見た目が良ければイイ! 排ガス規制で「牙が抜かれた」けど意外とイケてた車3選
1970年代の日本では排出ガス規制が段階的に強化され、各メーカーとも対応に追われる状態でした。そのため、エンジンのパワーダウンが避けられず、スポーツカーや高性能車にとって「冬の時代」へと突入。しかし、そんな状況でもスポーティなモデルも存在しました。そこで、「牙が抜かれた」状態ながらかなりイケてた車を、3車種ピックアップして紹介します。
排出ガス規制の強化で「牙が抜かれた」状態ながらイケてたクルマを振り返る
1960年代の日本ではマイカーの普及が本格化し、自動車の保有台数も急激に上がっていました。すると、大きな問題としてクローズアップされたのが、大気汚染でした。
大気汚染の原因はクルマだけでなく、工場から排出される「ばい煙」や「揮発性物質」などもありましたが、やはり注目されたのはクルマの排気ガスで、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、そして粒状物資(PM)と、多くの大気汚染物質が含まれていました。
そのため、政府は排出ガス規制を進め、1973年に施行された「昭和48年排出ガス規制」以降、段階的に強化。なかでも1978年施行の「昭和53年排出ガス規制」は「世界でもっとも厳しい規制」と呼ばれたほどです。
1970年代は各メーカーとも排出ガス規制の対応に注力し、エンジンをパワーダウンしてでも規制をクリアする必要があり、スポーツカーや高性能車が次々と消える、まさに冬の時代でした。
しかし、そうした状況でもスポーティなモデルが存在しました。そこで、「牙が抜かれた」状態ながらかなりイケてた車を、3車種ピックアップして紹介します。
●スズキ初代「セルボ」
スズキは1971年に、軽自動車初の本格的なRRスポーツカー「フロンテクーペ」を発売しました。
2ドアクーペの外観デザインは巨匠ジウジアーロの原案によるもので、低いフロントノーズと傾斜したフロントガラスからリアまで流れるように続くスタイリングは、生粋のスポーツカーといえました。
また、同時期には軽自動車のパワー競争が勃発していたことから、最高出力37馬力(グロス、以下同様)を発揮するパワフルな3キャブレターの360cc2サイクル直列3気筒エンジンを搭載し、見た目だけでなく優れた走りを実現していました。
しかし、軽自動車も排出ガス規制の強化の対象であり、1974年には35馬力にパワーダウンし、1975年から軽自動車の排気量が550ccとなる新規格に移行したことで、1976年に生産を終了。
そして、1977年にフロンテクーペの後継車として初代「セルボ」が誕生しました。
外観はフロンテクーペのスタイルを継承するかたちでサイズは新規格に合致するように拡大され、エンジンは550ccの2サイクル直列3気筒をリアに搭載。ところが最高出力28馬力と大幅にパワーダウンしており、フロンテクーペほどドラマチックなエンジンではなく、出力特性もマイルドでした。
ただし、セルボは軽自動車で唯一無二といえるスタイリッシュさを誇っていたことには変わらず、一定の人気を獲得しました。
その後、1982年に2代目へとモデルチェンジし、初代「アルト」をベースしたFFクーペへと大きく様変わりし、2011年に5代目をもって歴史に幕を下ろしました。
ちなみに、初代セルボは英国で「SC100“Whizzkid”(ウィズキッド)」の名で販売され、ヒット作になりました。
●ホンダ「シビック 1500 RSL」
ホンダは1972年に、それまでのラインナップとは一線を画する新たなベーシックカーの初代「シビック」を発売。FFを採用してコンパクトなボディサイズながら広い室内を実現し、優れた経済性から大ヒットしました。
そして、1973年には1.5リッター直列4気筒のCVCCエンジンを搭載。CVCCエンジンは、パスすることは不可能とまでいわれていたアメリカの排出ガス規制、通称「マスキー法」の規制値を、後処理することなく燃焼の改善によって世界で最初にクリアしたエンジンです。
また、1974年には1.2リッターから76馬力を発揮するツインキャブエンジンと、欧州仕様の足まわり、13インチタイヤ、5速MTなどを装備するホットモデルの「RS」を発売。しかし、RSはわずか1年ほどで生産を終了しました。
その後1975年に、RSの後継車として「1500 RSL」が登場しました。ボディは2ドアと3ドアの2タイプで、外観ではポップなカラーリングを設定し、13インチタイヤとブラックのホイールを継承。内装ではウッドステアリングとチェック柄のシートが装備されるなど、スポーティな装いでした。
一方、シングルキャブの1.5リッターCVCCエンジンは最高出力75馬力と、パワー的には1.2リッターのRSを超えられませんでした。
その後、1979年に2代目シビック(スーパーシビック)がデビュー。トップグレードの「CX」は1.5リッターで85馬力を発揮しましたが、真の高性能モデルは次世代の3代目(ワンダーシビック)の登場からです。
●日産2代目「シルビア」
1965年に発売された日産初代「シルビア」は、2シータースポーツカーのダットサン「フェアレディ」をベースに、美しいデザインのクーペボディを架装した本格的なスペシャルティカーとして誕生しました。
しかし、生産工程の多くがハンドメイドで、価格は当時の「セドリック」を超える120万円と、まさに超高級車でした。そのため1965年から1968年までの3年間で生産を終了し、生産台数はわずか554台に留まりました。
そこからしばらく空白期間がありましたが、1975年に2代目シルビアが登場。正式名称は「ニュー・シルビア」となってデビューしました。
2代目シルビアは3代目「サニー」のプラットフォームをベースに開発されたスペシャルティカーで、外観のデザインも流麗な2ドアハードトップのファストバッククーペとなり、スピード感あふれるスタイリングでした。
しかし、エンジンはキャブレター仕様の1.8リッター直列4気筒SOHC「L型」で最高出力は105馬力と、規制前の1.6リッター「L16型」ツインキャブエンジンよりも劣りました。
1976年にはインジェクション化したエンジンも追加されパワーアップが図られましたが、それでも115馬力と、決してパワフルとはいえません。
2代目シルビアはパワー的な問題だけでなく、アメリカ市場を意識したデザインも好き嫌いが分かれ、販売は好調とはいえず1979年に3代目へとバトンタッチ。
3代目では後にターボエンジンやDOHCエンジンが搭載されるなどパワーが復活し、シャープなデザインも相まって若者から人気を集めることに成功しました。
ちなみに、2代目シルビアにはロータリーエンジンの搭載が予定され開発も進んでいたといいますが、排出ガス規制の強化だけでなく第二次オイルショックも重なり、結局は実現されませんでした。
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排出ガス規制の強化はさらに進み、今のクルマは昭和の時代と比べ物にならないほどクリーンになっています。
それでいて、パワーや燃費が飛躍的に向上しているなど、技術の進歩は目覚ましいものがあります。
また、各メーカーとも現在進行形でEVの開発に注力しており、近い将来には「排気ガス」という概念もなくなろうとしています。
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