なぜ「タイプR」じゃない? ホンダ「NSX」6年で歴史に幕! 新時代の電動スーパースポーツは成功したのか

最終モデルで究極のNSXが登場! なぜ「タイプR」じゃない?

 そんななか、2021年8月30日に2回目の大きな改良がおこなわれました。注目は2代目NSXの集大成となるスペックが与えられた特別なモデル「タイプS」の設定です。

 世界限定350台でその内の30台が日本向けとなっており、価格(消費税込)は2794万円。9月2日より購入申し込みを開始し、2022年7月に発売予定となっています。

 開発コンセプトは「NSXを極める」ですが、一体どのようなモデルなのでしょうか。

ホンダ新型「NSX タイプS」
ホンダ新型「NSX タイプS」

 そもそも、日本人的には「NSXを極めるなら、タイプRなのでは?」と思う人も多いでしょう。

 ちなみに日本では「ホンダ NSX」として発売されていますが、北米ではホンダのプレミアムブランド「アキュラ NSX」として発売されています。

 そんなアキュラブランドのパフォーマンスモデルは「タイプS」の名で統一されているので、NSXもそれに準じているのでしょう。

 ちなみに初代NSXは「サーキットベスト」のタイプR、「ワインディングベスト」のタイプSがラインナップされていましたが、2代目NSXタイプSのキャラクターは「その間」という感じでしょうか。

 パワートレインは3.5リッターV型6気筒直噴ツインターボ+リアモーター+フロント左右独立モーターの「スポーツハイブリッドSH-AWD」は不変ながらも、エンジン/モーター共に専用チューニングがおこなわれています。

 具体的にはエンジンはターボチャージャー過給圧5.6%アップ、インジェクター燃料噴射量25%アップ、インタークーラー放熱量15%アップなどにより+22ps、+50Nmアップの529ps/600Nm。

 モーター部はインテリジェントパワーユニット(IPU)のバッテリー出力10%アップ、バッテリー使用可能容量20%アップで約7psアップに加えて、ツインモーターユニットの20%ローレンジ化もおこなわれ、その結果、システム出力は581ps/646Nmから610ps/667Nmに引き上げられています。

 絶対的なパフォーマンスはもちろん、よりレスポンシブ、よりスムーズになったことによるドライバビリティ向上なども期待できるでしょう。

 さらに官能性能の部分もインテークサウンドコントロールとアクティブサウンドコントロール(ASC)の最適化をおこなうなど抜かりなしです。

 トランスミッション(9速DCT)も手が入っており、さらなるシフトスピードアップやより滑らかなシフト制御に加えて、新たに減速側パドル長押し(0.6秒)で瞬時に適切なギアにシフトダウン可能な「パドルホールド・ダウンシフト」を採用。より小気味よく、よりリズミカルになっていることを期待しましょう。

 加えて、2代目NSXの特徴のひとつである、走るステージに合わせて4つのモードが選択可能なIDS(インテグレーテッド・ダイナミック・システム)の制御も変更され、各モードのキャラクターがより明確になっているといいます。

 また、パワートレインの出力アップに合わせてフットワーク系もシッカリと手が入っています。

 ミリ秒単位でクルマのロール/ピッチング方向の減衰力を制御する磁性流体式の電子制御アクティブダンパー(BWI製)は減衰特性の見直しに加えてパフォーマンスレンジのアップを実施。

 足元はグリップ性能を引き上げたNSX専用設計となるピレリP-ZERO(フロント:245/35R19、リア:305/30ZR20)、と5本スポークの軽量鍛造ホイールの組み合わせです。

 ちなみにホイールのインセット変更によりワイドトレッド化(フロント:+10mm、リア:+20mm)もおこなわれており、限界性能とコントロール性アップにも寄与しています。

 エクステリアは視覚と機能を両立させる「パフォーマンスデザイン」を採用。フロントマスクはロー&ワイドかつアグレッシブな造形に変更。

 スーパースポーツにしては優しさがあったノーマルに対してわかりやすい強さがプラスされたように感じますが、世界のライバルたちに寄せた感が否めないところもあります。

 センター/左右の開口部拡大は冷却性能アップのため、バンパーサイドの造形はリアインタークーラーへの流速を向上させる効果があるといいます。

 開口部拡大はエアロダイナミクス低下に繋がりますが、新たに追加されたフロントリップスポイラーとそれに合わせて形状を最適化したリアバンパーのディフューザー形状の最適化も相まって、むしろ引き上げられているそうです。

 ちなみにヘッドライト・テールライトハウジングやアルミホイール、ドアミラー、ドアノブ、エキゾーストフィニッシャーなどはピアノブラック/カーボンで統一されタイプSの世界観を演出。ボディカラーはイメージカラーとなるカーボンマットグレー・メタリック(新色)をはじめとする全10色を用意しました。

 インテリアは刺繍が施されたシート(NSXロゴ)やグローブボックス(タイプSロゴ)など細部の変更に留まりますが、専用インテリアコーディネイト(レザー×アルカンターラ:3種類、フルレザー;2種類)が用意されており、特別なNSXに仕上がっています。

 もちろん、ノーマル同様にカスタムオーダーも用意されており、カーボンセラミックブレーキやカーボンエンジンカバー、インテリアスポーツパッケージなどが選択可能です。

 その走りの進化は試乗するまで結論は出せませんが、開発責任者の水上聡氏に話を聞くと「とにかく乗っていただきたい。自分でいうのもアレですが、凄くいい仕上がりです」と語っています。

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