伝説的高性能車の登場前にデビュー 劇的進化直前のモデル3選
1980年代の終わりから1990年代にかけて、日本の自動車市場では伝説的な高性能車がデビューしました。一方、そうしたモデルが登場する礎になったモデルも存在。そこで、劇的な進化を遂げる直前に登場したハイスペックモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
伝説的高性能車が登場する直前のハイスペックモデルを振り返る
1980年代になると国産車の高性能化が一気に進み、さらに1980年代の終わりから1990年代にかけては劇的な進化を遂げた伝説的な高性能車が誕生しました。
その伝説的なモデルの一例として、1989年登場の日産「スカイラインGT-R」、1992年登場の三菱「ランサー GSRエボリューション」、そして1997年に登場したホンダ「シビック タイプR」が挙げられますが、これら高性能車のデビューには礎となったモデルが存在します。
そこで、劇的な進化を遂げる直前に登場したハイスペックモデルを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン GTS-R」
1989年に3代目となるスカイラインGT-R(R32型)が誕生。初代(PGC10型ハコスカ)と同じくレースで勝つために開発され、1990年シーズンから全日本ツーリングカーレースに参戦するとデビューウインを飾り、以降は1993年の最終年まで無敗全勝という新たな伝説をつくりました。
このR32型スカイラインGT-Rが登場する前に、同じくレースベース車として開発されたのが、7代目(R31型)の高性能モデル「スカイライン GTS-R」です。
スカイライン GTS-Rは1987年に800台限定で発売。当時の全日本ツーリングカーレースは改造できる範囲は厳しく制限されており、市販の状態でのポテンシャルがレースでの戦闘力に大きく影響しました。
そこで、より高性能なエボリューションモデルとしてスカイライン GTS-Rが開発されたということです。
エンジンは市販の状態で特別に仕立てられた、2リッター直列6気筒DOHCターボの「RB20DET-R型」を搭載。
レースでは給排気系の変更ができないことから、ターボチャージャーとステンレス製エキゾーストマニホールド、大容量の空冷インタークーラーなどが専用品とされ、高出力210馬力を発揮しました。
また、外観もレースでは形状の変更がほとんど許されずエアロパーツなどの追加もできないため、固定式のフロントスポイラー(標準のGTSでは可動式)や、大型のリアスポイラーが標準で装着されています。
そうして1988年シーズンからレースに参戦したスカイライン GTS-Rは、1989年シーズンにチャンピオンを獲得しますが、まさに最終兵器ともいうべきスカイラインGT-R登場への序章でした。
●三菱「ランサー GSR」
三菱は1969年発売の初代「コルトギャラン」や、1973年発売の初代「ランサー」といったモデルから、国内外のラリーへと積極的に参戦していました。
そして、1987年に登場した6代目ギャランの高性能モデル「VR-4」では、世界ラリー選手権 (WRC)に本格参戦を果たします。
ギャランVR-4は一定の成績を収めますが、強力なライバルも出現。そこで、次世代のラリーマシンとして1992年に「ランサー GSRエボリューション」が限定モデルとして登場したのですが、そのベースとなったモデルが、1991年発売の6代目「ランサー GSR」です。
ランサー GSRはコンパクトなセダンで、最高出力195馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTのみ(後に4速ATを追加)で、駆動方式はフルタイム4WD。
車重は1150kgと比較的軽量で、ランサーの高性能グレードとして十分なポテンシャルを秘めていたとえるでしょう。
外観は小ぶりなフロントスポイラー/リアスポイラーが装着されており、後のマイナーチェンジでランサー GSRエボリューションと同様な大型リアスポイラーが奢られました。
しかし、WRCのレギュレーション上、1.8リッターターボエンジンでは勝てないことが明白で、2リッターターボエンジンを搭載し、さらにシャシや足まわり、ブレーキを強化したランサー GSRエボリューションが誕生することになります。
なお、その後も改良が重ねられたランサー GSRエボリューションと並行し、ランサー GSRも高性能なカタログモデルとして販売が継続されました。
●ホンダ「シビック SiR」
1972年に誕生したホンダ初代「シビック」は次世代のFF大衆車として開発されましたが、1980年代には高性能化の波に乗るかたちで、1983年に登場した3代目以降は高性能モデルをラインナップ。走り好きの若者から絶大な支持を得るようになりました。
そして、1987年には4代目が登場。よりロー&ワイドを強調したボディによって、スポーツコンパクトカーのイメージを不動のものとします。
高性能グレードの「Si」には3代目から引き継いだ、最高出力130馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒DOHC「ZC型」を搭載。
しかし、さらにライバル車に対してのアドバンテージを築くため、1989年には可変バルブタイミングリフト機構「VTEC」を採用した「B16A型」エンジンを搭載する「SiR」が登場しました。
自然吸気ながら1.6リッターでクラストップとなる160馬力を誇り、レッドゾーンが8000rpmからという、当時としては驚異的な高回転型でライバルを圧倒。
一方で、VTECならでは効果によって低回転域のトルクも犠牲になっておらず、峠から普段使いまでオールマイティな高性能エンジンとなっていました。
その後、1991年に5代目へとバトンタッチ。同じく高性能グレードのSiRでは最高出力170馬力まで向上し、さらなるアドバンテージを築きます。
SiとSiRはシビックのスポーティなイメージを完全に確立し、1997年に6代目をベースとした「タイプR」誕生へと繋がりました。
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スカイラインGT-R、ランサーエボリューション、シビックタイプRの3台は、さらなる進化を遂げながら代を重ねました。
これら高性能モデルたちは今でも語り継がれ、日本の自動車史でも燦然と輝く存在です。
今後電動化が進むなか、これほどまでに歴史に名を残すモデルは、果たして登場するのでしょうか。
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