カイゼンされた「水素カローラ」で2回目の耐久レース参戦! トヨタが見せた底力とは
航続距離に課題は残るも、水素カローラは5時間耐久を無事完走
2021年8月1日おこなわれた決勝は、前日までと打って変わって「雨」。11時にスタートするも、オートポリス特有の「雨がやむと、霧が出る」という天候で、セーフティカーが2度導入されるも赤旗で約1時間の中断。
その後、再開されると天候は急速に回復し、「スタート時は何だったのか?」と思うくらいのピーカンの晴天になりました。
目まぐるしく変わるコンディションのなか、水素カローラはトラブルに見舞われることなく順調に走行を重ね、チェッカーを受けました。
ちなみに水素カローラの周回数は85周でしたが、参考までにST5クラスの優勝マシンの周回数は97周。水素の充填回数の多さを踏まえると、なかなか健闘しているといえます。
今後、航続距離の問題がクリアになっていけば、決勝でもいい「戦い」ができそうな気がしました。
ちなみに後日、このレースに参戦していた友人に「水素カローラ、どうでした?」と聞いてみると、「水素カローラ、わずか2か月の間にずいぶん速くなっていましたね。メーカーの底力と本気を感じました」と返事がきました。一緒に走っているからこそ、その差がより理解できたのでしょう。
このように2か月の短い期間ながら大きな進化を遂げた水素カローラ、筆者はこの取り組みを取材していて、開発をおこなう「GRカンパニー」の立ち位置がより明確になったように感じています。
GRが2017年にブランドを立ち上げたとき、「トヨタのスポーツブランド」であると同時に「トヨタの変革を担う存在」と公言していました。
トヨタのスポーツブランドという部分に関しては、「GRスープラ」「GRヤリス」「GR86」が証明していますが、トヨタの変革を担う存在という部分に関しては、「モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくり」とはいうものの、クルマ好きはともかく一般の人にはわかりづらかったと思っています。
しかし、水素エンジンのプロジェクトが、それを明確にしたような気がします。
つまり、GRとは豊田社長の「常に挑戦者であれ!」、「自分の限界を、自分で決めるな!」という想いを、「先行部隊として果敢に『挑戦』し、成功か失敗かを『現地現物』で試してフィードバックする存在」なんだろうなと。
もちろん、カンパニーなので収益確保も大事ですが、それよりも今は環境づくりに注力しているそうです。そこで生まれた「変化」こそがGRの「成果」なのです。
ただ、その一方で、これまで好評だった「スポーツコンバージョンモデル」が手薄になってしまっているのは気になる所です。
モータースポーツ/スポーツカーをサスティナブルな物にするためには、裾野はもっと大事にすべきだと筆者は考えています。
この水素カローラは、次の鈴鹿、そして最終戦の岡山にも参戦する準備をおこなっているといいます。
性能アップはもちろんですが、水素社会の実現に向けてどのような「引出し」が用意されているのか今から楽しみです。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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