なぜハイブリッド車はバッテリーをふたつ搭載? 寿命や交換費用の目安はどれくらい?
ハイブリッド車は、駆動用のメインバッテリーと電装品用の補機バッテリーの2種類を搭載しています。交換時期や費用など整備士に聞いてみました。
ハイブリッドシステムにはさまざまな方式がある
1997年に世界初の量産ハイブリッド車としてトヨタ「プリウス」が登場して以来、いまではハイブリッド車が広く普及しました。
ハイブリッド車はガソリンエンジンとモーターを組み合わせ、環境に配慮した走りができるとあって、人気になっています。
ハイブリッド車にはモーターを動かす駆動用バッテリーが搭載されていますが、実はヘッドライトやナビ、オーディオ、エアコンなど電装品を動かすための補機バッテリーも搭載されているのです。
ふたつのバッテリーにはどのような役割があるのでしょうか。
ハイブリッド車は、駆動モーター用のバッテリーとして、モバイルバッテリーなどにも使用されているニッケル水素バッテリーやリチウムイオンバッテリーなどをフロア下などに搭載。
2021年7月にフルモデルチェンジしたトヨタ新型「アクア」は、「バイポーラ型」と呼ばれる出力の大きい新型バッテリーを搭載したことで、EVモードでの走行を増やすことに成功しました。
また、ハイブリッドには「パラレル方式」と「シリーズ方式」があり、この両方を組み合わせた「シリーズ・パラレル方式」という3種類の方式が存在。
パラレル方式は、おもにエンジンが主動力源を担い、ゼロ発進や加速時にモーターの動力が補助的に働くハイブリッド方式のこと。感覚的にはガソリン車に近いタイプです。
シリーズ方式は、エンジンは発電用に限定され、モーターが動力源となるシステム。
そして、その両方の性質を組み合わせたシリーズ・パラレル方式は、ゼロ発進や低速走行はモーター、通常走行はエンジン、急加速などパワーが必要な場合は両方でというシステムになっています。
ちなみに、軽自動車などに多く採用される「マイルドハイブリッド」は、駆動力を積極的に生み出す電気モーターではなく、「モーターの機能を持たせた発電機」を搭載したシステムといえます。
また、最近注目を集めているのが「プラグインハイブリッド(PHEV)」です。外部からの充電を可能とするプラグが装備されたハイブリッド方式のことで、比較的大容量のバッテリーを搭載してモーター駆動による走行距離が長いのが特徴です。
しかも長距離走行でバッテリーの電力を使い切ったとしてもエンジンを使って走行し続けることができます。
これらのハイブリッドシステムの根幹に関わる駆動用バッテリーだけでなく、ハイブリッドシステムやヘッドライト、ナビ、オーディオなどの電装品を動かすために、通常のガソリン車などに搭載されている12Vの補機用バッテリーも搭載されています。
そして補機用バッテリーが上がるとハイブリッド車は動かなくなってしまい、通常のガソリンエンジン車と同じく、ブースターケーブルなどを繋いでジャンプスタートさせる必要があります。
さらに、ハイブリッド車で注意すべきことは、ほかのクルマのバッテリー上がりしてしまったとき、ジャンプスタートの救援側に回れないということです。
ハイブリッド車の補機用バッテリーは電力量が少なく、ガソリン車のようにエンジンをかけてオルタネータを動かして発電することができないのです。
実際、トヨタなどのハイブリッド車の取扱説明書には「できません」と明記されています。
つまり助けてはもらえるけれど、自らはほかのクルマを助けることができないということです。
今後さらにハイブリッド車が増えると、いずれは誰も助けることができなくなるという状況が発生しないともいい切れません。
救援車がいなくてもジャンプスタートできるクルマ用モバイルバッテリーの車載が必須になってきそうです。
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