三菱新型「エアトレック」16年ぶりに復活&年内発売? タフな三菱顔採用の中国専売車とは

新型エアトレックのベースは三菱車ではない!

 エアトレックの製造と販売は三菱がおこなう形となっていますが、実はベースとなっている車種は広州汽車グループ(GAC Group)傘下のEVブランド「アイオン」が展開する「V」というSUVです。

 2020年6月に発売したブランドの3番目となる車種で、自社開発のアルミ製EVプラットフォームGEP2.0を採用、5G対応のコネクテッドシステムや、オートパーキングシステム、高精度地図システムを使用したレベル3の自動運転システムなど、多くの新技術を搭載しています。

 海外自動車メディアが新型エアトレックを紹介した記事のなかには、「新型エアトレックのベースは2021年2月に米国で発表された新型アウトランダー」などと書かれているものもありますがこれは間違いです。

 アイオンVとエアトレックの関係性はデザインからも見て取れますが、型式番号からも確実なことがわかります。

 エアトレックの型式番号は「GMC6460」、アイオンVの型式番号は「GAM6460」と、製造工場を表す最初のアルファベット以外は同じ。最初の「G」は「Guangzhou=広州」を意味しています。

 アイオンVの製造自体は広州汽車集団の子会社、広州乗用車有限公司が担当しており、今回、広汽三菱へ提供されデザインを少し変更して「三菱エアトレック」として製造・販売されることになりました。

 EV ブランド「アイオン」が展開するSUVの「V」(画像:アイオン)
EV ブランド「アイオン」が展開するSUVの「V」(画像:アイオン)

 では、工信部に提出された情報を見ていきましょう。まずはボディサイズですが、全長4630mm×全幅1920mm×全高1728mm×となっており、これはアルファロメオ「ステルヴィオ」やジープ「チェロキー」に近いサイズです。

 ちなみにベース車両のアイオンVは全長4650mm×全幅1920mm×全高1720mm×ホイールベースは両車とも2830mmとなっています。

 パワートレイン関連はどうでしょうか。リチウムイオン電池の容量は明らかになっていませんが、航続距離はNEDC方式で500kmとすでに発表されています。

 モータは日本電産(Nidec)が中国・浙江省に置く拠点、日本電産自動車モータ有限公司が生産するモータで出力は135kW。

 ちなみに日本電産は京都府京都市に本拠地を置く会社です。同社はモータの製造を得意としており、パソコンのHDD用スピンドルモータや携帯電話用振動モータ、ATM用カードリーダ、電動パワステ用モータにおいては世界1位のシェアを誇っています。

 現在はEV用の駆動モータに力を入れており、中国では広州汽車やジーリー(吉利)の各EV車種が日本電産製のモータを使用しています。

 また、配送大手の佐川急便が採用を発表したASF株式会社(本社:東京都港区)製の配送用小型EV「G050」にも日本電産のモータとインバータが採用されています。(日本電産は「モータ」表記なので「モータ」に統一)

 三菱によると、新しいエアトレックの名前は、「Ambition(野心)」、「Interesting(興味深い)」、「Relationship(関係性)」、「Talent(才能)」、「Regeneration(再生)」、「Evolution(進化)」、「Key(カギ)」 の頭文字を組み合わせたもの「AIRTREK」としています。

 一方で、2005年まで日本で販売されていた初代エアトレックは「自由に冒険的な旅をする」という意味を込め、「Air」と「Trek」を合わせた造語だったのでコンセプトとしては近いものとなっています。

 新型エアトレックは、前述の通り2021年6月の重慶モーターショーで発表されており、政府への届出もすでになされています。

 恐らく2021年11月の広州モーターショーでは実車の展示もおこなわれ、年内の発売開始は確実と見られます。

 残念ながら日本に向けてローンチされることは無いでしょうが、このクルマがどのようにして中国市場で受け入れられるのか、注目すべき点です。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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