やっぱり初代はスゴかった! 昭和に誕生した過激すぎないホットハッチ3選
コンパクトカーをベースにした高性能モデルを「ホットハッチ」と呼びますが、最近はあまり耳にしなくなりました。しかし、1970年代から1980年代初頭には、数多くのホットハッチが誕生。そこで、大衆車ベースで過激すぎない性能のホットハッチを、3車種ピックアップして紹介します。
昭和に誕生した過激すぎない性能のホットハッチを振り返る
近年、あまり耳にしなくなったクルマ用語のひとつに「ホットハッチ」があります。3ドアもしくは5ドアハッチバックのコンパクトカーをベースに、高性能エンジンを搭載し、足まわりのチューニングが施されたモデルを指します。
ホットハッチは絶滅したわけではなく、現在も存在しますが、言葉だけが廃れていってしまったということになります。
1970年代にはホットハッチの原型が確立され、1980年代にかけて一気に増えていきました。そこで、昭和の時代に誕生した、大衆車ベースで過激すぎない性能のホットハッチを、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「シビック RS」
ホンダは1972年に新世代のFFコンパクトカーとして初代「シビック」を発売しました。ボディサイズは全長3545mm×全幅1505mm×全高1325mm(GL)と、現在の軽自動車よりもわずかに大きいくらいのコンパクトさながら、ボディの四隅にタイヤをレイアウトして広い室内空間を実現。
650kgほどの軽量な車体に最高出力69馬力(グロス、GL)の1.2リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載し、優れた燃費と軽快な走りから大ヒットを記録。
さらに、1973年には排出ガス浄化技術「CVCC」を採用した1.5リッター車がデビューし、アメリカでもヒットしてホンダの本格的な世界進出への足がかりとなりました。
このCVCC車が登場した直後の1974年には、短命に終わったホットハッチが存在。それが「シビック RS」です。
RSはCVCCを採用しないスタンダードな1.2リッターSOHCエンジンで、CV型ツインキャブレターが装着され、最高出力は76馬力を誇り、トランスミッションはシリーズ初の5速MTを採用。
足まわりは欧州仕様のシビックと同等のハードセッティングで、タイヤは12インチから13インチにアップしたラジアルタイヤを標準装備し、それに合わせて前後のフェンダーアーチが拡大されています。
内装ではスポーツシートにウッドステアリング、ウッドシフトノブを標準装備し、ダッシュボードには「RS」のエンブレムを装着することでスポーティに演出。
しかし、RSは排出ガス規制の強化から1年も経たずに生産終了を余儀なくされてしまいました。
後継モデルとして1.5リッターCVCCエンジンを搭載した「RSL」が登場しましたが、エンジンのチューニングはおこなわれていません。
●三菱「ミラージュ 1600GT/ミラージュII ターボ」
三菱の大衆車というと1960年代から「コルト」シリーズや、軽自動車の「ミニカ」シリーズを展開していましたが、前出のシビックなどFF車が台頭するなか、FF化では遅れをとっていました。
そんななか、1978年に満を持して誕生した三菱初のFF車が初代「ミラージュ」です。
コンパクトなボディの3ドアハッチバック(後に5ドアと4ドアセダンも登場)としてデビューし、外観はスラントノーズのフロントフェイスに、傾斜角が寝たリアハッチ、そしてボリューム感を表現した前後フェンダーなど、後発なだけあってモダンでヨーロピアンなスタイルを採用。
当初、エンジンは1.4リッターと1.2リッターの2種類が設定されましたが、1979年には最高出力88馬力(グロス)を発揮する1.6リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載する「1600GT」を追加。
ライバルを上まわる排気量のエンジンを搭載してアドバンテージを築き、一気に人気車となりました。
さらに、三菱は1980年代に急激な普及が始まったターボエンジンに着目。グループ会社の三菱重工がターボチャージャーを生産していたこともあり、三菱はターボ車のフルラインナップ化を進め、1982年のマイナーチェンジでは、クラス初のターボエンジンを搭載する「ミラージュII ターボ」を発売。
1.4リッターから105馬力(グロス)のハイパワーを発揮し、一躍クラストップのハイパフォーマンスカーへとなりました。同時に足まわりとブレーキも強化され、ターボエンジンを搭載した国産ホットハッチの先駆けとなります。
ミラージュII ターボは1983年に2代目が登場するまでの僅かな期間しか販売されませんでしたが、このミラージュII ターボの登場がきっかけで、コンパクトカーのパワー競争が激化したといわれています。
●フォルクスワーゲン「ゴルフ GTI」
前述のとおり、ホットハッチは1970年代に確立されました、まさに元祖というべきモデルが、フォルクスワーゲン初代「ゴルフ GTI」です。
フォルクスワーゲンは偉大な大衆車「タイプ1(ビートル)」の後継車として、1974年に初代ゴルフを欧州で発売。
新世代の大衆車として開発されたゴルフはFFを採用したことで、コンパクトな3ドア/5ドアハッチバックながら広い室内を実現し、巨匠ジョルジェット・ジウジアーロの手によるシンプルなデザインと優れたパッケージングが高く評価され、FFコンパクトカーのベンチマークに君臨。
エンジンは当初は1.1リッターと1.5リッター直列4気筒を搭載し、後に1.3リッターや1.6リッターディーゼルなど、多彩なエンジンバリエーションを展開しました。
そして、1976年には最高出力110馬力を誇る1.6リッター直列4気筒SOHCエンジンを搭載する高性能モデル「ゴルフGTI」が登場。その名前の「I」が示すとおり、ボッシュのKジェトロニック燃料噴射装置を備え、トランスミッションは4速MTのみ(後に5速MTにスイッチ)の設定です。
フロントがストラット、リアがトーションビームの足まわりは強化され、前後スタビライザーを装備して車高をスタンダードモデルから15mmダウン。ブレーキもフロントにベンチレーテッドディスクが奢られ、タイヤも専用の175/60R13を装着。
最高速度は182km/hをマークし、高い運動性能を発揮したことから欧州ではたちまち人気を獲得し、最終的には46万1690台を販売する大ヒットを記録しました。
初代ゴルフ GTIは、残念ながら日本に正規輸入はされませんでしたが、2代目からは輸入されました。
そのコンセプトは歴代ゴルフ GTIに受け継がれており、すでに欧州では8代目が登場。近い将来には日本でも展開されるでしょう。
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今回紹介したモデル以外にも、日産「マーチ スーパーターボ」や、ホンダ「シティ ターボ/ターボII」、トヨタ「スターレット ターボ」など、1980年代には過激な性能のホットハッチが数多く誕生しました。
こうしたモデルはシャシ性能が未熟で、速く走らせるにはドライバーの腕次第という面が強かったといえます。
現代の高性能車は高度に電子制御化されていることもあり、安心安全にスピーディな走行が可能ですが、当時の荒削りな部分も魅力のひとつだったのではないでしょうか。
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