もはや絶滅は避けられないかも? 最新の大排気量自然吸気エンジン車3選

ここ10年ほどで、排気量や気筒数を少なくしてターボチャージャーを装着した「ダウンサイジングターボ」エンジンが急速に普及しました。その一方で、数が少なくなってしまったのが大排気量の自然吸気エンジン車です。しかし、直近では高性能な大排気量NAのモデルが誕生しています。そこで、最新の大排気量NAエンジンを搭載したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

大排気量の自然吸気エンジンを搭載した最新モデルを振り返る

 2000年代初頭に、欧州車から始まったパワーユニットの新しい概念が「ダウンサイジングターボ」です。既存のエンジンに対して排気量や気筒数を少なくして、ターボチャージャーやスーパーチャージャーでパワーを補うという仕組みとなっています。

今では希少は大排気量自然吸気エンジンを搭載した最新モデルたち
今では希少は大排気量自然吸気エンジンを搭載した最新モデルたち

 ダウンサイジングターボエンジンは、定速走行などの低負荷の領域では小排気量エンジンとして燃費を向上させ、加速時や登坂走行など高負荷の領域では過給機によって十分なパワーを発揮。

 また、気筒数を減らすことで車重を軽減し、トータルで燃費の向上を図り、さらに主要な部品の点数を減らしてコスト削減も実現できるとあって、ここ10年ほどで一気に普及しました。

 その一方で、絶滅が危惧されているのが、大排気量の自然吸気(以下NA)エンジンです。

 大排気量NAエンジンの魅力といえば、アクセルに対してエンジンのレスポンスが良く、回転数の上昇もリニアで、低回転域からの豪快な加速力が得られるというものですが、環境性能は良いとはいえません。

 そのため数を減らしてしまったのですが、ここにきて大排気量NAエンジン車が新たに登場しています。そこで、最新の大排気量NAエンジンを搭載したモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●レクサス「IS 500 Fスポーツ パフォーマンス」

もしかしたら最後のモデルとなるかもしれない大排気量NAの「IS 500 Fスポーツ パフォーマンス」

 現在、レクサスのセダンラインナップで、エントリーモデルとなっているのが「IS」です。

 かつてこのISには、最高出力423馬力を発揮する5リッターV型8気筒エンジンを搭載した、ハイパフォーマンスモデル「IS F」が2007年に登場しましたが、2013年のフルモデルチェンジでIS Fは消滅してしまいました。

 現行モデルのISではこれまで高性能モデルは設定されませんでしたが、レクサスの主戦場である北米では2021年2月に「IS 500 Fスポーツ パフォーマンス」が発表されました。

 エンジンはIS Fと同じく5リッターV型8気筒NAエンジンを搭載して、最高出力478馬力を発揮するなど、まさにIS Fの再来といえるモデルです。

 トランスミッションは8速ATのみの設定で、駆動方式はFRながら0-60mph(約96km/h)加速は4.5秒をマーク。専用の排気システムによって、V型8気筒NAエンジンならではの迫力あるエキゾーストノートを放ちます。

 足まわりも専用のチューニングが施され、強化したブレーキと、デファレンシャルギヤにはトルセンLSDが標準装備されるなど、大パワーにふさわしいシャシ性能を獲得。

 さらに外観では、巨大なエンジンを収めるために大きく盛り上がったフロントフードが装着されるなど、見た目にも迫力満点です。

 日本での発売は今のところアナウンスされていませんが、IS 500 Fスポーツ パフォーマンスは、今後二度と出ることはないであろう大排気量NAエンジンのスーパーセダンとして注目されています。

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●アウディ「R8 V10パフォーマンスRWD」

希少なV型10気筒NAエンジンを搭載した2WDモデルの「R8 V10パフォーマンスRWD」

 アウディ製高性能モデルの頂点に君臨しているのが、スーパースポーツカーの「R8」です。初代は2006年に登場し、当初のモデルではリアミッドシップに最高出力420馬力を発揮する4.2リッターV型10気筒NAエンジンを搭載し、駆動方式は4WDのクワトロを採用。ランボルギーニ「ガヤルド」と主要なコンポーネンツを共有する兄弟車でした。

