バブル期のクルマはデートの道具だった!? 1990年前後のデートカー事情に迫る

デートカーだけでなく「ドリフトマシン」としても活躍したクルマとは

●日産「シルビア」

 日産「シルビア」では、1988年にフルモデルチェンジを受けた「S13型」がデートカーに該当します。

 曲線や曲面を多用したスタイルと中間色のボディカラー、室内はヘッドレスト一体型フロントシートと低く傾斜したダッシュボードなどから、当時の感覚ではコンセプトカーがそのまま販売されたような印象でした。

日産「シルビア(S13)」
日産「シルビア(S13)」

 エンジンは、175馬力の1.8リッター直列4気筒DOHCターボ(CA18DET型)と135馬力の1.8リッター直列4気筒DOHC NA(CA18DE)を搭載。

 グレードはトランプの絵札をイメージし、ターボ搭載の「K’s」と、NAエンジンの「Q’s」「J’s」の3種類で構成。デートカーではエンジンは重視されませんので、NAのQ’sでも十分に売れたのでした。

 一方で、ハイパワーなK’sの存在は当時の走り屋にも注目され、デートカー兼走りを楽しむクルマとしても好調な販売を記録したのです。

 1991年にはマイナーチェンジを受け、エンジンを2リッター直列4気筒DOHCターボ(SR20DET)または2リッター直列4気筒DOHC NA(SR20DE)に変更してパワーアップを図りました。

 人気が続くなか、1993年には「S14型」にフルモデルチェンジ。より柔らかいスタイルの3ナンバーサイズのクーペとなりましたが、デートカー需要の終了もあったのか、S13型ほどの人気は得られませんでした。

 また、後年シルビアはドリフトマシンとして活躍しますが、この時期に購入されたデートカーが役目を終えて中古車として潤沢に流通したことも、その理由のひとつだったといえます。

●トヨタ「ソアラ」

 トヨタ「ソアラ」は、1981年に初代モデルが登場しました。当初から高級パーソナルクーペとして人気がありましたが、デートカーとしては1986年にフルモデルチェンジを受けた2代目の「Z20型」でより向上します。

 エンジンは、3リッター直列6気筒DOHCターボ、2リッター直列6気筒DOHCツインターボ、2リッター直列6気筒DOHC、2リッター直列6気筒SOHCを搭載、トランスミッションは5速MTと4速ATをラインナップしました。

 上級グレードには、空気を用いたエアサスペンションと、現在のインフォメーションディスプレイに近いシステムの「エレクトロマルチビジョン」が搭載されます。

 内装は、スエード調表皮材と本革シート、スペースビジョンメーターが組み合わされており、ドライバーも助手席に乗った女性も、非日常性を感じながら雲に乗ったような乗り心地を味わえたことでしょう。

 また、2ドアクーペということもありドアの全長も長いのですが、ドアヒンジの構造に工夫が施されて、狭い場所でも開けやすい構造になっていました。

 ソアラは車両価格が非常に高額だったことから、収入が高いか裕福な家庭の男性しか乗れなかったといわれています。

 そのため、ソアラに乗っているというだけで、「結婚する候補としては十分条件を満たしていた」とも考えられたほど、別格の存在でした。

※ ※ ※

 デートカーというジャンルが終わったのは概ね1992年前後です。バブル崩壊にともなう男性の収入減や、女性の意識の変化が原因だったのかもしれません。

 バブル世代の女性は、1993年頃からディスコなどで自分の収入の範囲で遊んだり、居酒屋や競馬場に繰り出すなどしていました。

 しかし、それより下の世代に相当する当時の大学生は、男女とも就職することで精いっぱいで遊ぶ余裕が減少。女性も勤務先を「結婚までの腰掛」とは考えないようになっていきました。

 さらに若者のレジャーも、アウトドアやスノーボードなどが取り入れられていき、必ずしもドライブだけがレジャーではなくなったのです。

 しかも、女性自身がクルマを運転することが当たり前になっていくなど、複数の要因により、男性が女性をクルマに乗せておしゃれなスポットに行くことが時代から外れていったといえます。

 1990年前後に花開いたデートカーの時代は、こうして終わっていったのです。

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