マツダの高度運転支援技術「CO-PILOT」は他社システムと何が違う? 2022年登場の新型車に搭載!

ドライバーの異常を“予知”する機能とは?

 このマツダのCO-PILOT CONCEPTは高度運転支援システムと呼ばれるシステムですが、よく使われる自動運転レベルという考え方とは「別モノである」というのが、マツダの理念(コンセプト)です。

 今回の試乗体験に同乗した開発エンジニアは、「CO-PILOT CONCEPTは、ABS(アンチロックブレーキ)のようなクルマの安全走行の基本的装備であり、自動運転レベルという解釈ではレベルゼロだと考えています」と表現しました。

ドライバーの異常事態に作動する「CO-PILOT」とは
ドライバーの異常事態に作動する「CO-PILOT」とは

 そういわれて、他社の高度運転支援システムとの違いを考えてみました。

 ホンダが2021年3月に世界で初めて量産した自動運転レベル3の「ホンダセンシングエリート」や、トヨタ・レクサスの「アドバンスドドライブ」では、システム稼働中にドライバーがステアリングをしっかり握らなかったり、視線が定まらないと高速道路では自動減速して路肩に寄って止まります。

 スバルの「アイサイトX」でも同一車線で停止する様子を、国が所管する自動車テストコースで体験していますが、どれも高速道路など自動車専用道を走行中に、GPSの受信状態や周囲の状況など“一定条件が整った場合”のみシステムが作動します。

 一方、マツダのCO-PILOT CONCEPTは、高速道路だけではなく、一般道路でも作動しますし、またACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)の作動の有無にも直接関係していません。

 2022年導入のCO-PILOT1.0では、すでに導入している車内カメラをハードウエアとして継承し、ソフトウエアをアップデートすることで、ドライバーの姿勢から居眠りや体調急変による姿勢の崩れ、閉眼や運転行動を検知し、またステアリングのトルクセンサーからステアリング無操作を検知します。

 姿勢崩れでは、たとえば痙攣が起きるとステアリングを手前に強くひきつけて、姿勢がえびぞりになることを検知してドライバー異常を判定。

 そして2025年導入の進化系では、合計12個のカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーなどを搭載し高度三次元地図との連携も深めます。

 このほか、2025年に導入するのは、ドライバー異常の予兆を検知する技術です。

 これまでのドライバー異常検知のプロセスは、車両のふらつきを統計的に判定すること、またドライバーの眼の動きや顔の向きから眠気や脇見を検知することでした。

 これらに加えて、脳機能などについても判定をするというのです。

 マツダが広島大学と共同開発している分野で、てんかん、脳血管疾患、心疾患、低血糖、神経調節性失神などから大脳の機能低下が起こると、視線の“特定の個所への偏り”などが生じることが分かってきたといいます。そうして視線挙動から、ドライバー異常予兆を検知するというわけです。

「マツダは自動運転技術で、ほかのメーカーに比べて出遅れているのではないか」と考える人がいたら、それは正しい理解ではないと思います。

 なぜならば、そもそもマツダは、自動運転に対する考え方がほかのメーカーとは違うのですから。

 マツダといえば、「ロードスター」を筆頭に、「Be a driver」や「人馬一体」というクルマづくりに対する独自性が色濃いメーカーです。

 安全技術についても「『人』が中心の安全技術で、ドライバー自らの意思で運転し自由に移動する『走る歓び』をサポートする」という、企業としての理念を貫いています。

 そのうえで、「CO-PILOTが見守ることにより、ドライバーから走る歓びを奪わない安心・安全を目指す」と主張しています。

 そうしたマツダの思いを証明するような体感を今回でじっくり味わうことができました。2022年登場の量産モデルの出来栄えに期待したいと思います。

【画像】ドライバー異常時に自動で停車! マツダの運転支援システム「CO-PILOT」がスゴイ!(25枚)

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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