 そして、現行モデルは2016年にデビューした2代目で、デザインやコンセプトは初代から継承しています。

 この2代目R8に2021年10月7日、後輪駆動モデルをベースによりパワフルなV型10気筒エンジンを搭載した、「R8 V10パフォーマンスRWD クーペ/スパイダー(オープン)」が登場しました。

 現在R8には、620馬力を誇るクワトロモデルの「R8 V10パフォーマンスクワトロ」が設定されていますが、R8 V10パフォーマンスRWDは文字どおりその後輪駆動モデルです。

 搭載するエンジンは5.2リッターV型10気筒NAで「R8 V10 RWD」用よりも30馬力向上した570馬力を発揮。トランスミッションは7速Sトロニック(DCT)が組み合わされ、0-100km/h加速は3.7秒(スパイダーは3.8秒)、最高速度は329km/h(スパイダーは327km/h)というパフォーマンスを誇ります。

 ボディは他のR8と同じくアルミの骨格にカーボン製パーツが多用され、車重はクーペが1590kg、スパイダーは1695kgと軽量です。

 まで、デファレンシャルギヤには機械式LSDが組み込まれ、トラクション性能を向上。サスペンションとドライビングダイナミクスは専用にチューニングされており、走行モードを「スポーツ」にすると、サスペンション設定と駆動力制御の最適化により、ドリフト走行が可能になるといいます。

 スーパーカーもターボエンジンもしくはハイブリッドが主流となるなか、R8 V10パフォーマンスRWDはかなり貴重な存在となりそうです。

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●シボレー「コルベット Z06」

高回転型のDOHCエンジンを搭載したハイパフォーマンスモデルの「コルベット Z06」

 アメリカンスポーツカーの代表的な存在といえば、シボレー「コルベット」です。1954年に誕生して以来、一貫してV型8気筒エンジンをフロントに搭載するFR駆動という伝統を守ってきましたが、2019年7月に登場した現行モデルの8代目「コルベット スティングレイ」では、シリーズ初のリアミッドシップカーとなりました。

 日本では2021年5月からデリバリーが始まっていますが、同じくシリーズ初の右ハンドルが設定されるなど、大いに注目されています。

 そして、2021年10月26日には、ハイパフォーマンスモデルの新型「コルベット Z06」のクーペとコンバーチブルが発表されました。

 コルベット Z06はこれまでも歴代モデルで何度か登場していますが、今回登場した新型は、1989年に発売された「コルベット ZR-1」以来となるDOHCヘッドの5.5リッターV型8気筒NA「LT6型」エンジンを搭載。なお、組み合わされるトランスミッションは8速DCTです。

 シリーズ最強の最高出力670馬力を8400rpmという高回転域で発揮しますが、この高回転化を実現するために、アルミ製シリンダーブロック、チタン製インテークバルブ、鍛造ピストンと鍛造チタンコンロッドが採用されました。

 当然ながら足まわりも強化され、ブレーキはフロント6ピストンキャリパーを含むブレンボ製システムを装備。

 さらにカーボンセラミックローターを備え、コルベットZ06のパフォーマンスをさらに引き上げる「Z07 パフォーマンスパッケージ」も用意されています。

 また、前275/30ZR20、後345/25R21という大径ワイドタイヤを収めるために、フロントとリアのフェンダーを拡大し、よりワイド&ローのスタイリングとなっています。

※ ※ ※

 最後に紹介したコルベットですが、ミッドシップ化にはアメリカでも賛否両論あったといいます。

 60年以上も守ってきたFRスポーツカーという伝統を捨てることには、GMも相当な覚悟が必要だったと察します。

 しかし、新型コルベットは既存のユーザーからも良好に受け入れられており、なにより欧州製スーパーカー並みの性能とスタイリングのクルマが700万円台(米国価格)からで手に入るとあって、優れたコストパフォーマンスのモデルといえるでしょう。

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