンとはいえ先進技術が投入されていました。

 また、1966年にはトルク不足を解消するため排気量を800ccにアップした「L800」と「P800」を発売しました

 しかし、商用車に複雑な構造のDOHCエンジンは適していないのは明らかで、販売数は極めて少ない状況で、1968年に生産を終了。

 商業的には失敗に終わったL700シリーズでしたが、ホンダ初となるボックスタイプのボディだったことから、後の乗用車の大量生産に向けた合理的手法や設備の改善、生産技術に関するノウハウの蓄積に貢献したといいます。

 なお、L700シリーズの現存数は数台ともいわれますが、栃木県のツインリンクもてぎ内にある「ホンダコレクションホール」には、L700/P700ともに展示されています。

●バモスホンダ

まるで軍用車のような軽トラックとして開発された「バモスホンダ」

 ホンダ初の4輪自動車だったT360も、前出のL700と同じ理由で販売は低迷しました。そこで1967年に、T360の後継車として「TN360」が登場。

 エンジンは大ヒットした軽乗用車の「N360」から流用した360cc空冷直列2気筒SOHCエンジンを搭載し、一転してTN360の販売は好調となり、1970年にはTN360をベースにしたユニークな軽トラック「バモスホンダ」が加わりました。

 バモスホンダはTN360のシャシに専用のボディを架装するかたちで開発されたキャブオーバータイプの軽トラックで、フロントには丸目2灯のヘッドライトを配置し、スペアタイヤを搭載したことで、ファニーフェイスとなっていました。

 ボディタイプは2人乗り、4人乗り、4人乗りフル幌の3タイプが設定され、キャビンは全車キャンバストップのオープンボディを採用。一般的なパネルドアではなくパイプ状のものがドアの代わりに装着され、カーキ色のボディカラーも相まって、一見すると軍用車のようでした。

 また、キャンバス製のドア状のカバーも用意されていましたが、不意の雨でも慌てずに済むように、内装はシートに防水生地が使われ、メーター類も防水タイプが採用されました。

 バモスホンダのコンセプトは建設現場や工場内運搬、電気工事、農山林管理、牧場といった移動をともなう屋外作業と配達用としており、最低地上高は210mmと十分なクリアランスから悪路走行も想定していました。

 バモスホンダは軽トラックとしての使い勝手は良好だったといいますが、奇抜すぎるデザインで販売面では苦戦し、初代「シビック」の生産に注力するというホンダの方針もあって、発売からわずか3年後の1973年に生産を終了しました。

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●エディックス

新発想の2列シートミニバンながらヒットには恵まれなかった「エディックス」

 最後に紹介するホンダの迷車は、前出の2台よりもグッと最近のモデルで、2004年に発売された新発想のミニバン「エディックス」です。

 エディックスの最大の特徴は室内で、前列、後列とも横3名分の独立したシートが設置された2列シート6名乗車のレイアウトを採用していました。

 また、6席はすべて独立して前後にスライドでき、フル乗車時にはV字に配列することで乗員同士の肩が触れないように工夫され、さらにルームミラーをセンターではなくドライバー側にオフセットして設置し、サンバイザーが3つ装備されるなど、さまざまなアイデアが盛り込まれていました。

 外観は室内の広さを確保するため、左右のパネルをほぼ垂直とした個性的なフォルムを採用。

 ボディサイズは全長4285mm×全幅1795mm×全高1610-1635mmと、全長が一般的な3列シートミニバンよりも短く、取り回しの良さを実現しつつ十分な荷室容量も確保されていました。なお、ドアは前後ともヒンジドアでした。

 搭載されたエンジンは当初1.7リッターと2リッター直列4気筒でしたがパワー不足という声もあったため、後期型では2.4リッターエンジンが追加されました。

 エディックスはユニークなシートレイアウトの個性的なミニバンとして大いに話題となりましたが、やはり使い勝手の面ではスライドドア3列シートミニバンを凌駕するには至らず、2009年に一代限りで生産を終了しました。

※ ※ ※

 ユニークなホンダ車というと他にも数多く存在しますが、近年はかなり少なくなってしまった印象があります。

 かつての初代「シティ」や初代「トゥデイ」、2代目「Z」「コンチェルト」「HR-V」など、ホンダらしさあふれる「攻めた」クルマがたくさんありましたが、時代の流れによるニーズの変化には抗えないということなのかもしれません。

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