「EVシフト」はなぜエコに繋がる? 電動化加速の背景にある様々な事情とは

昨今の自動車産業では、ガソリン車から電動車に代わるいわば「脱ガソリン車/電動化」が進んでいます。一般的には電気自動車(EV)が主流となることで、エコな社会になるという印象がありますが、本当にEVが普及することはエコに繋がるのでしょうか。

急速に増える電動車、その背景とは

 世界中で電気自動車(EV)をはじめとする電動車が増えつつある昨今、果たしてガソリン車の時代から本当にエコロジーな社会になっているのでしょうか。

加速する電動化、その先にあるのはどのような世界なのか
加速する電動化、その先にあるのはどのような世界なのか

 今でこそ一般常識となっている「地球温暖化」という言葉ですが、この言葉が広く知られるようになったのは1980年代頃のことでした。

 二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素といった化学物質が温室効果をもたらすことは19世紀には知られていましたが、1970年代頃まではむしろ「地球寒冷化」が問題視されているなど、温暖化が進行していることは一般にはそれほど知られていません。

 しかし、1990年代以降、地球全体の気候が温暖化しつつあることは学術界でもほぼ合意のこととなり、国家間を超えた対策が必要であるとして、気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの国際会議が定期的に開催されることになりました。

 1997年に京都で開催されたCOP3、すなわち第3回気候変動枠組条約締約国会議で採択された通称「京都議定書」は、温室効果ガスの削減目標を規定したものとして、現在でも広く知られています。

 温室効果ガスは、おもに化石燃料を燃焼させることで発生します。その代表的な例が、ガソリンや軽油を燃焼させることでエンジンを動かし、動力とするクルマです。

 1960年代以降急速にモータリゼーションが進行した日本では、多くの国民が移動の自由を手に入れたその裏で、光化学スモッグなどの公害に悩まされました。

 そうした経験を持つ日本人は、クルマが環境に少なからず悪影響を与えるものであることは直感的に理解していたといえるでしょう。

 京都議定書が採択されたのとほぼ同じタイミングで、「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーとともに、世界初の市販ハイブリッド車であるトヨタ「プリウス」が発売。その後、ハイブリッド車が急速に普及し、エコカーの代名詞となりました。

 プリウスに搭載されたのはニッケル水素バッテリーでしたが、より高性能なリチウムイオンバッテリーが開発されたことで、クルマの電動化はさらに加速します。

 そして、2009年には三菱「i-MiEV」が世界初の量産型電気自動車として登場。さらに翌2010年には日産「リーフ」が発売されることになります。

 2010年代に入ると、すでに世界最大の自動車販売市場へと成長した中国の政策によって、世界中の自動車メーカーの電動化が加速。

 ガソリン車に比べて、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に対して巨額の補助金を助成することで、中国の都市部ではこれらの電動車が急増します。当然、中国市場を稼ぎ頭としていた世界中の自動車メーカーが電動化へシフトします。

 また、2015年に米国で発覚したフォルクスワーゲンのディーゼルに関する不正問題によって、それまで電動化には比較的慎重だった欧州の自動車メーカーも、電動化へ巨額の投資に舵を切ることとなります。

 このような世界情勢のなかで、日本は世界でももっとも電動化の進んだ国のひとつとして、環境面への影響や国民意識の変化などが注目されています。

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