トヨタの新型「リリーフカー」ってナニ? 投手をグローブで送り出す! 国内外で話題となった謎のモデルとは

リリーフピッチャーのために、「王座」のようなシートを目指した!

――ちなみにリリーフカーのデザインは組織委員会からのリクエストですか?

 永津:トヨタからデザイン案を出して、組織員会と確認しながら進めました。ただ、とくに注文はなく「いいね!!」と進みました。もちろんIOCの承認も得ています。

――どんな想いでデザインをしましたか?

 永津:真面目にやりすぎると業務用車になってしまうので「夢を載せること」、そして主役のピッチャーがより映えるサポート役になるようなデザインを意識しました。

 ピッチャーが座るシートのフロアとヒップポイントは立ち上がりやすいように少し高めに設定。

 前に一歩踏み出したときにフロアは平ら&ダイヤモンド付の人工芝を敷いて滑りにくくしています。

 スパイクは歩きにくいので降りる際にはグランドラインとフロアはできるだけ低く段差は少なく設定。そして、野球は雨天時はやりませんので屋根は取り外してしまいました。

――シート部は画面で見ているとフカフカな印象を受けましたが?

 永津:リリーフピッチャーはピンチをチャンスに変えるときに出て来るので、「王座」のようなシートを目指しました。

 そこでリラックスしてゆったり座れることと、尖り過ぎず/カッコ良すぎずトータルでピッチャーがカッコよく見えることを意識しました。

 デザインは最新のグローブではなく昔の懐かしいグローブがモチーフにしています。

ダイヤモンド付の人工芝を敷いてあるトヨタの「リリーフカー」(Photo:REUTERS)
ダイヤモンド付の人工芝を敷いてあるトヨタの「リリーフカー」(Photo:REUTERS)

――ドライバーとの距離感覚もいいですよね。

 永津:ピッチャーがカッコよく見える位置関係になっていると自負しています。

――「MLB(メジャーリーグ:アメリカ)にも導入すべき」といった声も出ています。

 永津:脇役に興味を持っていただけたことは大変光栄です。自分もテレビで見たとき、手前味噌ながら「大変よい」と思いました。

――オリパラが終わった後、これらのモデルはどのように活用するのでしょうか?

 谷中:色々な声は聞きますが、まだ具体的には何も決まっていません。ただ、今回APMを開発してわかったのは、「シンプルだからこそ多様性がある」ということです。

 そういう意味では、作り込んで提供ではなく、ベース車として提供して使う人がアレンジするなどの発展性はあるような気がしています。

※ ※ ※

 今回のリリーフカーは野球好きのみならず、さまざまなユーザーが気になる存在となり、SNSでも「グローブが可愛い」などの声が出ていました。

 また、選手からは「先発投手だと乗れないのが残念」「これは欲しい」という声があるなど、トヨタの遊び心が垣間見えたモデルといえます。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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