なぜいま欧州の“はたらくクルマ”を正規導入!? フィアット「デュカト」日本上陸の狙いとは?
キャンピングカーの市場で圧倒的な人気を誇るデュカト
FCAジャパンは5年前、2017年のジャパンキャンピングカーショーに「デュカトバン」を参考出品しており、それ以来市場の動向を探ってきました。
これは、日本でもデュカトをベースとする海外製のものが導入されていただけでなく、日本のビルダーが手がけたキャンピングカーが存在したためです。
イタリアデザインの洒落たデザインとワイドな車幅を活かした広い室内空間が支持される一方で、メンテナンスや品質などの課題を指摘する声も多く、正規輸入となれば、しっかりとしたメンテンナンス体制や最新の情報、部品の安定供給などが期待できるため、FCAジャパンの正規導入を支持する声が高まっていました。
しかし、正式発表まで5年もの時間を要しました。その理由については、当時の仕様では導入が難しかった現実があります。
そのおもな要因は、パワートレインです。
従来型の2.3リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、アドブルーによる尿素SCRシステムが非搭載で、日本の排ガス基準に適応することが難しく、さらに組み合わされるシングルクラッチの6速AMTの評判も芳しくありませんでした。
このため、国内導入されるデュカトベースのキャンピングカーは、MTが基本でした。
現在のクリーンディーゼルターボは尿素SCRシステムを備え、快適でスムーズな走りを実現する9速ATとなっているのも強みとなります。そのエンジンを積む改良型デュカトをベースに、国内でのテストも実施して、正式導入へとこぎ着けました。
販売体制については、既存のフィアット正規ディーラーネットワークではなく、独自の「デュカト」販売ネットワークを構築するといいます。
取り扱いディーラーは、正規ディーラーおよびキャンピングカーなどの架装業者を想定。スティランティスグループのメリットを活かし、FCAジャパンの新車ディーラーだけでなく、PSAジャパンの新車ディーラーからも募集するといいます。
現状のFCAジャパンおよびPSAジャパンの販売ネットワークに固執しない背景には、販売店の設備がデュカトに対応できないことなどを想定していることが考えられます。また同時に全国でのサービス協力ネットワークの構築にも力を入れていく方針だといいます。
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この正規導入に熱い視線を送るのは、デュカトの購入検討者だけでなく、既存のデュカトオーナーたちでしょう。その点をFCAジャパンに聞くと、「現状も車体ナンバーなどの情報を元に、並行輸入車向けの部品販売はおこなっていますが、取り寄せのためにかなりの時間が必要でしたが、日本仕様と共通部品ならば、国内にストックするため、スムーズに入手できるものも出てくると思います」とのこと。
今後のメンテナンス体制について、インポーターとしては正規導入車のみを対象とする予定ですが、これまで同様に各ディーラー独自の取り組みとして、並行輸入車のメンテナンスをおこなうことに関しては、それぞれ独自のビジネスのため、口は出さないとしています。
一部の部品の入手がスムーズになる可能性はありますが、メンテナンスについては従来同様に、各自で頼れるディーラーを見つけるしかないようです。
2022年より、海外メーカーの参入のない小型商用車の分野の開拓を目指すFCAジャパン。もちろん、一気にビジネスの規模を拡大する野心は抱いておらず、小さくはじめてしっかりと育てていく方針のようです。
もちろん、欧州のようにビジネスバンや移動車のニーズがあれば、順次対応し、バリエーションを増やしていきたいとしています。その皮切りとなるデュカト正規輸入車のデリバリー開始は、2022年下半期からとなる予定です。
Writer: 大音安弘(自動車ライター)
1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。
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