高性能なクルマだけじゃない!? 日産が誇る異色の「GT」グレード3選
一般的に1台のクルマには複数のグレードが設定されています。グレードは仕様や装備によって分けられますが、なかでも高性能グレードとしてポピュラーだったのが「GT」で、とくにかつての日産車では盛んに使われてきました。そこで、日産が誇る異色の「GT」グレードを、3車種ピックアップして紹介します。
意外なモデルでも展開された日産のGTグレードを振り返る
1台のクルマには、パワーユニットや装備が異なる複数のグレードが設定されるのが一般的です。クルマ選びの際に、ユーザーは予算や使用状況などにマッチしたグレードを選ぶことができます。
最近のクルマではグレード名で上位モデルなのか下位モデルなのか、一見しただけでは簡単に判別できないケースが増えている印象があります。一方、かつてはグレード名である程度は上位、下位の判別ができました。
なかでも高性能なグレードでポピュラーだったのが「GT」です。GTはイタリア語のグランツーリスモ、もしくは英語のグランドツアラーの略で「大規模な旅行」を意味しますが、転じて「長距離でも余裕をもって走れるクルマ=高性能車」を指すようになったと考えられます。
このGTグレードをかつて積極的に使っていたメーカーのひとつが日産で、当初は6気筒エンジンを搭載したモデルであることが条件で、高性能車であることを主張していました。
後に、6気筒エンジンを搭載していなくても、比較的高性能なエンジンを搭載していればGTを名乗れるように変わり、なかにはユニークなモデルも存在しました。
そこで、日産が誇る異色の「GT」グレードを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4」
現在、ファミリーカーの王道といえばミニバンです。昭和の時代には7人以上が乗れるクルマというと、ワンボックスバンをベースにしたワゴンが主流でしたが、1990年代以降はセダンのプラットフォームをベースにしたミニバンが数多く誕生し、一気に普及しました。
そんな国産ミニバンの元祖といえるモデルが1982年に発売された初代「プレーリー」で、3列シートのステーションワゴンタイプのボディに両面スライドドアを採用し、センターピラーレス構造とFF駆動による低床化など、今のミニバンに求められている要素をすでに確立していました。
その後、2代目からは現在のミニバンに近いトールワゴンタイプのボディとなり、1998年に登場した3代目では車名が「プレーリーリバティ」に改められました。
この3代目にラインナップされた高性能モデルが、1999年に登場した「プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4」です。
エンジンは日産が誇るスポーツユニットの「SR20DET型」を搭載。2リッター直列4気筒DOHCターボエンジンは最高出力230馬力を発揮し、4速ATが組み合わされ、駆動方式はGT4の名のとおりフルタイム4WDでした。
また、タイヤサイズはベースモデルの195/65R15から205/60R15に換えられ、内装では本革巻3本スポークスポーツステアリングが装着されるなど、高性能エンジンにふさわしいアイテムが盛り込まれていました。
プレーリーリバティ ハイウェイスターGT4は大いに魅力的なスペックでしたが、当時の新車価格は269万円(消費税含まず)と「エルグランド」のエントリーグレード並の価格だったのに加え、ハイオク仕様で8.2km/L(10・15モード)という燃費では顧客が限られ、ヒットすることなく2001年のマイナーチェンジで廃止となってしまいました。
●日産「エクストレイル 20GT」
日産は2000年に初代「エクストレイル」を発売しました。都会的なデザインのSUVながら悪路走破性が高く、マリンスポーツやウインタースポーツを楽しむユーザーに配慮した内装を採用するなどヒット作となりました。
そして2001年には、「SR20VET型」2リッター直列4気筒DOHC NEO VVLターボエンジンを搭載する「エクストレイル GT」が登場。
最高出力はSR型エンジンシリーズのなかで唯一となる280馬力を誇り、トランスミッションは4速ATのみでしたがアクセルを踏み込んでターボの過給圧が高まると豪快な加速が味わえ、まさにGTを名乗るにふさわしいモデルでした。
そして、2007年に2代目が登場し、2008年には初のクリーンディーゼルターボエンジンを搭載した「エクストレイル 20GT」が加わりました。
2リッター直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジンは最高出力173馬力を発揮し、トランスミッションは当初6速MTのみ(後に6速ATを追加)と硬派なモデルでした。
加速フィーリングは前述のGTほどの豪快さはありませんでしたが、20GTも十分にパワフルで、ディーゼルエンジンながらGTの名を冠したのもうなずけます。
ちなみに、5代目(ジャパン)「スカイライン」にもディーゼルエンジンの「280D GT」がラインナップされ、7代目まで継承されました。
●日産「スカイライン GTE」
日産車のGTグレードは、プリンス時代の2代目「スカイライン」に、レースに参戦する目的で「グロリア」用の2リッター直列6気筒SOHCエンジンを搭載して開発された「スカイライン GT」から始まりました。
この経緯から前述にあるとおり、日産のGTは6気筒エンジンを搭載するという伝統が生まれたと考えられます。
その後、3代目から日産スカイラインとなり、現行モデルの13代目まで途切れることなくGTグレードが継承されています。
そして、歴代スカイラインのなかで1989年に登場した8代目(R32型)にはユニークなGTグレードが設定されていました。
GT-Rを除くR32型の場合、2リッター直列6気筒DOHCターボの「RB20DET型」を搭載した「GTS-t系」、それと2リッター直列6気筒DOHC自然吸気の「RB20DE型」を搭載した「GTS系」が主力モデルでした。
さらに、2リッター直列6気筒SOHC自然吸気エンジンの「RB20E型」を搭載した「GTE系」が存在し、最高出力は125馬力と、280馬力を誇ったGT-Rの半分以下のパワーでした。
GTEというと現在なら電動化した高性能モデルを思わせるグレード名ですが、R32型の場合はセダンの廉価グレードで、価格は169万7000円(MT、消費税含まず)からと安価でした。
その後、9代目(R33型)にも直列6気筒SOHCエンジン車としてGTSが設定され(主力はGTS25系)、10代目(R34型)では全グレードで直列6気筒DOHCエンジンを搭載したことでSOHCは廃止となりました。
ちなみに、R32型ではより安価な「GXi」グレードもあり、エンジンは1.8リッター直列4気筒SOHCの「CA18i型」を搭載し、最高出力はわずか91馬力とGT-Rの3分の1以下でした。
※ ※ ※
GTグレードといえば、かつてはトヨタも盛んに使っていました。トヨタの場合はDOHCエンジンを搭載することがGTを名乗る条件で、昔はそれほどDOHCエンジンが特別な存在だった証といえるでしょう。
近年ではトヨタもGTを使わなくなってしまい、「86」から「GR86」にフルモデルチェンジした際に、トヨタ車からGTグレードが消滅してしまいました。
なお、クロスオーバーSUVの「C-HR」には「G-T」グレードがありますが、これは「G」グレードのターボエンジン車を表しています。
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