取締り強化? 規制緩和? 電動キックボードの扱いは結局どうなる? 検討されている新ルールとは
電動キックボードの規制緩和 その背景は?
今回の規制緩和の方針は、いきなり決まったというものではなりません。
2010年代後半頃から、欧米で電動キックボードのシェアリング事業が盛んになり、日本でも交通、車両規定、事業化の観点から、内閣府、警察庁、国土交通省、経済産業省などで多角的な議論が進められてきました。
そうした中で電動キックボードは、新しいビジネスモデルという観点から、産業競争力強化法の規定に基づき、新事業特例制度を使い、mobby rideやLuupなど4事業者が東京、神奈川、千葉、福岡、愛媛などで公道実証実験を実施しました。
このとき最高速度を15km/hに制限し、また実験場所が交通の頻繁な道路を含まない場合ヘルメットの着用義務なし(ただし着用を強く推奨)となりました。
この実証実験の対象として、ノーヘルで電動キックボードを乗る人がいたということでしょう。
実証実験の内容や海外での事例などを含め、さらに他の交通との関係性を考慮して、警察庁では電動キックボードに関する法改正を視野に入れた検討会が、2020年7月から2021年11月まで計9回にわたり開催されてきました。
名称を「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」といいます。
ここには、電動キックボードのみならず、電動車いす、自動配送ロボット、超小型モビリティ、自転車などが含まれます。
2021年12月に最終報告書が提示されていますが、新たな交通ルール(車両区分)の大枠として、「一定の大きさ以下の電動モビリティは、最高速度に応じて3類型に分ける」としています。
1つ目は歩道通行車(6~10km/h)です。電動車いすや自動配送ロボットが該当します。
2つ目は小型低速車(15~20km/h)です。通行できるのは車道、普通自転車専用通行帯、自転車道。ただし、歩道や路側帯を通行する際は、最高速度の制御とそれに連動する表示が必要としています。ここに、一部の電動キックボードが含まれます。
3つ目は既存の原動機付き自転車等(15~20km/h超)です。通行は車道のみ。免許所持やヘルメット着用の義務は維持としています。
つまり、今回話題となっている電動キックボードの規制緩和は、上記の「小型低速車」という類型に関するものが多いといえます。
免許の対応については、同検討会の中間報告書の中に海外制度に関する調査内容があります。例えばドイツでは運転免許不要・年齢制限14歳、フランスでは運転免許不要・年齢制限12歳などと記載されています。
最終報告書では、今後の検討事項等として、小型低速車の最高速度は「一般的な自転車利用者の速度(15~20km/h)と同程度で検討」としました。
また、交通安全教育のあり方については「運転免許を不要とするが、基本的な交通ルールに関する理解を担保するため、シェアリング事業者・販売事業者による利用者に対する交通安全教育の実施を求める」としています。
また、ヘルメット着用の促進も図るとしています。
以上のような、電動キックボードを含む多様なモビリティに関する道路交通法等の改正案について、警察庁は2022年の通常国会に法案を提出する方針です。
電動キックボードについては、法改正がおこなわれてからも、各地域の実情に合わせて利用者、地方自治体、事業者が丁寧に情報交換し、地域社会のルール作りが必要な場合も出てくるかもしれません。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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