意外な高性能モデルもあり? ハイパフォーマンスなリッターカー3選
最近はあまり耳にすることはなくなってしまいましたが、かつてコンパクトカーの主流は1リッターエンジンを搭載した「リッターカー」でした。また、かつて販売されていたリッターカーのなかには、高性能なモデルも存在。そこで、ハイパフォーマンスなリッターカーを、3車種ピックアップして紹介します。
庶民のためのホットな「リッターカー」を振り返る
1977年にダイハツは、自社開発した次世代の大衆車として初代「シャレード」を発売しました。量産車世界初の1リッター直列3気筒4サイクルエンジンを搭載し、優れた経済性と使い勝手の良いコンパクトなボディから、たちまちヒット作となりました。
このシャレードの誕生によって確立されたのが「リッターカー」というカテゴリーで、文字どおり1リッターエンジンを搭載したコンパクトカーの総称です。
シャレードに続いて各メーカーが追従するかたちでリッターカーが次々に登場し、かつはコンパクトカーの主流となったほどです。
近年はリッターカーという言葉を耳にすることはほとんどありませんが、現行モデルでも健在です。
一方で、なかには高性能でホットなモデルも存在。そこで、ハイパフォーマンスなリッターカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「マーチ スーパーターボ」
ホットな国産リッターカーといえば絶対に外せない存在なのが、日産「マーチ スーパーターボ」ではないでしょうか。
1982年に、日産は次世代のグローバルコンパクトカーとして、初代「マーチ」を発売。この初代マーチをベースに、ラリーに参戦する目的で開発されたのが、1988年に登場した「マーチ R」です。
さらに、1989年にはマーチ Rをベースに装備を充実させ、日常での使用を考慮した「マーチ スーパーターボ」が誕生しました。
搭載されたエンジンは930cc直列4気筒SOHCの「MA09ERT型」で、ターボチャージャーとスーパーチャージャーの2種類の過給機が装着された日本初のツインチャージャーを採用。最高出力は110馬力とクラストップのパワーを誇りました。
なお、ベースの「MA10ET型」エンジンの排気量が987ccだったのに対し、MA09ERT型が930ccとされたのは、モータースポーツのレギュレーションで過給機付きは排気量に1.7倍の係数が掛けられたためで、1.6リッタークラスに該当させる必要があったからです。
これほどのパワーでも車重はわずか770kgと軽量で、FFながら加速性能は1.5リッタークラスを凌駕するほどでした。
一方で、当時はこのクラスのクルマでトラクションコントロールなど存在せず、パワーステアリングさえも設定されていなかったことから、滑りやすい路面でのアクセルワークは慎重におこなわなければなりませんでした。
マーチ スーパーターボはエンジン性能ばかりアップしてシャシ性能が追いついていない典型的なクルマだったことから、速く走らせるにはドライバーの腕次第と、まさにスポーツドライビングといえました。
●スズキ「バレーノ」
現在、スズキのコンパクトカーといえば「スイフト」が代表的なモデルですが、かつて、スイフトよりもワンクラス上のボディの「バレーノ」がありました。
バレーノは2016年に発売されたベーシックな5ドアハッチバックのコンパクトカーで、スズキの国内モデルでは初となるインドのマルチスズキで生産された輸入車です。
ボディサイズは全長3995mm×全幅1745mm×全高1470mmと3ナンバーサイズで、ロー&ワイドなフォルムとカタマリ感のあるデザインが特徴でした。
グレードは搭載されたエンジンによって分けられ、当初は最高出力91馬力を発揮する1.2リッター直列4気筒自然吸気の「XG」と、1リッター直列3気筒ターボの「XT」をラインナップ。このXTはプレミアムガソリンが指定され、最高出力111馬力を誇りました。
また、XTではトランスミッションがパドルシフト付き6速ATで、車重も950kgと軽量なことや、欧州でのテストで鍛えられた足まわりには前後スタビライザーが奢られているなど、過激なモデルではありませんが十分にスポーティなコンパクトカーといえるでしょう。
ところが、このプレミアムガソリン仕様が理由のひとつとなってバレーノの人気は低迷。そのため、1998年のマイナーチェンジでXTもレギュラーガソリン仕様に改良され、最高出力は102馬力にデチューンされてしまいました。
しかし、その後も販売台数が好転することなく、2020年6月をもって販売を終了。
なお、現在もバレーノはインドでは同クラスのベストセラーカーで、トヨタにもOEM供給しており、「スターレット」の名で主にアフリカ諸国にて販売されています。
●フォルクスワーゲン「up! GTI」
すでに国内市場からは消滅してしまいましたが、かつて欧州製ホットハッチとして人気だったのが、フォルクスワーゲン「up! GTI」です。
同社の高性能モデル「GTI」シリーズのなかでも「ルポ GTI」に続くコンパクトなモデルで、2017年には日本で限定車として販売され、2019年には特別仕様車としてカタログモデルになりました。
ボディは全長3625mm×全幅1650mm×全高1485mmと日本の道路事情にマッチしたサイズで、スタンダードモデルには5ドアハッチバックが設定されていましたがGTIは3ドアハッチバックのみで、車重は1000kgジャストと軽量です。
外装には、GTIシリーズの特徴であるレッドカラーのアクセントが随所に採用され、17インチホイールや前後バンパーのデザイン、ルーフスポイラーなどはGTI専用となっていました。
内装も、シートはGTIシリーズで伝統となったタータンチェック柄で、Dシェイプのハンドルを装備するなどスポーティな装いです。
搭載されたエンジンは1リッター直列3気筒ターボで最高出力は116馬力を誇り、トランスミッションは6速MTが組み合わされました。
足まわりやブレーキも専用のチューニングで、優れた運動性能を発揮。そして、何よりも優れた安全性とともに使い切れるパワーによって、ドライビングプレジャーあふれるモデルに仕上がっていました。
しかし、前述の通り2020年に日本での販売を終了。欧州では現在でも販売されています。
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かつて、過激なリッターカーというと、最高出力133馬力のダイハツ「ブーンX4」や、日本では販売されませんでしたが、なんと1リッターエンジンで200馬力を誇ったフォード「フィエスタ R2」といった、特殊なモデルもありました。
また、現在もダイハツ「ロッキー」/トヨタ「ライズ」や、スズキ「クロスビー」、フォルクスワーゲン8代目「ゴルフ」などが1リッターターボエンジンを搭載しており、ホンダも海外専用車で展開しています。
日本では自動車税の面でリッターカーは大いに魅力的な存在で、ゴルフ8が証明したようにCセグメントでも有効なパワーを発揮できることから、もっと増えても不思議ではないでしょう。
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