こんなはずじゃなかったのに… バブル崩壊に飲み込まれた不運なクルマ3選

バブル崩壊の中期・後期に翻弄されたモデルとは?

●バブル崩壊中期:マツダ「カペラ(GG型)」

 マツダの中型セダンであった「カペラ」は1970年に登場し、同社の中核車種として堅調なモデルライフを送っていました。

 カペラの評価は欧州で高く、各種の表彰も受け、日本国内でも自動車評論家から「まじめ」と評価されます。

 そのカペラは、バブルに伴って計画された「マツダ販売店網の多チャンネル政策」により、「クロノス」をはじめとした計7車種に分割されました。

マツダ6代目「カペラ」
マツダ6代目「カペラ」

 1991年10月登場のクロノスを皮切りに、5ドアハッチバックの「アンフィニMS6」とセダンの「MS8」、流麗な「ユーノス500」、四ツ目ライトの「オートザムクレフ」、日本フォード版の「テルスター」、クーペの「MX6」と大家族となったのです。

 いずれも入魂のデザインでしたが、ユーノス500以外は3ナンバーボディであったこと、V型6気筒エンジン中心のラインナップだったことなどから、贅沢が嫌われはじめた時期には受け入れられませんでした。

 V型6気筒エンジンは2リッターもあり、必ずしも3ナンバー課税ではなかったのですが、当時はぜいたくすぎると考えられた時代だったのです。

 そこでマツダは、クロノス継続中の1994年8月、廃止したカペラを復活させます。

 シャシはクロノスとユーノス500のものを改変した5ナンバーサイズとし、搭載エンジンも既存のものを低速型へと改良した115馬力の1.8リッター(FP-DE型)と、125馬力の2リッター(FS-DE型)の二本立てでした。

 きわめてコストダウンを優先した結果、1.8リッターの最廉価モデルでは149万8000円、2リッターの4WDでも204万3000円と、同クラスの日産「ブルーバード」と比べて約10万円程度安価に設定されていました。

 この安さも手伝い、カペラはほどほどに売れ、「デミオ」がヒットするまでのマツダの屋台骨を支えました。

 1994年半ば頃の景気はかなり悪化しており、名物社長が安売りをする電気店が話題になったり、酒やパソコンのディスカウントストアが多数出来るなど、とにかく「安いが一番」の時代だったのです。

 そんな時期に急遽復活したカペラは、趣味性やぜいたくさをなくし、清貧なモデルとしてクルマのマニアではない層に受け入れられ、1997年8月まで商品として真っ当なモデルライフを送るのでした。

●バブル崩壊後期:ホンダ「ロゴ(GA3・5型)」

 ホンダ「シティ」の後継モデルとして、1996年10月に「ロゴ」が登場しました。

 この頃になると景気低迷がごく普通のことになり、多くの人は「この不景気は本当に景気の循環によるものなのだろうか?」と疑問を感じるようになっていきます。

 前年1995年に阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件、1996年は山一証券の自主廃業や北海道拓殖銀行の経営破綻など、景気回復の要素は何もなかったのです。

 しかし不景気なりに時代を楽しむ空気が出て来るもので、邦楽がミリオンセラーを連発したり、漫画雑誌が最高発行数を記録したりしていました。

 不景気だからといって、日々の生活まで貧しくしない傾向があったことをうかがわせます。

 ロゴは、そんな不景気を十分に反映した内容で登場します。

 エンジンは1.3リッターSOHC2バルブと、スペック上はシティよりも退化したものでしたが、66馬力/5000rpm、最大トルク11.3kgf・m/2500rpmと、日常域の使いやすさを重視した低回転寄りの性能になっています。

 これに5速MTか3速AT、またはCVTが組み合わされ、カタログ数値を飾ることに捕らわれない、移動の道具としての目的を果たすクルマになっていました。

 一方でコストダウンもおこなわれ、前席のみパワーウィンドウのグレードが設定されていたり、前輪駆動モデルではフロントスタビライザーが省略されるなどしていました。

 フロントスタビライザーが装着されないと中・高速走行時のコーナーリング性能に難が出るものですが、走行性能までもがコストダウンの対象となってしまったのです。

 ここまでコストダウンが進むと、新車購入の喜びまでもダウンさせてしまったようです。

 1998年登場の後期型ではメッキ加飾が追加されたり、SOHC4バルブエンジン搭載の、走りも重視した「TS」グレードを設定し、コストダウンから転じた動きがみられてきました。

 しかし、ロゴの販売は好転することなく低迷が続き、2001年に生産を終了。

 同年にはシャシからエンジンまで新設計された後継車の初代「フィット」が発売され、空前の大ヒットを記録しました。

※ ※ ※

 クルマの開発は、前のモデルが登場したときに始まります。景気動向や前モデルの評判を加味しながら熟成、生産に着手するのですが、シルビアやクロノス系列は、景気の急変に対応できずに発売されたといえます。

 そしてカペラは3年弱で復活、シルビアも3年で大規模なマイナーチェンジ実施し、まずまずの成績を収めることが出来ました。

 一方、ロゴは景気が低迷してから企画されたことが明らかでしたが、景気低迷から約4年を経過した時期の人々は、「もう節約は飽きた」とロゴに興味を示さなかったといえます。

 いずれも時代の変化に飲み込まれ、変化を余儀なくされたクルマだといえます。

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