予測違い!? ホンダ「NSX」はもっと売れたはずだった? わずか4年で終了が決定された理由とは

NSXを購入したい人はたくさんいたのに年間100台は少なすぎた

 NSXを扱うNSXパフォーマンスディーラーに販売状況について尋ねると、以下のように返答されました。

「NSXは価格が2000万円を超えるスーパースポーツカーですが、購入を希望されるお客さまは少なくなかったです。先代型も高く売却できるので、乗り替えを希望するお客さまからは問い合わせも多く受けました。

 また先代型を買えなかったお客さまが、いまは所得が増えて購入されるケースもあります。それなのに割り当て台数が限られ、販売計画は不明瞭です。

 常に購入できるクルマではなかったので、タイミングを逃して諦めるお客さまもおられました」

国内30台限定の最終モデル「NSX タイプS」
国内30台限定の最終モデル「NSX タイプS」

 NSXはいつ買えるか分からないクルマだったので、メーカーのホームページには掲載されても、販売会社では自社のホームページに載せないことも多かったといいます。

 海外と日本では、NSXに対するニーズが大幅に違いました。海外では開発者が述べた通り、「高性能なスポーツカーとしての認知度やブランド力が海外の強豪に及ばなかった」わけですが、日本には買いたい人も多かったのです。

 それならどうして、国内の販売計画を1年間に100台と設定したのでしょうか。

 この点も開発者に尋ねると、「新車価格が2000万円以上の高価格車は、日本では1年間に400台から500台が販売されています。この販売実績から、NSXの国内販売台数は100台と考えました」とのことでした。

 ここにホンダの誤算がありました。日本のユーザーにとってNSXはスポーティなホンダ車の象徴で、初代モデルを知っている中高年齢層には憧れの存在でもあります。

 日本で1年間に400台から500台が販売されるのは、いわば価格が2000万円を超える普通の輸入車ですが、NSXは別格なのです。

 ちなみに、GT-Rは約1000万円から約1600万円という高価格なスポーツカーですが、1年間に700台から800台を販売しています。この販売実績を考えれば、NSXが1年間に100台では少なすぎました。

 NSXを求めるすべての日本のユーザーに販売できていたとすれば、NSXは終了しないで済んだかも知れません。

 現時点で現行NSXを見かける機会はほとんどありませんが、供給体制が整っていれば、街中でその姿を見る機会も増えたでしょう。そうなれば欲しいと感じる新たなユーザーも生まれたはずです。

 新型GR86・BRZや新型フェアレディZが登場するなかでNSXが生産を終える最大の理由は、ホンダが日本のユーザーに向き合わず、市場も正しく分析できず、十分な台数のNSXを国内市場に供給できないことにありました。

 NSXの最終モデルとされる「タイプS」は、海外と国内の販売格差が明らかになった後の2021年8月に発表されましたが、販売総数が350台。日本の割り当ては相変わらず10%以下の30台限定です。

 NSXパフォーマンスディーラーでは「すべての店舗に行き届かず、メーカーが販売できる店舗を選定しています。そのためにお客さまから問い合わせを受けながら、販売できずにお断わりするNSXパフォーマンスディーラーも多いです」といいます。

 ホンダは狭山工場の閉鎖に伴い、基幹車種の「オデッセイ」を廃止する方針を打ち出しました。

 車種の終了に伴って工場を閉鎖するなら理解できますが、オデッセイの場合は逆で、場当たり的な対応です。

 NSXの生産終了を含めて、根底では繋がっているホンダの本質的な課題なのでしょう。

ホンダ・NSX のカタログ情報を見る

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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