どうしたホンダ「フィット」 ライバルが絶好調の裏で大苦戦する理由とは

絶好調の軽自動車「N−BOX」の存在が大きい!?

 これまでのフィットは、ベースグレードは150万円以下から買うことができました。200万円以上するグレードはなかったのです。ところが、新型フィットは、最低でも155万円台から。中心価格は200万円前後までに、価格帯を上昇させています。

2001年6月に登場した初代「フィット」。全長3830mmのコンパクトなボディとは思えない広い室内で大ヒットモデルとなった
2001年6月に登場した初代「フィット」。全長3830mmのコンパクトなボディとは思えない広い室内で大ヒットモデルとなった

 また、ライバルのトヨタ「ヤリス」の価格は、エンジン車が139万5000円から212万4000円、ハイブリッドが199万8000円から249万3000円。

 ハイブリッドの価格帯は同じになりますが、エンジン車は150万円以下から用意されています。ちなみに、トヨタは昨年春から全ディーラーで全車種販売という販売方法を採用して、販売力を強化。その効果もあり、2021年2月に発売された新型「ヤリス」は、2020年通年の販売ランキングで1位、2021年1月から6月も1位という圧倒的な強さを誇っています。

 フィットやヤリスといったコンパクトカーは、商用に利用する人もいるでしょうから、やはり価格は売れ行きを左右する大きな要素になります。そういう意味で、フィットの価格を高めたホンダは、もしかすると、今年の苦戦はある程度、想定済みだったのかもしれません。

 とはいえ、ガソリン車をやめてハイブリッド専用車になった日産「ノート」に負けてはいけません。なんとノートは、205万4800円から244万5300円という価格帯でありながらも、2021年1月から6月の販売ランキングで7位。12位のフィットより、販売台数ベースで約1.5倍も多く売れているのです。

※ ※ ※

 価格に加えて、フィット不調の理由として考えられるのは、ホンダの超ヒットモデル「N-BOX」の存在です。

 コロナ禍による不況のせいか、現在のところ新車販売は、登録車よりも軽自動車のほうが好調です。

 2021年1月から6月の新車販売台数を見ると、登録車は前年比約109%。ところが、軽自動車は前年比116.7%。2020年に起きたコロナ禍によるダメージから、軽自動車のほうがいち早く復調しているのです。

 こうした状況から、「これまで登録車を購入していた人たちが、より安い軽自動車に流れている」という可能性が高いことがわかります。つまり、いつもならフィットを買っていた人が、軽自動車のN-BOXに流れているのではないでしょうか。

 実際のところ、N-BOXの販売は絶好調そのもの。2021年1月から6月で、N-BOXの販売は前年比109%で11万台以上となっており、ヤリスの約11万9000台に肉薄しています。登録車だけでなく、軽自動車もあわせた販売ランキングにすると、1位のヤリスと2位のN-BOXが戦っているという状況です。

 ちなみに2020年通年の販売台数は、ヤリスの15万1766台に対してN-BOXは19万5984台。N-BOXの2019年は25万3500台でしたから、販売台数だけでいえば、N-BOXは圧倒的な存在感を放っています。

 フィットの価格が上がれば、販売台数が下がるのは自明のこと。ホンダもわかっていたはずです。しかし、それでも値段を上げたのは、下にN-BOXが存在していたかもしれません。

 フィットの減った分だけ、N-BOXが数多く売れれば、ホンダとしてはトータルでOK、というわけです。軽自動車とはいえ、現在のN-BOXの価格は、142万8900円から202万2900円と、先代フィットよりも高額です。ならば、どっちが売れてもかまわないと、ホンダが考えてもおかしくないのではないでしょうか。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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