コンセプトは良かった! だけど一代で消えてしまった車3選

自動車メーカーが新型車を開発する際には、すべてコンセプトを明確にします。1台1台コンセプトは異なりますが、コンセプトが決まっていないと、開発者が一丸となってクルマづくりはおこなえません。そこで、秀逸なコンセプトを打ち出しながらも一代限りで消えてしまったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

優れたコンセプトながら一代限りで消えてしまったクルマを振り返る

 すべての自動車メーカーは新型車の開発をおこなう前に、そのクルマのコンセプトを決めます。もしコンセプトがブレてしまったら、開発者が一丸となって作業することはできないだけでなく、ユーザーにも伝わってしまいます。

コンセプトが優れていながらも一代で消えてしまったクルマたち
コンセプトが優れていながらも一代で消えてしまったクルマたち

 新型車がどういうクルマなのか明確にするコンセプトは、当然のことながら1台1台異なります。

 そうしたコンセプトには非常に優れていたと評されるケースがありますが、残念ながら優れたコンセプトでも大ヒットに繋がらないこともあるようです。

 そこで、秀逸なコンセプトを打ち出しながらも一代限りで消えてしまったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。

●ホンダ「CR-Z」

ハイブリッド・スポーツカーという新ジャンルを開拓しようとした「CR-Z」

 ホンダ初の量産ハイブリッド車は、1999年に発売された初代「インサイト」です。

 初代インサイトは高価なアルミ製モノコックシャシの採用と2シーター化によって大胆な軽量化をおこない、空力性能向上のために見た目はもはや生粋のスポーツカーというフォルムを採用し、燃費世界一を目指すという明確なコンセプトがありました。

 その後、ホンダはハイブリッド車の拡充を開始し、2010年に発売されたハイブリッド専用車が「CR-Z」です。

 外観は往年のライトウエイトスポーツカーである「CR-X」を彷彿とさせる、コンパクトなファストバッククーペで、その見た目どおりハイブリッド車でもスポーティな走りが楽しめることをコンセプトとしていました。

 そのため、環境性能が優先されるハイブリッド車であっても、CR-ZはMTを設定し、ドライビングプレジャーも重視。

 パワーユニットは114馬力の1.5リッター直列4気筒エンジンに、14馬力のモーターを組み合わせ、走行時はエンジンパワーが主体で、発進や加速、高負荷の状態でモーターがエンジンをアシストするパラレル式のハイブリッドシステムです。

 トランスミッションはCVTと前述のとおり6速MTが選べ、10・15モード燃費はCVT車が25km/L、MT車が22.5km/Lを達成しました。

 CR-Zのパワフルな走りは高く評価されましたが、すでにクーペの需要は低下しており、発売直後は好調なセールスを記録したものの次第に低迷していき、2016年に生産を終了。

 優れた燃費と走りが融合したハイブリッド・スポーツカーという新ジャンルの確立に成功したといえませんでしたが、ホンダらしさあふれる1台ではないでしょうか。

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●トヨタ「iQ」

優れたパッケージングを実現するために技術的にも優れていた「iQ」

 1998年に「スマート」ブランドから2人乗りのマイクロカー「シティークーペ」(後にスマート「フォーツー」に改名)が誕生しました。

 経済性やスペース効率に優れたシティコミューターながら高い衝突安全性を実現し、欧州で大ヒットを記録し、日本でもヒットしました。

 そこでトヨタはスマートに対抗するため、2008年に3+1と斬新なレイアウトの4シーターとしたマイクロカーの「iQ」を発売。路上での専有面積を極力小さくしつつ、より実用的なこと、そして高い安全性を保っていることがコンセプトでした。

 ボディサイズは全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmと、全長は軽自動車よりも400mm以上も短いものの、4名乗車を可能にするために、さまざまなアイデアが詰め込まれていました。

 エンジンは1リッターと1.3リッターの直列4気筒を設定し、iQ専用に設計されたトランスミッションによってフロントタイヤをエンジンよりも前方に配置。さらに新開発のエアコンユニットを採用したことで、助手席足元の空間の拡大に成功。

 また、燃料タンクは前席床下に格納し、運転席と助手席のシートバックを極力薄型にすることで、リアシート足元のスペースを確保しています。

 一方、後部の荷室はミニマムなため、リアハッチと後席とのクリアランスもわずかでした。そこで、追突されても後席乗員の保護を目的とした、世界初の「リヤウインドウカーテンシールドエアバッグ」を開発し、全車に標準装備するなど安全性についての妥協はありません。

 iQの優れたコンセプトとパッケージングは国内外で高く評価されました。しかし、実際は普通に乗れる限界は大人3人までだったことと、日本では同クラスのコンパクトカーや軽自動車よりも価格帯が上だったこともあり、販売は好調とはいえず2016年に生産を終了しました。

 iQは一代限りで消滅し、同様なコンセプトのクルマはその後も登場していませんが、iQ専用に開発された技術は数多く、技術者たちの情熱が伝わってきます。

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●ダイハツ「ミゼットII」

今では考えられないほど大胆に割り切って開発された「ミゼットII」

 日本は戦後復興から1950年代から1960年代にかけて高度成長期に突入。そんな背景のなか個人商店を中心に物流を支えた存在が、1957年に誕生した軽3輪トラックのダイハツ「ミゼット」です。

 最高出力はわずか8馬力ながら小型軽量な車体でオートバイよりも積載能力が高く、狭い路地でも走れ、そして安価な価格を実現し、生産終了した1972年までに累計31万7000台を販売しました。

 その後、一般的な軽トラックや軽バンが普及するとミゼットの役目は終了しましたが、ダイハツは1996年にミゼットのコンセプトを継承した軽4輪トラックの「ミゼットII」を発売。

 ミゼットIIは軽自動車規格のサイズよりも小さいボディで、市街地での高い機動性や、都市部での駐車を容易にする省スペース化、さらに軽量なボディによる省燃費化を重視して設計されました。

 外観では初代ミゼットのデザインをオマージュした特徴的なフロントフェイスで、スペアタイヤを搭載するフロント部分に丸目2灯のヘッドライトを配置。この個性的なデザインは、お店の看板にもなることも考えられていました。

 室内は1シーターのひとり乗り(後に2シーターを追加)で、最低限の装備を搭載するに留めて重量とコストを削減し、車重は550kg(Dタイプ)で、価格は46万9000円(消費税含まず)からと非常に安価に設定されていました。

 斬新なコンセプトが話題となったミゼットIIですが、もはや高度成長期ほどの需要は無く、2001年に生産を終了。

 そもそも、ベテラン作業員の技術を若い世代に継承することを目的に生産工程の多くをハンドメイドとし、ロボットやベルトコンベアを使っておらず、ダイハツとしても長く継続して生産する予定はなかったのかもしれません。

※ ※ ※

 最後に紹介したミゼットIIですが、今も愛好家が存在しています。というのも、実用的で趣味に使えるというニーズがあるようです。

 中古車も全国で100台ほどが流通しており、価格も幅はありますが概ね50万円前後とほぼ新車価格と同等で、ある意味と強気の価格といえるでしょう。

 とはいえ、これほど個性的なクルマが50万円で買えるならば、軽トラックと同じく海外からも注目されるかもしれません。

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5件のコメント

  1. ミゼット、IQは復刻版でっかく希望!!

  2. ミゼットはこの狭い日本絶対に必要!

  3. ミゼットは電気自動車で復活を!ニックネームは「ミゼット・ターレー」!!

  4. iQはiQZERO_Cで復刻版をリベンジを!!

  5. スポーツカーの電動化にはCR-ZみたいなハイブリッドMTの存在が必要

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