なぜスバルは「インプレッサ」に最新技術を初搭載する? 30周年のロングセラー車が果たす役割とは
スバル初の技術の数々をインプレッサに搭載する意味
インプレッサの役割は、WRXやXVが独立した今でも変わりません。
2016年に発売された現行型(5代目)は、ほかのスバル車に先駆けて、新世代のスバルグローバルプラットフォーム(SGP)を採用しました。
このプラットフォームは、現行型の「フォレスター」や「レヴォーグ」、「レガシィ アウトバック」、「WRX S4」にも受け継がれ、改善を加えながら採用が進んでいます。
安全装備も同様です。例えば歩行者保護エアバッグは、歩行者を含めて、さまざまな人達に向けたスバルの安全思想が表現された装備として注目されますが、この機能を日本車で最初に装着したのも現行インプレッサでした。
このほかにも新開発された2リッター水平対向4気筒直噴エンジンなど、現行インプレッサには初採用された装備が多いです。
一般的に、先進装備は価格の高い上級車種から普及を開始します。価格が高ければ、高コストな装備も採用しやすく、その後に少しずつ量産効果を向上させて低価格車に普及させます。
ところがスバルの歩行者保護エアバッグは、前述の通り、価格が求めやすいインプレッサが最初に採用しました。その理由は、優れた安全装備は、大量に販売されるクルマに採用してこそ、現実的な事故防止の効果も高まるからです。
例えば高級なオーディオなどは、熱烈に欲しい少数のユーザーだけが装着しても価値を発揮できますが、安全装備は違います。
事故を防いだり被害の拡大を抑える、「本来は作動して欲しくない装備」ですから、装着車が広く普及してこそ開発した効果も高まるのです。
従ってスバルは、安全装備の採用において、上下関係のヒエラルキーに捕らわれません。その典型がインプレッサの歩行者保護エアバッグなのです。
コストとのバランスも考えると困難な商品開発でしたが、それだけに得られた安全性の向上も大きいです。
さらに、ほぼ毎年、改良をおこなって進化させていることもインプレッサの特徴です。
現行型は2016年に発売された後、2017年には運転支援システム「アイサイト」の夜間走行における歩行者の認識性能を向上するなど改善を加えました。
2018年には、渋滞時などにブレーキペダルから足を離しても停止状態を保つオートビークルホールド機能も採用しています。
2019年には、運転支援機能を進化させた「アイサイトツーリングアシスト」、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑える「アダプティブドライビングビーム」などを加えました。内外装のデザインも刷新されています。
2020年には、ハイブリッドシステムの「e-BOXER」を搭載する「アドバンス」とスポーティグレードの「STIスポーツ」をハッチバックに加え、2021年には、ファブリックシート生地にフロントシートヒーターを設定するなど一層の進化を遂げました。
しかも「1.6i-Lアイサイト」(2WD)の価格(消費税込)はセダン・ハッチバックともに200万2000円で、アイサイトコアテクノロジー、運転席/助手席/サイド/カーテンエアバッグ、16インチアルミホイールなどを標準装着しています。
同程度の装備と1.2リッターから1.5リッターエンジンを搭載する5ナンバーサイズのコンパクトカーと比べて、価格の上乗せを15万円程度に抑えました。
インプレッサであれば、3ナンバーサイズのボディによって走行安定性と乗り心地が優れており、後席も快適で、歩行者保護エアバッグなども標準装着されます。
インプレッサのプラットフォームや装備は、上級車種と基本的に同じですが、価格はライバル車との競争に負けないように割安に抑えました。そのために注目度の高い買い得車になっています。
販売店に出かけて、インプレッサに試乗してみると、後悔しないクルマ選びができると思います。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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